暗号資産(暗号通貨・仮想通貨)とは、銀行等の第三者を介さずにインターネット上で取引できる財産的価値を有するデータ資産のことである。ブロックチェーン技術で台帳を集中型ではなく分散管理し、暗号資産の決済や送金の取引データ管理における信頼性を担保している。代表的な暗号資産にはビットコインやイーサリアムなどがあり、世界には25,000以上の銘柄が存在する。

2009年にビットコインが誕生して以降人気を集める投資手法となったが、近年は暗号資産の仕組みを悪用する事例の増加や、国際的に活動する暗号資産業者の破綻などがあり、利用者保護を巡る懸念が高まっている。また、規制の複雑化や各国間の相違についても問題視する声が増え、国際的な規制枠組みの必要性も高まっている。こうした状況を受けて、暗号資産に係るリスクを未然に防止するため、規制の制定や強化に向けた動きが活発になってきている。

欧州連合(EU)では世界で初めて暗号資産を包括的に規制する法律「暗号資産市場規制法(MiCA 規則)」の採用を決定した。23年5月に欧州理事会にて採択され、24年12月から適用される見通しである。MiCA 規則は、既存のEU 法では規制されていない暗号資産を対象としており、投資家保護や不正取引防止、暗号資産業者への規制を目的としている。施行されることにより、EU 全ての加盟国で一貫した規制の枠組みを構築することが可能となる。

また、証券監督者国際機構(IOSCO)は、23年5月、暗号資産とデジタル市場の規制に関して、相場操縦やインサイダー取引、詐欺、顧客資産保護、個人顧客の扱いなどを対象とした初の国際標準ルールを提案、公表した。IOSCO は法的拘束力を持たないが、世界の暗号資産業界における規制の一貫性と利用者保護の強化に資するべく、早期の確定を目指している。

日本においては資金決済法や金融商品取引法等にて、利用者を保護するための法改正が行われているが、国境を越えて流通する暗号資産は国際的に規制することが不可欠である。今後、グローバルな規制枠組が構築されることで、暗号資産業者が従うべきガイドラインや要件が一層明確化されるとともに、暗号資産業界の健全な発展に繋がっていくだろう。

(野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング 梶村 侑加)

※野村週報 2023年10月23日号「資産運用」より

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