結論:短期的な政治リスクの決着後、株価は復調色が強まるとみる。利上げ終了も大きな転換点に

目次
・いずれ金利低下と業績拡大局面に
・FRBは高い政策金利を暫く維持か
・米国下院の混乱に注意もテクノロジー企業の業績は拡大へ
・半導体市場の復調が鮮明に
・日本企業の業況は良い
・円安もあり日本企業の業績は良好

いずれ金利低下と業績拡大局面に

日米で長期金利が上昇しています。米国の金融引き締め姿勢の長期化や、主要国の景気持ち直しなどが理由とみられます。金利上昇による景気や企業業績の悪化(いわゆる逆業績相場の特徴)は今のところ限定的です。我々は、利上げ終了は大きな転換点となり、いずれ金利が低下し、企業業績の拡大が明確になれば、金融相場、業績相場として株価が追い風を受ける局面に移るとみます。ただし、経済・金融市場のリスクには短期的に注意すべきものもあります。

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FRBは高い政策金利を暫く維持か

ニューヨーク連銀が長短金利差から計算する1年後の米国景気後退確率は高く、住宅ローン金利の上昇もあって、住宅市況は低迷しています。しかし、米国の消費には復調がみられ、雇用環境も殆ど悪化していません。原油価格が上昇しているものの、米国のインフレ率は着実に減速しています。ただし、FRBの物価目標である2%の上昇率に向けては、更なる減速が必要です。FRBは利上げを終了させたとしても、高い政策金利を暫く維持するとみられます。金利低下局面に入るとしても、そのペースは緩やかであるとみます。

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米国下院の混乱に注意もテクノロジー企業の業績は拡大へ

11月17日の暫定予算期限切れまでに米国下院の混乱が収束しなければ、政府閉鎖のリスクがあります。しかし、米国企業業績はS&P500指数EPS(1株当たり利益)でみて、2023年7-9月期にいよいよ増益に転じるかどうかの節目にあります。先行きはテクノロジー企業を中心に業績拡大が強まり、短期的な政治リスクの決着後、株価は復調色が強まるとみられます

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半導体市場の復調が鮮明に

ユーロ圏は景気悪化懸念が強まっており、利上げは9月が最後で、金利上昇圧力は収まってゆくでしょう。中国は景気減速が懸念され、不動産開発企業の経営難などの問題もあります。中国政府は矢継ぎ早に景気支援策を発表しており、財政支出を伴う経済対策も検討されるとみられます。一方、中国で鉱工業セクターの在庫圧縮が進んでいます。また、世界的に半導体市場の復調が鮮明になりつつあり、日本の製造業にも恩恵が及ぶことになるでしょう

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日本企業の業況は良い

日本の輸出は円安や国内外の在庫調整の進展に伴い、回復に向かっています。企業の景況感は、製造業の改善だけでなく、非製造業においても人流回復や企業の価格転嫁などが功を奏し、良好です。一方、実質賃金は大幅なマイナスとなっており、家計の生活水準は物価上昇分を賄いきれず、実質的に低下しています。政府は期限付きの所得税減税や物価高対策などの経済対策の策定を進めています。消費者の値上げ疲れなども見え始め、インフレ率は減速に向かう可能性が出てきましたが、長期金利は海外の金利環境につられるように上昇しています。日銀は、異例の金融緩和政策の変更素地が整うのを見極める段階にあるとみられます。

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円安もあり日本企業の業績は良好

米ドル円レートは企業の想定為替レートを上回る円安が進んでいます。円安は製造業を中心に業績の追い風で、良好な経済環境の下で企業業績は増益の勢いが強まるとみます。ここ1ヶ月間の株価下落で、PERなどのバリュエーションでみた割高感は、かなりの程度払しょくされています。野村證券は2023年末の日経平均株価の見通しを34,000円と予想します

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(野村證券投資情報部 小髙 貴久)

※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 11月号」(発行日:2023年10月23日)「投資戦略の概要」より

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