新型コロナウイルス(以下コロナ)禍において、金融詐欺被害が依然として深刻である。不特定多数から対面することなく現金等を詐取する「特殊詐欺」が金融詐欺の多くを占めており、2020年の被害総額は278億円、被害認知件数は13,526件であった。近年、金額は減少傾向だが、件数は18年に減少に転じたが未だに高水準である。

 20年の特殊詐欺の特徴をみると、第一にコロナ禍に便乗した詐欺が登場した。特別定額給付金を利用して「二回目特別定額給付金の特設サイトを開設しました」と総務省を騙ったメールを送り、偽サイトに誘導して個人情報の詐取を狙う手口が生じた。

 第二に、元来深刻な高齢者被害が、他人との接触が減る中で悪化した。被害認知件数のうち65歳以上の割合が前年比で1.8%ポイント上昇し、全体の85.7%となった。

 第三に、20年の被害類型の中では、被害総額では架空料金請求詐欺が最大で、被害認知件数では預貯金詐欺が最多であった。前者は、未払い料金がある等架空の事実を口実に金銭等を詐取する手口であり、後者は、金融機関職員等を装い「口座が犯罪に利用されており、キャッシュカードの交換手続きが必要」等の口実で、キャッシュカード等を詐取するものをいう。

 第四に、他の類型に比べて相対的に被害は少ないが、金融商品詐欺が19年から倍増した。これは証券会社等を騙って有価証券等に関する虚偽の情報を提供し、購入すれば儲かると誤信させ、その購入名目等で金銭等を詐取するものをいう。日本株の株価変動が話題になる中で警戒すべきだろう。

 特殊詐欺には分類されないが、インターネットバンキングに係る不正送金事犯も多発した。銀行を騙ったメール等から偽のサイトに接続させることで利用者の個人情報を盗み、預金を不正送金するものである。

 こうした最新の特徴を知っておくことが詐欺対策では重要である。①コロナに関する情報は公的機関で確認する、②覚えのない請求は警察に届ける、③金融機関等を名乗る訪問者にキャッシュカード等を渡さない、④投資に関する不審な勧誘を受けた際は正規金融機関か確認する、⑤メール記載のURLではなく企業公式サイトにアクセスする、等の対策が考えられる。コロナ禍において、知人や家族との情報共有がより大切になっているといえよう。

(橋口 達)

※野村週報2021年5月3日・10日合併号「資本市場の話題」より

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