地政学リスクから考える 資源・エネルギーへの投資

重要資源であるレアメタル

 レアメタルとは、地球上の存在量が稀であるか、技術的・経済的な理由で抽出困難な金属のうち、安定供給の確保が政策的に重要な金属を指します。経済産業省の定義では、ニッケルやコバルト、インジウム、クロムなど31鉱種が対象となっています。

 レアメタルは、日本ではほぼ産出されておらず、安定調達の確保が政策的課題となっています。

経済成長に欠かせない資源

 レアメタルはテレビやパソコン、携帯電話に使用されるなど、私たちの生活には必要不可欠な存在です。今後は更に先端産業においても重要な資源となってゆくでしょう。

 将来的に普及が見込まれるEV(電気自動車)では、バッテリーや駆動モーターにレアメタルやリチウム、ニッケル、コバルト、ネオジム等が使用されています。二次電池(蓄電池)には、リチウムが使用されているほか、排ガスを浄化する触媒にはパラジウムが使われるなど、レアメタルの安定供給がますます重要になっています。

需要に応える日本の都市鉱山

 電子部品の多いEVには様々なレアメタルが使われているため、EV普及には鉱物資源に関する課題をクリアしていく必要があります。

 このようなレアメタルの需要に対する課題を解決する手段のひとつとして、眠れる資源の有効活用があります。

 日本にはレアメタルなどの金属を含んだ使用済み電子機器が大量に存在しており、「都市鉱山」と呼ばれています。日本にとって都市鉱山開発は大きな可能性を持っており、使用済み携帯電話や小型電子機器を回収し、そこからレアメタルを取り出そうという取り組みが開始されています。これにより、拡大するレアメタルの需要に応えることが期待されます。

加速する再生可能エネルギーの導入

 世界の発電量は世界経済の発展と共に増加を続けてきました。2020年の世界の発電量は、26,708TWhと、2010年に比べ、+24%となり、足元でも増加傾向が続いています。2050年の世界の発電量は、2020年に比べ、およそ2倍に拡大すると、IEA(国際エネルギー機関)は予測しています。また、発電に使うエネルギー資源の構成も変化しています。2010年は石油や石炭などの化石燃料が67%と大きな割合を占めていました。しかし、近年、気候変動に対する配慮などから、温室効果ガスの排出量が少ない、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入が進んでいます。

 具体的には、EUの「REPowerEU」や、米国のIRAなど、主要国・地域で太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーの導入が加速するとみられ、IEAは2027年に太陽光発電が石炭による発電を抜き、世界の電源別発電容量シェアで1位となると予想しています。

CO2を排出しないクリーンな原子力発電

 火力発電は石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料を燃やし、その熱エネルギーを利用して発電を行っているため、発電の過程でCO2を排出します。

 一方、原子力発電は、ウラン燃料が核分裂した時に発生する熱を利用して発電しているため、太陽光発電や風力発電と同じように発電時にCO2を排出しません。

 原子力発電は地球温暖化防止の観点で、再生可能エネルギーを補完する優れた発電方法の一つとして、再び注目されています。

 原子力発電分野では、従来の原子力発電が抱える「コストが高い」ことや、「建設期間が長い」こと等の課題の解決を期待できる次世代原子力発電の開発が世界で進んでいます。

(投資情報部 岡﨑 朔)

【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら

業種分類、Nomura21 Globalについて

ご投資にあたっての注意点