1月小売売上高から見た米国の個人消費動向

1月の前月比は+3.0%

 2月15日に米商務省が、2023年1月の小売売上高を発表しました。小売売上高(合計)は、前月比+3.0%となり、ロイター集計、ブルームバーグ集計共に同+1.8%とする市場予想を大きく上回りました。なお、12月分の小売売上(合計)については、前月発表された速報値の前月比-1.1%で修正はありませんでした。

 ほぼすべての業種で前月比増加となっていますが、百貨店が+17.5%、飲食店が+7.2%となっていることが目につきます。飲食店は、1月は暖冬だったことが、外食の機会を増やした模様です。

 GDP(国内総生産)の算出に用いられる、コントロールグループと呼ばれる自動車や建材、ガソリンスタンド、食品を除いたコア小売売上高は、1月は前月比+1.7%と、12月の同-0.7%から反転、増加しました。なお12月分は、発表時点の前月比-0.7%で据え置かれています。

1月の前年同月比は+6.4%

 1月の小売売上高(合計)の前年同月比は+6.4%と、12月改定値の同+5.9%から伸び率が加速しました。なお、前月の発表時点では、12月小売売上高(合計)は同+6.0%としていましたが、今回、同+5.9%に若干下方修正されました。

 1月の前年同月比を業種別にみると、多くの業種で増加し、特に飲食店が+25.2%と大きく伸びているのが目立ちます。一方、電気製品が-6.3%と、他の業種が増加している中で、減少していることが目につきます。電気製品は11月、12月も前年同月比で減少していました。比較的値が張る商品を扱っており、インフレによる影響を受けている可能性が考えられます。

前年同月比は増加が続くが

 前年同月比の推移をみると、小売売上高(合計)は、1月は+6.4%と、引き続き一桁台後半の伸びが続いています。2022年央から徐々に伸び率が鈍化し、12月は同+5.9%でしたが、1月は伸び率が加速しました。

 一方、無店舗販売は、12月改定値は前年同月比+13.3%と伸び率が急拡大していましたが、1月は同+3.0%と鈍化しています。

ミシガン大学の消費者マインド調査

 2月10日に発表された、ミシガン大学消費者マインド調査の2月速報値は66.4と、1月確報値の64.9から上昇しました。

 併せて発表された消費者の期待インフレ率調査の速報値については、5年先は1月27日に発表された1月確報値の2.9%から横ばいでしたが、1年先については3.9%から4.2%に上昇しました。

今後の留意点

 1月小売売上高の実績は市場予想を大きく上回り、個人消費が比較的堅調に推移していることが窺えました。一方、無店舗販売の前年同月比伸び率が急速に鈍化したり、1年先の期待インフレ率が反転上昇するなど、気になる動きはあります。単月の動きでは方向を判断することは難しいことから、今後も注意してみていきたいと思います。

 なお、小売売上高統計は売上高についての統計です。企業が在庫処分のために大幅な値引き販売をしていた場合、売上高は増加しても、収益性が悪化している可能性が考えられます。

 2月21日には小売業最大手のウォルマートやホームセンター最大手のホーム・デポが2022年11月-2023年1月期決算を発表する予定で、今後、1月を決算期末とする小売業の決算発表が本格化します。

 小売企業の決算が発表された際には、決算実績に加え、会社側の今後の業績見通しなどを通し、米国個人消費の動向を確認したいと考えます。また、収益性についても注意してみていきたいと考えます。

( 投資情報部 村山 誠)

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