Web3は生活の一部へ

デジタル世代と主力企業の変化

1兆ドル(約130兆円)、これは2025年のメタバース関連の民間部門の売上高見通しとして、2023年1月のダボス会議で大手ITコンサルティング企業のCEOが紹介した数字です。

メタバースや暗号資産、NFT(非代替性トークン)などの「次世代のインターネットサービス」はWeb3と総称されます。現在はプラットフォーム企業がSNSなどの双方向の情報サービスを寡占していますが、Web3への移行により、新興企業が台頭し、既存の大企業もキャッチアップする一方、変化に取り残される企業も出てくることが予想されます。

(注)Web3は、Web3.0と表現されることもあるが、Web3.0はより狭義なセマンティック・ウェブ(ウェブの情報に意味を持たせる構想)などの意味として捉えられることもあるため、Web3の表記とした。NFTは、代替や偽造が実質的に不可能なデータで、鑑定書・所有権付きのアートや土地、アイテムなどのデジタル上の資産の形をとる。DAOは、ブロックチェーン上で人々が協力して管理・運営される組織のことで、ガバナンス・トークンを保有することで意思決定に参加できる。 DeFiはデセントラライズド・ファイナンス、NFTはノンファンジブル・トークン、DAOはデセントラライズド・オートノマス・オーガニゼーションの頭文字を取った略称で、一般的な読み方は、DeFiはディファイ、NFTはエヌ・エフ・ティ、DAOはダオ。暗号資産は、2020年に施行された資金決済法および金融商品取引法の改正法で、呼称が仮想通貨から「暗号資産」に変更された。全てを網羅しているわけではない。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成

Web3のフェーズ

Web3の整備がグローバルで進んだ要因のひとつは、ビットコインなどの暗号資産価格の急騰です。ブロックチェーン技術=儲かる、と考えた投機資金が黎明期のWeb3市場に流れこみました。その後、多種多様な暗号資産がICO(イニシャル・コイン・オファリング)により発行され流通したものの、盗難や詐欺などを経て価格が急落しました。

続いてNFTに投機資金が流入したことで価格が高騰し、NFTの購入に必要なビットコインなどの価格も上昇しましたが、欧米の中央銀行による金融引き締めなどを受け価格は急落しました(流行期、幻滅期)。現在は、今後Web3が幻滅期から、回復期、安定期へ向かうかの岐路にあると推察されます。

X2E(Xして稼ぐ)は流行したが課題も

X2Eは、ゲームをプレイしたり(遊んで稼ぐ)、ウォーキングしたり(移動して稼ぐ)することで暗号資産やNFTを稼ぐWeb3ゲームの形式です。プレイヤーは、稼いだ暗号資産やNFTを暗号資産取引所などで換金することで法定通貨を得ることが出来ます。X2Eは、ゲームの要素をゲーム以外に応用するゲーミフィケーションの一種です。X2Eのプレイヤー数は、増加後NFT価格の急落を受け減少しました。

Web3で高まるデータの価値

「ChatGPT」は質問したことに対して、その意味や目的を理解し、適切な返答を生成してくれるツールです。ChatGPTの利用拡大で、生成系AI(データから学習し、それを使用して創造的な新しいアウトプットを生み出す機械学習)がブームとなりました。今後はAIによるビッグデータの活用が進むことが予想されます。また、X2Eの「移動して稼ぐ」で脚光を浴びた歩数のデータが企業の健康経営に利用されています。

「データ駆動型社会」において、データの価値がWeb3の進展とともに一段と高まることが予想されます。

デジタルツインやメタバースの発展

都市のデジタルツイン(現実を仮想空間に再現しシミュレーションを行い、現実にフィードバックする技術)では、シンガポール政府の「バーチャル・シンガポール」が先行しました。デジタル都市上で、屋上太陽光発電設備(下図)や歩道橋の設置、道路の改修などを行った際の影響を仮想空間上で検証し、改善したのちに実装します。日本でもマンション販売において、一棟丸ごとや部屋の3Dモデルを作成し、家具の配置などのシミュレーションが実際に行われていますが、これもデジタルツインの活用事例です。

メタバースは、インターネット上の3Dデジタル空間です。特定の会社が独自のデジタル空間を中央集権的に管理運営する場合がクローズド(閉じた)・メタバースで、複数のメタバース間でアバターやNFTが相互共有される場合がオープン(開いた)・メタバースです。2022年6月には、「メタバース・スタンダード・フォーラム」が結成され、規格を統一することで、オープン・メタバースへの移行を目指します。下図は、地域毎のメタバース関連企業数です。サービスなどが先行している地域は、企業数が多いと推察されます。

(投資情報部 竹綱 宏行)

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