今後の日本経済にとって中国からのインバウンド消費の回復が注目点である。中国は昨年11月からウィズコロナに本格的な政策変更を行ったこともあり、12月下旬から国内感染がピークアウトし、人的移動の正常化が進んできた。新華社は2月28日の社説でコロナ対策の勝利を宣言し、民間部門の信頼感修復にも動き出した。

中国人の海外旅行を巡る環境は三つの側面で年初来大きく改善されている。先ずは中国側の水際対策の改善であり、1月8日から入国後の全員PCR検査と集中隔離が不要になった。次に、国際航空便の便数に対する規制緩和である(2月6日から適用)。中国航空会社が発着する国際便(香港、マカオ行きを含む)は2020年以降、19年の5分の1にまで減らされていた。3点目はコロナ後に停止された旅行会社の海外団体旅行業務の一部解禁である。

上記の環境改善の効果は顕著である。中国航空会社の1日当たり国際便運行数は昨年12月末の200便前後から、480便前後(3月11日を含む週平均)へ倍以上に増えている。また、香港への中国本土渡航者数は1日当たりベースで1月下旬の1.3万人強から、2月上旬の国際便の増便を受けて足元6万人弱に急増した。

中国人の団体海外旅行において、日本向けはまだ中国側で規制が掛けられている。中国当局は2月6日と3月10日に計60カ国・地域を対象に、海外団体旅行の規制緩和を発表してきたが、米英、カナダ、豪州、日韓は対象外になっている。

ただし、状況は少しずつ変わっている。3月中旬から米国(10日)、豪州(11日)、韓国(11日)は相次いで中国からの渡航客に対するPCR検査を廃止し、日本も3月から対中水際対策を緩和している。日本を含む主要国の姿勢変更を契機に、中国の政策も今後見直しが期待される。

(市場戦略リサーチ部 郭 穎)

※野村週報 2023年3月20日号「経済データを読む」より

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