結論:株式市場は主要国利上げ終了後、企業業績復調とともに上昇に転じよう

目次
・業績下方修正一巡後に株価は上昇へ
・米国長期金利の安定は株価の安定にも寄与
・テクノロジー企業に注目
・ユーロ圏は金融引き締め継続
・中国景気再加速期待
・景気復調により業績が再拡大に向かうことで株価は上昇へ
・投資戦略

業績下方修正一巡後に株価は上昇へ

インフレ抑制に向けた主要国の利上げは、最終局面に差し掛かっています。我々は、金利上昇懸念が一巡すれば、市場の不透明さが低下して株式市場は復調に転じるとみてきました。主要国の雇用はひっ迫した状況が続くため、インフレや利上げへの警戒感は残りますが、急速な金融引き締めや景気失速リスクは低下しています。企業業績の下方修正が一巡した後、株価は上昇局面に入るとみます。

米国長期金利の安定は株価の安定にも寄与

エネルギー価格の低下により、インフレ高進のリスクは大きく低下しています。2023年に入り、主要国の金融引き締めペースは減速しており、経済見通しは悲観シナリオから、景気の上方修正局面に転じています。米国では雇用ひっ迫が解消しておらず、サービス関連のインフレ圧力が強く、利上げ終了後の政策金利は高止まりがしばらく続く可能性があります。ただし、意図せざるインフレ加速のリスクは低下しているため、長期金利の上昇余地は限られるとみられます。長期金利の安定は株価の安定にもつながります。

テクノロジー企業に注目

米国政府の政策については、米中対立が続く一方、与野党間の議会運営では部分的な歩み寄りも見られます。ただし、2024年の次期大統領選挙に向けた与野党候補者の選考過程で、紆余曲折が起きる可能性はあります。米国企業業績は下方修正が続いていますが、リストラなどの対応を先んじて実施したテクノロジー企業については、市場予想の下方修正幅は小さくなっています。テクノロジー企業の高成長期待は失われていないため、利上げ終了後の業績回復局面における株価の反発余地は比較的大きいとみられます。

ユーロ圏は金融引き締め継続

ユーロ圏は、天然ガス価格の下落により景況感は改善していますが、雇用はひっ迫しており、コアのインフレ率は上昇が続きます。FRBより先のECBの金融引き締め終了は無いでしょう。ECBは3月から保有資産の圧縮も開始し、ユーロ圏は相対的に強い景気抑制が続きます。

中国景気再加速期待

中国はゼロコロナ政策の終了による経済活動の再開が進んでいます。中国政府は、行動制限下からのリベンジ消費促進や、低迷する住宅市場へのテコ入れ策への支援を表明しました。

景気復調により業績が再拡大に向かうことで株価は上昇へ

日本経済は、中国景気の復調とインバウンド需要の拡大に加え、自動車産業を中心とする挽回生産の本格化が景気を下支えするでしょう。インフレに対する賃上げ圧力が高まっています。賃上げが根付かなければ、インフレの強さは一時的なものに止まるとみられます。日銀の新執行部人事案が国会に提示されました。10年国債利回りの上限を設定したことによる国債市場の歪みの解消に向け、政策修正観測の強まりによる一時的な金利上昇の可能性があります。ただし、植田日銀新総裁候補は、当面の金融緩和継続を示唆しており、円高は加速しにくいとみられます。2022年10-12月期決算発表における企業業績は、総じて下方修正は限定的でした。バリュエーションで見た日本株の割高感は限定的で、今後、企業業績の復調が進むことで、野村證券は2023年末の日経平均株価の見通しを30,000円と予想します。

投資戦略

投資戦略については、景気悪化懸念の後退は株価の追い風で、主要国の利上げ終了に伴い、景気と企業業績への信頼感が回復することで、株式市場は企業業績の復調に沿って上昇に転じるとみます

(投資情報部 小髙 貴久)

※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 3月号」(発行日:2023年2月20日)「投資戦略の概要」より

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