米国10年国債利回り(以下、米長期金利)が今年6月下旬から7月上旬にかけて急上昇し、4ヶ月ぶりに4%台を付けたことを受けて、株式市場ではにわかに緊張が走りました。しかし、最新の経済指標の発表などを通じて米国のインフレのピークアウト傾向に変化がないことが確認されると、米長期金利は再び低下に転じました。株式市場は上昇を再開し、今年前半は上値が重かったNYダウも昨年11月の戻り高値を更新し、ナスダック総合指数、S&P500指数に続き、チャート好転が明確となりました。

チャート面からみると、今回の米長期金利の4%を巡る一連の動きは、今後の相場動向を見る上で非常に重要な意味を持っていたと言えます。というのも、今回の動きが、昨年10月以降の下降トレンドラインを突破しての金利上昇だったためです。その結果、金利上昇に弾みがつきやすく、昨年10月に付けた金利ピーク水準(4.335%)を上抜けした場合は、金利上昇の動きがさらに加速するリスクが否定できませんでした。その場合、株式市場にとってもここまでの相場の戻りを(全てではないにせよ)否定される動きであり、相応の調整を免れなかったかもしれません。

結果的には、米長期金利の動きだけを見れば単に「往って来い」の展開だったわけですが、週足チャート(下図)上では、7月第1週に形成した大陽線を翌週の大陰線で打ち消す動きとなっています。「最悪シナリオ」を回避したチャート面からの強いメッセージを踏まえれば、足元で年初来高値を更新した米国株式市場の動きも納得と言えるでしょう。  

チャート面からは、今後の米長期金利の動きには、2つのシナリオが考えられます。1つ目は、今年3月の金利ピークと直近7月の金利ピーク水準である4.1%レベルを上限、今年1月~4月に金利低下時に何度も下支えとなった3.3%レベルを下限、とするボックス相場への移行です。2つ目は、昨年10月の金利ピーク水準(4.335%)から直近7月の金利ピーク水準(4.089%)を通る形で下降トレンドラインを引き直した、これまでよりも緩い金利低下トレンドへの移行です。いずれのシナリオにせよ、株式市場にとってはそう悪くはなさそうです。

テクニカル分析は過去の株価・為替等の値動きを分析・表現したものであり、将来の動きを保証するものではありません。また、記載されている内容は一般的に認識されている見方について記したものですが、チャートの見方には解釈の違いもあります。

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