米国企業の2023年7-9月期決算は良好だったと考えます。S&P500指数を構成する米大企業500社の7-9月期の純利益総額の前年同期比の成長率予想は、決算発表前の1%台半ばから、450社強が発表を済ませた時点で6%強に引きあがりました(注)。

決算でポジティブだった点は、IT関連の設備投資の増加です。PC向け半導体やネットワーク機器関連企業の業績が堅調でした。これは、生成AIの本格的な導入を前に事業会社がIT設備を増強し、PCサイクルの底打ちが従来の予想よりも早まったことを示唆していると推察されます。S&P500情報技術株指数は、コロナ禍中のテレワーク用のPCやスマートフォンの需要急増などを受けピーク時にはコロナ禍前(2019年11月)の約2倍に上昇し、その後需要の反動減を受け下落、今年に入り生成AIへの期待などを背景に再度反発しました。

生成AIに関して決算では、複数の大手クラウド企業が、「生成AI関連のクラウド事業の設備投資は2024年以降本格化する」「生成AIは今後数年間で数百億ドルの収入を生む」、などとコメントしました。

ITの世代は、従来はデータ・プライバシー保護や効率性の観点から、データを一元管理する(中央集権型の)クラウドから、ブロックチェーン技術を用いて端末などで管理・計算する(分散型の)Web3へ移行するとみられていました。しかし、生成AIは現状では事前にデータセンターで機械学習させたデータツールにアクセスするクラウドの仕組みを必須とします。ITの世代は、従来のクラウドから、生成AIの活用を前提とする「新しいクラウド」へ移行し、Web3や、EU(欧州連合)が提唱するWeb3にAIを組み込んだWeb4.0などと共存することになると考えます。

2023年10月30日にG7は、「広島AIプロセスに関するG7首脳声明」とその指針・行動規範を発表しました。声明は冒頭で「生成AIがもたらす革新的な機会と変革の可能性を強調する」と、生成AIを活用する方針を示しました。  

G7首脳声明を受けた関係当局が制度や法令の整備に着手しており、生成AIの具体的な社会実装は早まりそうです。中でも、競争当局の調査が先んじて開始されたことは、生成AIを主導する大手クラウド企業の優位性が高まることが自明であることを示唆していると考えます。

(注)LSEG(旧リフィニティブ)による2023年11月10日時点の集計。

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