足元の日本株市場では業績予想の下振れが目立つ。このような局面で有効とされるクオリティ株への投資戦略について紹介しよう。クオリティ株とは、収益性、財務の安全性、利益の安定性、会計の質などの観点から質が高いとされる銘柄のことだ。このような銘柄はPBR(株価純資産倍率)が高くなる傾向にあるが、高PBR銘柄への投資とはどのような違いがあるのだろうか。

クオリティ指標およびPBRに基づく投資戦略のパフォーマンスを、米金利や業績予想の修正動向による局面ごとに計測した。高PBR 銘柄は金利低下(上昇)時に好調(不調)になりやすいことが知られているが、高クオリティ銘柄もこの点は共通している(図表a)。しかし、アナリスト予想の修正動向を表すリビジョンインデックス(RI)別に見ると明確な違いがある。クオリティ指標の方が、RIが低下(下方修正の割合が増加)するときに際立って好調である(図表b)。

この背景には、業績下振れが加速するような局面では、質の高い銘柄が安心感から選好されやすいことがあると思われる。加えて興味深いことに、図表では省略しているが、冒頭に挙げたクオリティに関する4指標を単独で用いるよりも、それらを組み合わせた指標を用いる方が安定的に高リターンとなることも確認された。クオリティ株の選別は、複数の観点から総合的に判断することが好ましいと言えよう。

足元では米金融政策への先行き不透明さが高まっている点には注意が必要だが、業績予想の下方修正が続く現在の環境ではクオリティ株の安心感は魅力的だ。クオリティ戦略の性質を把握し、市場環境に応じて適切に使い分けることが今後ますます重要になるだろう。

(市場戦略リサーチ部 西岡 伸)

※野村週報 2023年3月27日号「資産運用」より

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