海外投資家は日本の内需企業の成長性に懐疑的であると推察されます。下の左側図表の日本株の業種別外国人保有比率は、グローバルで製品やサービスを販売する精密機器(43.0%)や電気機器(40.5%)などで高い一方、内需株であるサービス業(25.0%)、小売業(21.8%)、空運業(13.0%)(注1)など、また、市場が縮小しているパルプ・紙(18.7%)などで低い状況です。成長性が低いことなどで株価が割安となっているPBR(株価純資産倍率)1倍割れの業種も外国人保有比率が低い業種で多くなっています。

人口減少が日本の内需企業の成長への課題です。ブルームバーグ集計による市場予想によれば2032年に日本の潜在GDP成長率は前年比でマイナスとなり、予想のある2051年までは少なくともマイナス成長が継続すると予想されています。潜在GDP成長率は、資本、労働量、その他(全要素生産性)の成長率に要因分解されます。このうち労働量は2018年からマイナスの寄与が継続し、2032年の潜在GDP成長率では年率マイナス0.76%の寄与が予想されています。日本の人口減少による労働力の低下とともに、需要の減少も予想されます。外国人は、日本の内需株を、成長性において衰退産業と同様に評価していると推察されます。

インバウンド(訪日外国人観光客)は消費拡大の起爆剤の一つです。下の右側図表は、主要国からの訪日外客数と訪日客一人当たりの平均消費額について、コロナ禍前と2023年の比較です。2019年1-6月期と2023年1-6月期では、訪日外客数は1,663万人から1,071万人に減少したものの、一人当たり平均消費額は13.2万円から19.0万円に増加しました。

国別では、中国からの訪日外客数は、中国政府が国外団体旅行を解禁(2023年8月)する以前の統計であることから2023年1-6月期は50万人と、2019年同期の453万人に比べて大幅に落ち込んでいる一方、一人当たり平均消費額は20万円から50万円に増加しました。訪日外客数が増加した米国を含め、他国でも平均消費額が増加する傾向があり、円安により旅行予算が円換算で増加したと推察されます。日本人の一人当たり年間平均消費額は約132万円で、これは訪日外国人平均消費額の6.9人分です。

日本政府は3月に「第4次観光立国推進基本計画」を閣議決定し、訪日外国人旅行消費額5兆円を目指します。観光庁はインバウンドの拡大に向けた施策を行い(注2)、経済産業省はもともと日本国内向けの財やサービスを輸出する取り組みを行っています。日本の内需株のうち、インバウンドや外需を追い風に復活・成長に成功する企業は、今後海外からの投資資金流入が期待できると考えます。

(注1)航空法により、外国人の保有上限は議決権割合の3分の1未満(33.3%)に制限されている。
(注2)施設や設備などの受入環境整備や人材不足対策、訪日プロモーションなどを予算で強化。

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