2月小売売上高から見た米国の個人消費動向

2月の前月比は-0.4%

3月15日に米商務省が、2023年2月の小売売上高を発表しました。小売売上高(合計)は、前月比-0.4%となり、ロイター集計、ブルームバーグ集計共に同-0.3%とする市場予想を下回りました。なお、1月分の小売売上(合計)については、前月発表された速報値の前月比+3.0%から同+3.2%に上方修正されました。

前月比減少となっていますが、1月にほぼすべての業種で前月比増加となった反動が出ているとみられます。飲食店が前月比-2.2%となっていますが、1月は暖冬だったことで同+5.6%(改定値)と大幅に伸びていた反動とみられます。ただし、家具が前月比-5.3%、百貨店が同-4.0%と、比較的値が張る商品を扱う業種での低下が目立ち、インフレの影響が出ている可能性が考えられます。

GDP(国内総生産)の算出に用いられる、コントロールグループと呼ばれる自動車や建材、ガソリンスタンド、食品を除いたコア小売売上高は、2月は前月比+0.5%でした。1月については、速報値の同+1.7%から同+2.3%に上方修正されました。

2月の前年同月比は+5.4%

2月の小売売上高(合計)の前年同月比は+5.4%と、1月改定値の同+7.7%から伸び率が鈍化しました。なお、前月の発表時点では、1月の小売売上高(合計)は同+6.4%でした。

業種別にみると、前年同月比については1月と同様、多くの業種で増加しています。特に飲食店が+15.3%と大きく伸びているのが目立ちます。飲食店の1月改定値は同+24.4%です。一方、電気製品が同-2.8%と、他の業種が増加している中で、減少していることが目立ちます。

前年同月比は増加が続く

前年同月比の推移をみると、小売売上高(合計)は、2月は+5.4%と、引き続き一桁台後半の伸びが続いています。

オンライン小売を含む無店舗販売は、1月実績の発表時は同+3.0%と、12月の同+13.3%から伸び率が大きく鈍化していました。2月は同+8.5%と、1月改定値の同+4.0%から伸び率が拡大しました。

単月では伸び率に振幅がみられるものの、基調としては消費の拡大が続いていることが窺えます。

ミシガン大学の消費者マインド調査

2月24日に発表された、ミシガン大学消費者マインド調査の2月確報値は67.0と、2月10日に発表された2月速報値の66.4から上方修正されました。

併せて発表された消費者の期待インフレ率調査は、5年先の確報値は2月10日に発表された2月速報値の2.9%と変わらずでしたが、1年先については4.2%から4.1%に下方修正されました。

今後の留意点

2月小売売上高は前月比が減少になりましたが、1月に大きく伸びていた反動とみられることや、GDP算出に用いられるコントロールグループは増加していることなどから、個人消費は引き続き堅調とみられます。

ただし、小売売上高統計の数値はインフレは調整されていないことから、売上高の増加がインフレによって押し上げられていることも考えられ、注意は必要です。前述の通り、家電や百貨店など、比較的値が張り、かつ必ずしも生活必需品とはいえない裁量的品目の構成が多い業種において、売上動向に鈍さがみられるなど、消費者の購買行動に、インフレにより実質可処分所得が目減りしている影響が出ている可能性が垣間見えます。

いずれにせよ、単月の動きでは個人消費の動向を判断することは難しいことから、4月14日発表予定の3月の小売売上高や、その他の経済指標なども確認しながら、今後も注意してみていきたいと思います。

(投資情報部 村山 誠)

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