1月25日、カナダ銀行(BoC)は市場予想通り0.25%の利上げを実施し、政策金利を4.50%に引き上げた。また、今後の金融政策に関して「これまでの金利上昇の影響を評価する間は、経済動向が金融政策レポートの見通しに沿って進展する場合は政策金利を現状の水準に維持する」との姿勢を示し、条件付きであるものの今後政策金利を据え置く姿勢を示した。

 BoCによる利上げ停止が実現すれば、利上げを行ってきた主要先進7カ国(G7)の中で最も早いものとなる。カナダは米国の隣国であり、BoC の利上げ停止を受けて、市場では米国連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ停止も近づいているとみる声が一部で高まっている。しかし、BoCの利上げ停止の一因として、米国では深刻化していない、固有の「家計債務」の問題がある。

 カナダでは、G7で最も積極的な移民政策を背景とした人口流入が続いていたこともあり、住宅市場はG7の中で最も過熱している。カナダの住宅ローン残高は増加が続き、2021年時点で家計債務残高のGDP 比はG7の中で最も高い水準となっている。加えて、カナダの家計債務の大半を占める住宅ローンのうち、変動金利での借り入れの割合は22年10月時点で約34%に上る。一方、米国の住宅ローンは約9割が固定金利での借り入れである。

 このように、米国と比べて家計債務の水準が高いことに加え、変動金利で契約された住宅ローンの割合も高いことから、利上げに対するカナダ家計の耐性は米国より低いといえる。18年の利上げ局面においても、家計債務問題を理由にBoC はFRB に先んじて利上げを停止している。

 カナダと米国は経済的な結びつきが強いが、両国固有の理由で金融政策に乖離が生じることは過去にもみられている。FRBの政策動向を見るうえで、BoCの政策は参考になる点は多々あるものの、こうした乖離要因には注意したい。

(市場戦略リサーチ部 秀嶋 智輝)

※野村週報 2023年2月6日号「経済データを読む」より

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