「NISA」の拡充が株式分割を行う1つの動機となり得る

過去の株式分割の件数を振り返ると2013年に急増しています。この背景の一つとして、2014年1月に開始した個人投資家を対象にした優遇税制「NISA」の投資枠を各企業が意識した側面もあったとみます。2024年1月に予定されているNISAの拡充も、株式分割を行う1つの動機となり得るでしょう。

実際、企業の間では株式分割をして1株あたりの株価を引き下げ、株式を買いやすくしようという動きが相次いでいます。大手化学メーカーの信越化学工業(4063)は27年ぶりに株式を分割する予定です。このほか、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド(4661)も8年ぶりに株式を分割すると発表しています。この2銘柄のように「投資単位の大きな銘柄」での株式分割が相対的に増えているようです。

分割比率が大きい銘柄は発表後の株価パフォーマンスが良好

投資単位が大きな銘柄では「分割比率も大きい」傾向があります。東証は投資単位として「5万円以上50万円未満」の水準を推奨しており、投資単位が100万円以上の銘柄がこれを満たすためには比率の大きな分割が必要になります。

「分割比率の大きな株式分割」の公表は、短期的には良い投資機会を提供する可能性があります。このような銘柄は、公表翌日の株価インパクトが大きいだけでなく、株価上昇も20営業日程度継続する傾向があります。分割比率が大きいほど流動性向上への期待が大きいことが影響しているとみます。

権利落ち前までの短期戦略と考えるべき

ただし、分割銘柄は権利落ち日を境に株価が低迷する傾向があります。特に、「分割公表時の投資単位が大きい銘柄」ほど権利落ち後のパフォーマンスが悪くなります。このような銘柄は、分割による流動性の向上や新規投資家の参入への期待が大きくなり、分割公表後の株価上昇時にやや過剰な期待が反映されやすいとみます。

権利落ち後の平均的な下落幅は分割公表時の上昇幅より小さいため、全体として株式分割は株価にポジティブと言えます。しかし、公表翌日以降に投資する場合は権利落ち前までの短期戦略と考えるべきでしょう。

(FINTOS!編集部)

要約編集元アナリストレポート①「日本株クオンツストラテジー – 投資単位の大きな銘柄の株式分割が増加(2月1日配信)」(プレミアム会員限定配信)

要約編集元アナリストレポート②「日本株ストラテジー – 株式分割を発表後のパフォーマンスを整理(12月16日配信)」(プレミアム会員限定配信)

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