日本銀行は9月22日、大方の事前予想通りマイナス金利政策や10年国債利回りの誘導目標など、主要な金融政策の据え置きを決定しました。ただし、日銀が7月会合でYCC(長短金利操作)政策の運用柔軟化を決定、その後も政策委員会の一部のメンバーから政策修正に前向きな発言が聞かれたことから、市場では金融政策修正へ期待が根強く、長期金利は高止まりしています。

7月会合後、市場の注目を集めた日銀高官の発言を整理してみましょう。田村審議委員は8月30日、「持続的・安定的な2%の物価上昇の実現が見通せた場合、当然マイナス金利の解除も選択肢の一つとして入ってくる」と発言した上で、「来年1-3月ころ」にはインフレの状況に対する「解像度が一段と上がると期待している」と、2024年早々に金融政策を見直す可能性があることを示唆しました。

植田総裁も9月6日に読売新聞の単独インタビューに応じ(掲載は9月9日)、「マイナス金利の解除後も物価目標の達成が可能と判断すれば(解除を)やる」と発言、「年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」との見解を示し、市場の早期政策修正期待を高める結果になりました。ただし、ブルームバーグは複数の日銀関係者の発言として、「ゼロではない」発言は「一般論」に過ぎず、従来と比べて踏み込んだ内容ではないとの見解を報じています(9月15日報道)。

田村、植田両氏の間で政策修正を検討し得る時期に若干の違いがありそうですが、修正の条件として「物価安定目標の持続的・安定的な達成」を挙げている点は共通しています。

一方、日銀で長く金融政策の企画・立案に携わってきた内田副総裁は、政策変更の条件として「引き締めが遅れて、2%を超えるインフレ率が持続してしまうリスクの方を、より心配する状況になる」としており、政策変更にはより慎重な印象です。同様に、高田委員、中川委員の発言からも、政策修正の条件として内田副総裁に近い見解である様子がうかがえます。

中村委員は「物価安定目標の達成」に加えて「企業の稼ぐ力がついたかどうかを見ることも重要」と独自の見解を示したうえで、政策修正のタイミングとして「来年1-3月にこだわる必要はない」との見方を示しました。

これらの発言を踏まえると、政策修正の条件や具体的なタイミングについて、日銀内でコンセンサスが形成されている可能性は低いと考えられます。

野村證券では、日本経済は回復基調を維持するものの、今年末から来年初にかけて回復ペースが中弛みし、日銀が「物価安定目標の持続的・安定的な達成」に自信を深める状況にはないと予想しています。YCCの撤廃は2024年10-12月期、マイナス金利撤廃は2025年以降との見方を維持しています。

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