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08:17
【野村の朝解説】中東情勢の緊張が再び高まり、米株は反落(6/18)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 6月17日の米国株式市場では、主要3指数が反落しました。中東情勢を巡る緊張が再び高まり、投資家心理が悪化しました。また、トランプ大統領がG7サミットを途中で切り上げたと伝わり、関税を巡る米国と各国との交渉に目立った進展が見られなかったことも嫌気されました。さらに、朝方発表された5月小売売上高は、前月比0.9%減と、4ヶ月ぶりの大幅な減少となり、消費の減速が示唆されたことも相場を下押ししました。外国為替市場では、「有事の米ドル買い」が進み、米ドルは主要通貨に対して上昇しました。円相場は1米ドル=145円台前半まで円安米ドル高が進展しました。 相場の注目点 イスラエルとイランの武力衝突は5日目となります。イランが停戦を模索していると伝わり一旦は緊張が緩和しましたが、再び緊張が高まっています。米軍が中東地域に戦闘機を追加配備したことが伝わったことや、トランプ大統領がSNSでイランに対して「無条件降伏」を求め、「米国の忍耐は限界に近づいている」と警告したことで、米国の介入により中東情勢が悪化することが懸念されています。今後のポイントは、イランとイスラエルが停戦合意に応じるかや、イランがホルムズ海峡を封鎖するかなどです。ホルムズ海峡の封鎖は、イラン自身の石油の輸出ができなくなることや、米軍の軍事行動を招くなど、自らの首を絞めるため、その可能性は低いと見られています。仮にホルムズ海峡が封鎖された場合には、原油価格の急騰や、株価下落などの悪影響が懸念されます。他方、米国で18日まで開催されるFOMCの結果にも注目です。金融政策は据え置きとの見方が大勢で、経済や金利見通しに注目が集まります。関税の影響からタカ派的なメッセージが出されれば、一時的な米ドル高材料となりますが、米国景気を巡る懸念が米ドルの上値を抑えると見ています。 (野村證券 投資情報部 坪川 一浩) (注)データは日本時間2025年6月18日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点
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昨日 16:31
【野村の夕解説】日経平均株価は続伸 日銀は国債買い入れ額を減額へ(6/17)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 17日の日経平均株価は、日銀の金融政策決定会合を問題なく通過し、堅調に推移しました。中東情勢の緊迫緩和期待を下支えに日経平均株価は小幅高で寄り付いた後、正午ごろに発表予定の日銀金融政策決定会合の結果がハト派的になるとの思惑から、外国為替市場では1米ドル=145.00円台と前日15:30時点の1米ドル=144.10円から円安で推移しました。円安を追い風にハイテク関連株が上昇し、一時前日比269円高となりました。12時半頃に会合結果が発表され、日銀は政策金利を0.5%に据え置き、四半期ごとの国債買い入れ減額幅を2026年4月以降は現状の4,000億円から2,000億円に圧縮することを決定しました。日銀の発表は想定通りであったものの、10年国債利回りが1.45%から1.465%と小幅に上昇(価格は下落)したことを受けて銀行株が上昇に転じました。その後も、旺盛なAI半導体需要を背景に半導体関連株が日経平均株価の上昇を牽引し、終値は前日比225円高の38,536円となりました。個別銘柄では、「Nintendo Switch2」の販売が好調な任天堂が、前日比+4.14%と4営業日続伸しました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注) データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 17日に米国で5月小売売上高と5月鉱工業生産が発表されます。トランプ政権の関税政策が、消費や生産活動にどのような影響を与えているかが注目されます。 (野村證券投資情報部 松田 知紗) ご投資にあたっての注意点
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昨日 09:00
【週間ランキング】日本株の値上がり/値下がり銘柄は?(6月第2週)
※画像はイメージです。 日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(上位) 2025年6月第1週(2025年6月6日~6月13日) 2025年5月月間(2025年5月30日~6月13日) 2025年年間(2024年12月31日~2025年6月13日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2025年6月13日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 日本主要銘柄・株価騰落率ランキング(下位) 2025年6月第1週(2025年6月6日~6月13日) 2025年5月月間(2025年5月30日~6月13日) 2025年年間(2024年12月31日~2025年6月13日) (注)対象はTOPIX500、直近値は2025年6月13日。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 <参考>今週の日本株式市場パフォーマンス 主要指数 TOPIX: 東証33業種 (注)業種分類は東証33業種ベース。直近値は2025年6月13日時点。(出所)ブルームバーグより野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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昨日 08:21
【野村の朝解説】早くも中東情勢の鎮静化を見据えた動き(6/17)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 16日の米国株式市場で主要3指数は揃って反発しました。中東情勢を巡ってはイラン、イスラエル両国の間で依然として攻撃の応酬が繰り広げられていますが、昨日はイランが停戦を模索していることが一部報道で伝わったことを受け、中東情勢の一段の悪化は回避できるとの期待感から投資家心理が改善しました。先週末に急騰していた原油先物価格は下落に転じており、米国株にも買い戻しの動きが広がりました。加えて、16日開幕のG7サミットを見据え、米国と各国の通商協議が進展するとの期待も株価の支えとなりました。 相場の注目点 米国では今晩からFOMCが開催されます。政策金利据え置きが予想される中、FOMC参加者の政策金利見通しの変化が注目点となります。仮に見通しが修正された場合は利下げペースの修正に留まるのか、政策金利の着地点の見通しまで変更されるのかが焦点となります。関税政策や先々の減税政策の影響などから、前回の見通し発表時点(25年3月19日)と比較して、FRBはインフレへの警戒を強めているとみられます。加えて、直近5月の雇用統計で雇用環境の堅調が確認できたこともあり、FRB高官は利下げを急がない姿勢を維持しています。昨日発表された6月NY連銀製造業景況感指数では、6ヶ月先の見通しが2025年2月以来の水準を回復するなど、関税政策を巡る懸念が後退していることが示唆されました。今回の会合でFRBはインフレ見通しと政策金利見通し双方を上方修正する公算が大きいとみられ、FRBのタカ派姿勢が確認されれば、米ドルの買い戻し材料になると考えられます。もっとも、米景気を巡る懸念から米ドルは上値の重い推移が続いており、対円や対ユーロでのドル買いは限定的になりそうです。 (野村證券 投資情報部 引網 喬子) (注)データは日本時間2025年6月17日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点
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06/16 17:15
【野村の夕解説】日経平均株価は477円高 中東情勢による下げ幅戻す(6/16)
(注)画像はイメージです。 本日の動き 15日に報道された、イスラエルとイランの衝突に対して米国が関与する可能性があるとのトランプ大統領の発言を受け、中東情勢の緊張が早期に緩和されるとの期待感が広がりました。これを背景に、先週末の地政学リスクによる下落分を取り戻す動きが強まり、日経平均株価は前営業日比222円高の38,056円で寄り付きました。その後、17日未明にG7サミットが行われているカナダで、石破首相とトランプ大統領の首脳会談による関税交渉の進展が期待されていることや、16日から開かれている日本の金融政策決定会合で、国債買い入れ額の減額ペースが緩やかになるとの観測も支えとなり、相場は堅調に推移しました。最終的に、日経平均株価は前営業日比477円高の38,311円で取引を終えました。個別では、アドバンテストが9%高となり、単独で日経平均株価を217円押し上げました。 本日の市場動向 ランキング 本日のチャート (注) データは15時45分頃。米ドル/円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。米ドル/円は11:30~12:30の間は表示していない。(出所)Quickより野村證券投資情報部作成 今後の注目点 16日は、米国においてニューヨーク連銀製造業景気指数が発表されます。18日には、FOMCの結果発表とFOMCメンバーによる経済見通しが注目されます。また、G7サミットにおける中東情勢の鎮静化を求める共同声明の採択に注目が集まります。 (野村證券投資情報部 笠原 光) ご投資にあたっての注意点
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06/16 08:14
【野村の朝解説】中東情勢の悪化を懸念し、米国株は下落(6/16)
(注)画像はイメージです。 海外市場の振り返り 13日の米国株式市場では、主要3指数が反落しました。イスラエルによるイラン核施設への攻撃に対してイランが報復措置に出たと伝わり、紛争激化への懸念から原油先物価格は、1日の上昇率で約3年ぶりの大幅上昇を記録、金価格も過去最高値近辺で推移しています。米国債市場では原油高に伴うインフレ観測から金利が上昇、為替市場では米ドルが反発し、対円では1米ドル=144円台で推移しています。イスラエルとイランは24年4月、10月にも報復攻撃を展開しましたが、深刻な事態は回避してきました。野村證券では事態の進展を注視しながらも、現時点では長期化する可能性は低いと見ています。 相場の注目点 今週は日本、米国ともに金融政策会合が開催されますが、いずれも政策金利は据え置きの見通しです。日本銀行は現在、国債の月間購入額を四半期ごとに4,000億円程度減額しています。今回の会合では現行の計画の中間評価と26年4月以降の減額ペースが議論される予定です。日銀内では長期・超長期国債利回りの上昇を受けて、2,000億円程度への減額が議論されていると報じられています。米国ではFRBの政策金利見通しに注目が集まっています。3月FOMC時点では1回当たりの利下げ幅を0.25%ポイントとした場合、25年、26年ともに政策金利見通し(中央値)は2回の利下げが見込まれています。先物金利は25年中に2回、26年中には2.5回の利下げを織り込んでいます。一方、野村證券では25年の利下げは「1回」へ変更される可能性が高いと予想しています。3月FOMC時点と比較して、関税を巡る状況は厳しさを増しており、地政学リスクも高まっています。このため、FRB内では従来の想定以上にインフレへの警戒感が高まっていると考えています。利下げ幅や政策金利の着地点に大きな変更がなければ市場への影響は限定的だと考えられます。 (野村證券 投資情報部 尾畑 秀一) (注)データは日本時間2025年6月16日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ご投資にあたっての注意点
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06/15 18:00
【投資と税金】相続後に上場株式を売却 特例で税負担を減らせる?
相続で残された財産には、現金や不動産のほかに、上場株式が含まれている場合もあると思います。無事に遺産分割協議がまとまり、上場株式を取得しても、それを売却し譲渡所得が発生した場合には、所得税・住民税がかかります。しかし、相続で取得した株式を売却した場合、税金負担が軽くなる特例があると聞きました。その特例について、大手町トラストの税理士に伺いました。 (注)画像はイメージです。 はじめに 上場株式を売却した場合の譲渡所得の金額は、通常、売却金額から取得価額と売却手数料等の譲渡費用を差し引いて計算しますが、相続により取得した上場株式を売却する場合は、取得価額の取り扱いが下記のようになります。 相続した上場株式を売却した場合の取得価額 相続により取得した財産を売却した場合、その財産の取得価額は相続時の時価ではなく、被相続人の取得価額を引継ぎます。なお、非課税口座(NISA)に受け入れられていた上場株式等が相続により払い出された場合は、原則として、相続開始日の終値に相当する金額が取得価額となります。被相続人の取得費が分からない場合は、同一銘柄の株式ごとに、売却代金の5%相当額を取得費とすることも認められています。 上場株式等の取得価額の確認方法 ① 証券会社などの金融商品取引業者等から送られてくる取引報告書で確認取引内容は、取引報告書のほか、金融商品取引業者等が交付する取引残高報告書、月次報告書、受渡計算書などで確認できる場合があります。 ② 取引した金融商品取引業者等の「顧客勘定元帳」で確認過去10年以内に購入した金融商品は、その金融商品取引業者等で確認可能です。 ③ ご自身の手控えで確認取得価額が日記帳や手控えで分かる場合はその額を使用し、取得時期のみ分かる場合はその時期を基に算定可能です。 ④ ①~③で確認できない場合名義書換日を調べて取得時期を特定し、その時期の相場を基に取得価額を算定できます。例えば、発行会社の株主名簿・複本・株式異動証明書などの資料(④’)を手がかりに株式等の取得時期(名義書換時期)を把握し、その時期の相場(④”)を基にして取得費(取得価額)を計算することができます。※④’ 株券電子化後、手元に残った株券の裏面で確認可能 相続税の取得費加算の特例 相続により取得した財産を、相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内、すなわち相続開始日の翌日から3年10ヶ月以内に売却した場合には、その売却した人が負担した相続税のうち一定金額を取得費に加算して譲渡所得の計算を行うことができます。「相続税の取得費加算の特例」と呼ばれ、譲渡所得にかかる税負担を減らすことができます。 ※この特例は譲渡所得のみに適用されるため、株式等の譲渡による事業所得及び雑所得については適用できません。 取得費加算額の計算式 取得費に加算する相続税額は、次の算式で計算した金額となります。 ただし、その金額がこの特例を適用しないで計算した譲渡益の金額を超える場合は、その譲渡益相当額となります。 なお、譲渡した財産ごとに計算します。 相続により取得した株式と同一銘柄の株式を保有している場合において、取得費加算の特例適用対象期間内にその株式の一部を譲渡したときには、その譲渡については、その相続により取得した株式の譲渡からなるものとしてこの特例を適用することができます。 手続き 相続税の取得費加算の特例を適用するには下記の書類を添付して確定申告をすることが必要です。 ① 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書② 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書 まとめ 相続税の取得費加算の特例が適用されるには、相続税を納めていることが前提となります。 相続した株式の内容を精査した上で、株を売却する場合は特例の適用期限を考慮し、早めに税理士に相談するなど対応されるとよいでしょう。 この資料は情報提供を唯一の目的としたもので、投資勧誘を目的として作成したものではありません。この資料は信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、野村證券は、その正確性および完全性に関して責任を負うものではありません。この情報は、ご覧いただいたお客様限りでご利用いただくようお願いいたします。詳しくは、所轄税務署または顧問税理士等にご確認ください。 ご投資にあたっての注意点
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06/15 09:00
【動画 3分チャート塾】シーズンⅤ:第7回 他のサインと重なっているかもポイント
「動画 3分チャート塾」は、株価チャートの見方を学びたい初心者から中級者の方向けの動画シリーズです。 今回は、ローソク足など、トレンドライン以外のサインとの関連性について、説明しています。 シーズン I:意外と知らないローソク足(全8回)ローソク足の基本の読み方や中長期的な相場の捉え方などについてわかりやすく解説していきます。シーズンII:相場の見方の強い味方、移動平均線(全9回)移動平均線の基礎や活用法についてわかりやすく解説していきます。シーズンIII:上値、下値のメドを探ろう(全10回)上値、下値メドの探り方についてわかりやすく解説していきます。シーズンIV:相場の過熱感を測るには?(全9回)オシレーター系指標についてわかりやすく解説していきます。シーズンV:トレンドラインを引いてみよう(全9回)トレンドラインについてわかりやすく解説していきます。 ご投資にあたっての注意点
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06/14 12:00
【注目トピック】英国発「トラス・ショック」を振り返る 米国債市場への示唆
※画像はイメージです。 米国債市場への懸念は「トラス・ショック」を彷彿 足元で米国の超長期国債利回りの上昇リスクをどう捉えるかというテーマに関心が寄せられています。特に、債券価格の下落(金利上昇)と通貨安の同時進行が、2022年に英国で生じた「トラス・ショック」を彷彿とさせたことは、米国債市場への懸念を高めたと考えられます。 2022年9月23日、リズ・トラス英首相(当時)は2023年度予算を見据え、大規模な減税政策を柱とする一連の財政政策、ミニ予算「成長計画2022」を公表しました。所得税率の引き下げや法人税増税計画の中止などが盛り込まれ、停滞が続く英国経済の立て直しを目的とするものでしたが、トラス政権の思惑に反して発表直後から金融市場は混乱に陥り、英国市場は、通貨ポンド、国債、株価の「トリプル安」に見舞われる結果となりました。 市場がここまで過敏に反応した背景には、①予算責任局(OBR)※による経済・財政の推計や政府の財政目標の検証・評価を先送りにし、財源を示さず「成長計画2022」で財政拡張の断行を目指したことで、②財政悪化懸念から英国債利回りが上昇し、③英国を中心とした年金運用機関等が資産運用のために提供していた国債の担保価値が下がり、一部のポジションの解消で国債利回りの上昇が加速したこと、などがあったと考えられます。 ※ 英国政府は通常、新しい財政計画作成の際には独立機関である予算責任局(OBR:Office for Budget Responsibility)ヘ経済・財政の推計の予測・検証を委託する。 ミニ予算「成長計画2022」発表当時の英国 「トラス・ショック」が発生した当時の英国は、EU離脱の余波が続くなか、エネルギー価格の高騰がインフレ率を押し上げ、CPI(消費者物価指数)は2022年9月に前年同月比+10.1%、同年10月には同+11.1%へと加速していました。実質賃金はマイナスに沈み、景気は低迷、また、政治の混乱から短期間での政権交代が続く中で、財政拡張によって景気を押し上げようという機運が高まりやすい状況にあったといえます。 一方、2022年の世界経済はコロナ禍からの回復途上にあり、また世界的なインフレ加速に対応してFRBを中心とする海外主要中央銀行は政策金利引き上げ局面の最中にありました。英国においても、イングランド銀行(英中銀)は2021年12月に利上げを開始しており、それ以降、会合毎の利上げを継続、さらに2022年2月には保有する国債の償還分の再投資停止による量的引き締め策(QT)にも踏み出していました。 行き過ぎた財政拡張は国の信認棄損を招きうる 「成長計画2022」を引き金とした金融市場の混乱は、2週間程度と比較的短期間で鎮静化に向かいました。カギとなったのは、英中銀による緊急対応と政府の計画撤回による財政政策方針の見直しだったと考えられます。 「トラス・ショック」発生当時、英中銀はQTを実施しており、2022年9月22日には、同年10月上旬から国債の売却を開始しQTを加速する計画を公表したところでした。しかし、翌日にトラス政権が「成長計画2022」を打ち出し金融市場が混乱に陥ると、発表から1週間足らずで国債売却計画を延期し、英長期国債を同年10月14日まで無制限に購入する緊急対応を発表しました。これを受け、一時5%前後まで上昇していた英国30年国債利回りは3%台後半まで急低下しました(下図表)。また、根本的な原因である政府の財政拡張計画に関しても、クワーテング財務大臣(当時)が解任され、後任となったハント氏が就任早々、10月17日に「成長計画2022」の大部分の撤回を発表しました。トラス政権の財政拡張計画によって英国は一時、英国からの資本逃避という厳しい事態に見舞われました。仮に先進国であっても、財政拡張策には限度があることを示唆する経験であったと言えます。 2022年の英国国債利回りと株価指数 (注)データは日次。期間は2022年年初~年末まで。(出所)各種資料、LSEGより野村證券投資情報部作成 ショック時は高格付け社債ほど影響は軽微 英トラス政権による「成長計画2022」公表を受け、英社債市場ではハイイールド債だけでなく格付けの高いAAA債の利回りも上昇しました。しかし、高格付け社債の利回り上昇の程度は相対的に抑えられ、社債の中でも格付けの高低による選別が顕著になっていたことが推察されます。 格付け高低別社債と英国10年国債利回りのスプレッド (注1)データは日次で、直近値は2025年6月12日。各格付けの社債を対象とした指数(Sterling Corporate Index)の利回りから英10年国債利回りを差し引いて算出。(注2)米シリコンバレー銀行(SVB)が経営破綻したことを受けて金融市場にリスク回避の動きが広がった。(出所)ICE、米バンク・オブ・アメリカ、LSEGより野村證券投資情報部作成 減税法案の行方とトランプ大統領の言動に注意 米国に目を移すと、現在、トランプ政権は7月4日の独立記念日までの減税法案成立を目指し、議会審議を進めています。同法案は下院を通過していますが、上院との調整は難航することが予想され、減税規模は現在の下院案からさらに拡大する可能性があるもようです。 2022年の「トラス・ショック」では、財政拡張による景気押し上げ効果への期待よりも、財政規律を無視した大規模減税の断行が国債増発やインフレのさらなる加速を招くリスクへの懸念が強く意識され、政府債務の健全性や政府への信認低下につながりました。米国も英国同様双子の赤字を抱えていますが、米国債は世界的に安全資産と認識されています。また基軸通貨である米ドルに対する需要は強く、通貨安圧力が働きにくいという点は英国とは異なります。そのため、英国と同じ事態に陥る可能性は低いと考えています。 しかし、足元では財政赤字拡大やトランプ関税を背景に、「米ドル離れ」の議論が根強く、米10年国債利回りが高止まりする中でも米ドルの反発力が鈍い状況が続いています。財政運営においては、財源についての議論も含め、広く国民の理解を得ることで予見可能性を高めることが重要です。また、足元では一部で、トランプ大統領がFRBに利下げや議長の解任を迫るリスクが警戒されていますが、実行された場合は米ドルに対する信認を低下させかねません。今後の減税法案の行方とあわせて、トランプ大統領の言動にも引き続き注意が必要です。 <執筆者紹介> 野村證券投資情報部 ストラテジスト引網 喬子 2023年10月より投資情報部に在籍。米国株の調査業務を経験後、各国経済・為替に関する投資情報の発信を担当。個人投資家を対象に、わかりやすい情報提供を心掛ける。 ご投資にあたっての注意点