ROE(自己資本利益率)やROIC(投下資本利益率)といった資本収益性と、PBR(株価純資産倍率)など市場での評価に関しての関心が高まりを見せています。

2023年3月末には、東証プライム市場がスタートして1年を迎えるのにあわせて東京証券取引所は、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について(案)」を公表しました。欧米に比べて極端に低PBR企業が多いことを問題視し、企業に対して資本コストと市場の評価改善に対する具体的な取り組みの開示を求めています。また同日、日本取引所グループ(JPX)は、エクイティスプレッドとPBRにより選別される新指数『JPXプライム150』を7月より算出・公表を開始すると発表しています。

一方、我が国の株式市場では「高ROE銘柄のパフォーマンスは良くない」というのはほぼ常識です(下図)。極端な高ROE企業は、長期間その水準に留まることが困難で、ROEが低下した際の株価のダメージが大きいため、と考えられています。ただ不思議なことに米国では高ROE企業のパフォーマンスは少なくともここ20年は良好です。日米のこの極端な差はどこから生じているのでしょうか。

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これは、我が国の経営者に①ROEの水準維持/向上させるという意識が希薄だったこと、また②ROEの水準維持/向上のため事業再編やM&Aなど場合によっては痛みを伴う経営判断が稀だったこと、③ROEの水準維持/向上のための自社株買いなど資本政策の株価への効果に懐疑的であったこと、④ROEの水準維持/向上に失敗し株式市場での評価が低くてもペナルティーがほとんどなかったこと、などが考えられます。

ただ、これらはいずれも『過去形』になりつつあります。2014年のスチュワードシップ・コード、2015年に策定されたコーポレートガバナンス・コード、により、投資家と企業の対話が促進されました。また両コードは3年に1度改訂され議論の深まりにつながっています。また、JPX400や今回新たにスタートするJPXプライム150など資本収益性を考慮した指数の登場と、その指数を採用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などの存在も大きくなっています。

どちらかと言えば、証券投資論の世界に留まっていた日本企業のROE革命が今度こそ実現するのか期待感が高まります。

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