決算前は「Q1上振れ&値上げ」、決算後は「Q2下振れ&値上げ」の銘柄に注目

企業の「値上げ」と株価および業績との関係について分析しました。初めに、値上げが株価に良い影響を与えているかを確認するため、直近の四半期(2023年7-9月)に公表された決算短信において、値上げが言及されている銘柄のパフォーマンスを調査しました。

単純な決算のサプライズによる影響と区別するため、「値上げの言及の有無」と「営業利益予想の上振れ・下振れ」に基づき、銘柄を4つのグループに分けて、各銘柄の対業種(TOPIX17業種)超過リターンを集計しました。その結果、2023年6月末以降の株価パフォーマンスは、営業利益の上振れ・下振れに関わらず、値上げに言及しているグループが優位であることが判明しました。

次に、値上げによる株高効果の背景を探るため、業績モメンタム(売上高、営業利益、営業利益マージン)を比較しました。興味深いことに、「業績がアナリスト予想を下回ったグループ」においては、「値上げに言及している銘柄」が、3つの項目すべてで「言及していない銘柄」に比べて、業績の悪化が抑えられていました。企業の値上げが業績にプラスの影響をもたらし、それが株高にも寄与していることが確認できます。

一方で、「業績がアナリスト予想を上回ったグループ」においては、「値上げに言及している銘柄」が「言及していない銘柄」を上回ったのは営業利益のみでした。値上げの言及が明確に優位ではない理由として、好業績の銘柄の中には、値上げを実施していてもその事に言及していないケースが含まれている可能性があることが挙げられます。「値上げで儲かった」とはいいにくい面があるのかもしれません。

投資戦略としては、決算発表の前後で次の2つのアプローチが考えられます。

(1) 決算発表前では、「値上げに成功している銘柄」を見つけることで、アウトパフォームする可能性が高まります。第1四半期(Q1)の決算サプライズは第2四半期(Q2)に影響を与えやすいことから、Q1で「営業利益予想が上振れ&値上げに言及あり」の銘柄が有望と言えるでしょう。

(2) 決算発表後では、決算が下振れした銘柄の中から値上げに言及している銘柄を選ぶことで、パフォーマンスの回復が期待できます。

(FINTOS!編集部)

要約編集元アナリストレポート「日本株ストラテジー – 注目点とトピック(2023年10月13日配信)」(プレミアムプラン限定)

(注)画像はイメージ。

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