日本:2023年1-3月期決算プレビュー

1-3月期の決算発表がはじまる

2023年4月下旬より、3月決算企業の決算発表が本格化します。市場コンセンサスでは、ラッセル野村Large Cap(除く金融)の2023年1-3月期は9.2%増収(前年同期比)、同30.3%経常増益が見込まれています。

2022年10-12月期決算では、期中にしては異例に減損や構造改善費用を計上する企業が多く、増収率は世界的なインフレ圧力の高まりを反映して高かったものの、経常利益段階では前年同期比で減益となりました。

1-3月期は更に減損や構造改善費用を計上する企業が増えるという季節性があるため、市場コンセンサス通り利益が着地するかは微妙です。ただ、10-12月期の市場の反応を見る限り、こうした企業行動は将来の利益の確実性を増す、との判断から好意的に受け止められた印象です。

目まぐるしく変わる業績のけん引役

全体業績をけん引する業種が目まぐるしく変化しています。2022年7-9月期には、製造業優位/非製造業劣位の構図が明確でした。

これが2022年10-12月期には、素材が資源価格低下の影響により減益に転じ、加工産業では一部の業種で挽回生産が始まったことから、製造業内部で業績の2極化が進みました。また、苦戦を強いられていた非製造業の一部(消費、運輸)に、人流の回復の好影響が顕在化し始めました。

これから決算発表が本格化する2023年1-3月期は、(コンセンサス予想通り着地すれば)製造業で引き続き素材の苦戦が続く見込みです。一方、加工産業では自動車に加え、挽回生産が遅れていた機械やエレクトロニクスでも業績が好転に向かいそうです。また、非製造業では経済活動の正常化、人流の回復などの影響がより幅広く見られる見込みです。結果的に、素材を除くほぼすべての業種グループで堅調な業績推移となるでしょう。

注目が集まる会社側新年度見通し

新年度の会社側の見通しは、最も注目される業績情報のひとつです。

新年度の会社側の見通しを占うにあたって参考になるのが、一足前に発表となる日銀短観3月調査です。下図にあるとおり、過去ほとんどの年度で新年度の会社側見通しは、日銀短観3月調査の利益見通しを上回っています。これは、日銀短観がデフレ圧力の強い国内単体を集計対象にしているのに対し、会社側の見通しはデフレ圧力の乏しい海外も含めた連結を対象にしているためです。

また会社側の見通しは、リーマンショックや東日本大震災など余程の外的ショックの影響下にある場合を除けば減益の見通しはほぼない、という特徴もあります。こうした経験則から、2023年度の会社側見通しは微増益程度でスタートする公算が大きいと見られます。

2023年度は上期減益の公算が大きいが

微増益程度でスタートする公算が大きい会社側見通しに対して、現在の野村證券のアナリストによる2023年度通期予想経常増益率は前年度比+3.1%となっています。今決算シーズンでは2023年度通期のアナリスト予想の修正は、ここ数四半期続いてきた比較的規模の大きい下方修正の動きから一転、微修正にとどまる可能性が高くなっていると見られます。

ただ、2023年度は上/下の業績の温度感が大きく異なる可能性があることには注意が必要です。

企業業績に大きな影響を及ぼす鉱工業生産と、米ドル円レートの2023年度に予想される動きは複雑です。2022年度期中で円安/円高が交互に訪れたことや、期待された挽回生産もなかなか軌道にのらず鉱工業生産は加速/減速が交錯したこと、が背景にあります。現在のアナリスト予想では、通期では微増益を見込むものの、上期は減益、下期は増益というパターンになっています。

(野村證券投資情報部 伊藤 高志)

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