2024年の日本株の需給動向について、主な買い手は「自社株買い」と「海外投資家」になると予想しています。以下では、各投資主体の売買動向の見通しについて解説します。

【自社株買い】 2024年の自社株買いの実施額は約9.5兆円から10.5兆円と予想しています。実施額は、暦年ベースでこれまでの最高額になるでしょう。野村證券の予想では、2024年度のTOPIX-EPS(1株当たり利益)は前期比3.5%増益と予想しています。株主還元のための原資となる税引利益は引き続き高水準を維持すると見ています。2024年1月には、東京証券取引所が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願い(以下、要請)」に対応済みの企業の一覧を公開する予定です。現状では、東証からの要請が自社株買いを増加させている様子は読み取れませんが、一連の取り組みの実効性が高まることで、企業が株主還元への姿勢を大きく変える可能性に注目します。

【海外投資家】 2024年の海外投資家の買い越し額は、エクイティファイナンスの引き受け分を含め、2.5兆円から3.5兆円と予想しています。海外投資家による現物株の売買動向は企業業績との連動性が高い傾向があります。野村證券では、TOPIX(金融業を除く)の営業利益は2024年1-3月期は前年同期比+17.1%、4-6月期は同+10.2%と高水準で推移するものの、7-9月期は同-2.8%、10-12月期は同-7.4%と減益へと転じると見ています。業績が減速する7-9月期以降は、買い越しの勢いが鈍化、または売り越しに転じやすい環境になると予想します。

【個人投資家】2024年の個人投資家の買い越し額は、エクイティファイナンスの引き受け分を含め、0~1兆円と予想しています。現状、新NISA(少額投資非課税制度)が個人投資家の日本株投資に対する姿勢を大きく変容させるとは考えていません。その理由としては、(1)エクイティファイナンスを含む個人投資家による日本株の売買(現物株と先物の合計)は、旧NISAが開始した2014年に2.1兆円の売り越しとなったこと、(2)旧NISAの投資枠上限を100万円から120万円に上げた2016年では、旧NISA経由の買い越し額が2015年と比べて減少したこと、(3)積み立てNISA対象商品を集計した結果、2023年1~11月の資金純流入額は、海外株式投信が2.6兆円、日本株投信が497億円と、積み立てNISAにおいても海外株式投信の人気が高いことなどが挙げられます。

【売り越し主体】売り越し主体になると予想しているのは、自社株買いを除く事業法人と公的年金です。事業法人については、政策保有株の売却が進むことを見込んでいます。公的年金のうち、2023年9月末時点のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のポートフォリオにおける国内株式の比率は24.5%で、基本ポートフォリオの中心値である25%に近い水準にあります。株価上昇によってリバランス目的の売りが出やすい状況となっています。

(野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課)

要約編集元アナリストレポート「日本株投資戦略(12月号) – 「円高に強いセクター、銘柄」を探る(2023年12月15日配信)」(プレミアムプラン限定)

(注)要約編集元アナリストレポートの発行日は2023年12月15日。画像はイメージ。
(出所)野村證券市場戦略リサーチ部より野村證券投資情報部作成

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