画像や音楽、文章などを自動で生成する「ジェネレーティブ(生成)AI(人工知能)」の進化が著しい。特に、画像を生成するAIのサービスが広がっている。

 画像生成AIでは、人間がテキストを入力すると、AIがテキストのイメージに合った絵やイラストを出力する。例えば、「画家のアトリエ。机と椅子が一つずつ。窓があり、夕日が差し込んでいる。キャンバスに描きかけの鳥の絵が置いてある」といった複雑なテキストでも画像を出力できる。作者のイメージに合うまで何度も作り直しができ、気に入った画像ができれば、それを元に類似画像を出力することもできる。

 2014年頃から画像生成AIは存在していた。近年の進化は、画像を認識するAIと、文脈を理解する言語処理のAIを組み合わせたことによる。AIが複雑なテキストを理解して、それに合った画像を出力できるようになった。即ち、人間が脳内のイメージを記述すると、人間が描くような画像を大量に生成することで、AIが創作活動をサポートしてくれる時代が来たと言える。

 無料で画像生成AIを開放している企業もあり、誰でも自由に試すことができる。米国では、個人が無料で使える画像生成AIサービスで生成した画像をアートコンテストに出品し、入賞した事例もある。

 画像生成AIを使ったアプリケーションも開発されている。ユーザーがメッセージを送ると、メッセージに合った絵を返すLINEアプリなどがある。自分の描いたイラストをアップロードすると、描き手の画風をAIが読み取って、様々なパターンのイラストを生成するサービスもある。

 画像生成AIは、個人の趣味としての利用や、デザイナーなど専門家の創作支援だけでなく、ビジネスでの幅広い活用も期待される。例えば、欲しい洋服の画像を消費者に画像生成AIで作ってもらい、企業がそれを元にした洋服をデザインするといったことが可能になるだろう。企業は消費者の好みを具体的に把握し、商品開発に活用できる。消費者のニーズを高精度に把握することで、ブランドや商品に対するロイヤリティ向上につなげる事例も増えるだろう。

 直近は画像だけでなく、動画や音声、文章など多様なコンテンツを生成するAIが開発、発表されている。ジェネレーティブAIの進化と応用に注目である。

(フロンティア・リサーチ部 中野 友道)

※野村週報 2023年1月30日号「新産業の潮流」より

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