投資家の皆様から関心の高い質問を専門分野のリサーチャーに聞いてみました!

Q:近づく日韓の距離感、日本経済や企業にとってのメリットは?

尹錫悦(ユン・ソンニョル)・韓国大統領の訪日が実現するなど、だいぶ日韓関係が改善されているように見えます。日韓関係改善による日本経済にとってのメリットはなんでしょうか。日本の半導体装置や素材の輸出、韓国からのメモリー半導体輸入などでしょうか。

A:半導体材料輸出規制解除も影響は軽微

半導体材料3品目の輸出規制解除も影響は軽微

2019年に日本は半導体の材料である3品目について輸出規制を強化しました。マクロ統計を見ますと日本の輸出に占める韓国のシェアは2018年の7.1%から2019年に6.6%に低下しています。もっとも、2020年には7.0%に戻っており、輸出規制のマクロ経済上の影響はそれほど大きくはありませんでした。尹錫悦大統領の訪日に際し、輸出規制を解除することが決定されたとはいえ、おそらくマクロ経済上の影響は大きくなさそうです。一方、韓国は2019年の輸出規制強化に対抗して、文在寅前政権が日本をWTO(世界貿易機関)に提訴しましたが、紛争解決手続きが取られる前に、韓国側が取り下げることになり、こちらの影響も軽微と見られます。

輸出規制問題は、経済安全保障に絡むもの

そもそも、この問題は、経済安全保障に絡むものであり、必ずしも日韓の政治的な対立の所産という訳ではありません。2019年の輸出規制強化は、安全保障上重要な物資(軍事転用が可能な物資)が、韓国を経由して第三国に渡り、軍事利用されるリスクがあったことが理由です。第三国とは北朝鮮だったと見られており、北朝鮮に対する宥和政策を続けていた文在寅(ムン・ジェイン)前政権が政府として対応するか不透明だったために採られたと考えられます。結局、文在寅前政権は、輸出強化を「いわゆる徴用工」の請求問題に対する日本の報復措置だとして政治問題化し、政府として第三国への譲渡防止の対策を行うことはありませんでした。このため、規制下で、韓国のユーザー企業が流出させることは無いと確認する手続きを経て輸出されていました。これが2022年に政権交代し、北朝鮮に厳しい姿勢を示している尹錫悦政権になったことで、規制が解除されることになったと見られます。今後は、民間企業に確認を取る手続きが不要になります。

2027年の大統領選挙の結果には注意

ただし、韓国の政権は一期5年のみです。2027年の大統領選挙の結果、仮に、北朝鮮に宥和(ゆうわ)姿勢をとるような政権になった場合には、改めて輸出規制強化の話が出てくる可能性がある点には注意したいところです。

(出所)野村證券経済調査部より野村證券投資情報部作成

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