我が国の年金制度は、公的年金と私的年金の2つに分けられる。公的年金は我々の受け取る年金のベースとなる制度で、国民年金と民間企業の従業員や公務員などが加入する厚生年金にさらに細分化される。それに対し私的年金は、企業側が福利厚生の一環として実施する企業年金と、個人が自ら加入する個人年金がある。

高齢者世代に支払われる年金給付を、その時々の現役世代が納めた保険料でまかなう方式は「賦課方式」といい、日本の公的年金制度の基本となっている。2023年度の日本政府予算ベースの社会保障給付費のうち、44.8%の60.1兆円を年金給付金が占めており、名目GDP(国内総生産)の約1割に当たる。

しかし、将来更なる少子高齢化が予測されている中、賦課方式による年金制度を持続可能なものとするため、年金給付金の積立が必要である。概ね100年間の年金給付金のうち、積立金により賄われるのは財源全体の1割程度となっている。その積立金を運用している組織がGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)である。

GPIF は、世界最大規模の機関投資家で、運用資産は200兆円を超える(23年3月末時点)。国内外の株式と債券に25%ずつ均等配分された基本ポートフォリオに沿った運用を行っている。23年3月末時点では国内株式を約50兆円保有し、これは時価総額の約6.7%を占める。このように、GPIFの資産運用は市場に与える影響が大きいため、「市場のクジラ」とも称される。

GPIF の22年度の収益率は1.5%のプラスとなり、運用資産残高は過去最大を更新した。GPIF は「年金財政上必要な運用利回りを最低限のリスクで確保する」という運用方針を掲げている。基本ポートフォリオに基づく着実な運用を実施するため、適時適切に資産配分のリバランスを実行しているようだ。

(野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング 中田 ももこ)

※野村週報 2023年12月11日号「資産運用」より

<お知らせ>「野村週報」は、2023年12月18日号(15日発行)より「週間 野村市場展望」と統合し、新たな「野村週報」としてリニューアルされます。
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