結論:株価の重石となっていた米国の利上げは早晩終了へ 企業業績も上方修正局面に入り、株価の復調が明確になるとみる

目次
・利上げは早晩終了し、業績拡大が株価の追い風
・米国商業用不動産の問題は中小金融機関の範囲内に
・米国テクノロジー企業は業績拡大局面へ
・中国政府は景気対策を行う必要に
・様々なセクターの調整は一巡
・YCC柔軟化は金利のボラティリティーを抑制

利上げは早晩終了し、業績拡大が株価の追い風

FRBのインフレ抑制に向けた利上げは最終局面にあります。しかし、米国経済の強さが続いており、利上げ終了は先送りされる可能性があります。長期金利の上昇は、株価の重石となっています。我々は、米国の利上げ終了は大きな転換点となり、インフレの低下が確認され、企業業績の底打ちが視野に入れば、株価の復調は明確になるとみてきました。インフレは緩やかながらも減速が続いています。利上げは早晩、終了するでしょう。これまでの利上げによる景気下押し圧力は、着実なインフレの減速に必要な要素で、景気後退はメインシナリオではありません。米国企業業績は実質GDP成長率に先んじて増益転換と増益の加速が予想されます。

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米国商業用不動産の問題は中小金融機関の範囲内に

米国では国債や金融機関に対する格下げがあり、その背景にある問題が市場にリスクとみられています。特に、中小金融機関が融資を増やしてきた商業用不動産の市況悪化が、大きな懸念となっています。しかし、住宅不動産市場は供給不足によりひっ迫気味で、大手金融機関への影響は限定的で、金融システムリスクに至ることは無いとみられます。

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米国テクノロジー企業は業績拡大局面へ

米国の消費や雇用は堅調で、利上げ終了は先送りされるとの見方が強まっています。政策金利の水準は景気引き締め的です。米中対立が深まるものの、先端テクノロジー分野への制限に限られているようです。2023年4-6月期の決算は、事前予想を上回る業績改善となりました。同四半期を大底に、企業業績はテクノロジー分野を中心に拡大局面に転じるとみられます。

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中国政府は景気対策を行う必要に

ユーロ圏は米国以上に景気減速が鮮明で、ECBの利上げも最終局面にあります。中国は、景気失速が鮮明です。主要経済指標の中でも不動産開発投資が低迷しており、地方政府の融資平台を通じた資金調達による債務問題が再び浮上しています。不動産開発企業の経営問題も深刻化しています。インフレもマイナスに転じるなど、需要不足が懸念されます。中国政府は景気悪化を防ぐために、断続的な景気対策を行わざるを得ない状況です。

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様々なセクターの調整は一巡

日本は、円安や交易条件の改善が、輸出企業の追い風になっています。自動車は米国向けを中心に、数量ベースで復調がみられます。半導体などテクノロジー製品の調整は一巡し、2023年7-9月期以降は緩やかな回復局面になるとみられます。素材産業も長引く調整を経て、在庫削減から好転入りのタイミングを迎えつつあります。円安の追い風はインバウンド需要を拡大させています。今後は、賃金の上昇が経済の好循環につながるかがポイントとなります。

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YCC柔軟化は金利のボラティリティーを抑制

インフレ率は高止まりしていますが、日本銀行は持続的・安定的な物価目標の達成に十分な自信を持てていません。YCC(イールドカーブ・コントロール)の柔軟化により、金融緩和の持続性を高める対応が行われました。金融緩和の長期化とYCCの副作用リスクの低下は、金利のボラティリティー(変動率)を抑えるでしょう。日米金利差の拡大で、円安・米ドル高が進んでいます。円安やテクノロジー製品の調整一巡、2023年4-6月期決算発表の良好な結果から、日本の企業業績は上方修正局面入りしたとみられます。バリュエーションでみた割高感も限定的で、野村證券は2023年末の日経平均株価の見通しを34,000円と予想します。

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(野村證券投資情報部 小髙 貴久)

※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 9月号」(発行日:2023年8月21日)「投資戦略の概要」より

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