電子コミック・プラットフォーマーの自社コンテンツ制作意欲が高まってきた。

コンテンツ業界では、ネットフリックスなどの動画プラットフォーマーが自社動画コンテンツの制作で先行してきた。動画プラットフォームの乱立に伴い、各プラットフォーマーは自社コンテンツを定期的に制作・投入することで、有料会員の囲い込みを図っている。

電子コミック業界でも、プラットフォームの乱立に伴い、自社コンテンツ制作の流れが加速してきた。発端は、韓国発でフルカラーの縦型電子コミック「ウェブトゥーン」の導入である。自社コンテンツではないが、韓国発のウェブトゥーンを日本で独占配信することで、他のプラットフォームとの差異化に成功した例がある。

韓国発のウェブトゥーンの人気化を受け、昨今では日本発のウェブトゥーンを独自に制作するインフラを構築する企業も出てきた。従来のような、編集者と漫画家という2者による制作体制から脱却し、原作やネーム(下書き)、着彩など各制作工程の専任スタッフを多数擁する分業体制を自社スタジオ内に構築し、短時間でコンテンツを量産する動きである。

電子コミック・プラットフォーマーにとって、漫画家へのロイヤリティをはじめとする外部コンテンツの仕入れコストは大部分が売上高に応じた変動費である。個々のコンテンツのヒット度合いに関わらず、利益率はほぼ一定水準に収斂しやすい。他方、自社コンテンツの制作コストでは、制作スタッフの人件費など固定費の割合が多くなる。ヒットしなければ赤字に陥るリスクがある一方で、ヒット作となれば多額の利益を創出できる可能性もある。

電子コミックでは、紙ベースの漫画では得られなかったユーザーの閲覧情報(どのあたりでユーザーの離脱が多いかなど)を、将来のコンテンツの改善に繋げることも可能になる。こうしたデータ分析を自社コンテンツの制作に巧く反映できれば、ヒット率を引き上げることができよう。

電子コミックは、動画コンテンツや小説などの文章コンテンツよりも消費速度が早く、短サイクルでのコンテンツ供給が必要となる。独自コンテンツを短サイクルで量産できるプラットフォーマーが競争力を高められよう。

(フロンティア・リサーチ部 西川 拓)

※野村週報 2023年3月27日号「新産業の潮流」より

【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら

ご投資にあたっての注意点