先週:小幅ながら上昇、これで6週連騰

前週の米国株は、前半は高値警戒感や雇用統計発表を前に上値が重い展開が続きましたが、週末に主要3指数であるNYダウ、S&P500、ナスダック総合は年初来高値を更新しました。

雇用統計の不安を”インフレ鈍化”統計が和らげる

7日(木)までに発表されていた雇用関連指標は米国における労働需要の低下傾向を示していたため、8日(金)に発表された11月雇用統計の非農業部門雇用者数増加幅が市場予想を上回ったことは株式市場にとってはサプライズとなり、政策金利高止まり長期化への懸念から株価は下落しました。ただし、平均時給の伸び率が横這いだったことや、同日10時発表の12月ミシガン大学調査による消費者期待インフレ率が11月確報値から低下したことからインフレ懸念は後退しました。最終的に市場では「FRBが追加利上げをするほどの状況ではない」と受け止められ、8日の株価は上昇して引けています。

Point1:13日(水)、24年の利下げを探るFOMC

12月FOMC(米連邦公開市場委員会)が12日(火)から開催され、13日(水)に結果が発表されます。12月FOMCは、FRB(米連邦準備理事会)の経済予測や、いわゆるドットチャートと呼ばれるFOMC参加者の今後の政策金利見通しが公表される会合です。

今回のFOMCでは政策金利据え置きがコンセンサスとなっていることから、市場の関心は2024年以降の金融政策に移っています。市場では、既に2024年に4~5回程度の利下げを織り込んでおり、米長期金利も4.2%まで低下しています。野村では、 ドットチャートで2024年中に「2~3回の利下げ」が示されるとみています。FRBが市場予想ほどの利下げ見通しを示さなかった場合、米長期金利は上昇し、株式市場も下落する可能性があります。

Point2: 12日(火)発表のCPIには目配りが必要

FOMC会期中の12日(火)には11月CPI(消費者物価指数)が発表されます。先週の株式市場でもインフレ指標が高い関心を集めたことから、予想と大きく乖離することがあれば市場のボラティリティが高まることも想定されます。市場予想では、食料品・エネルギーを除くコアCPIは前年同月比+4.0%と、前月から横ばいを想定しています。

野村でも同水準を予想しており、自動車ローンの与信条件の厳格化により新車価格が下落したり、雇用指標の軟化を受けた家賃関連のインフレ率が低下したりすることがコアCPIを下押しする状況が続くと判断しています。

そのほか、今週発表が予定される主要経済指標としては、13日(水)の11月PPI(生産者物価指数)、14日(木)発表の11月小売売上高、15日(金)の12月S&PグローバルPMI速報値などが挙げられます。

Point3:アドビ、オラクル…実は重要な9-11月期決算発表

米国は早くも9-11月期決算発表が本格化します。9-11月期決算企業数はS&P500企業ベースで全体の4%にすぎませんが、最も企業決算が集中する10-12月期決算(同、全体の89%)と2か月分の重なりがあることから、米国株を見通す先行指標として重要な決算期となります。

今週は、11日(月)引け後にオラクル(ORCL)、13日(水)引け後にアドビ(ADBE)の決算発表が予定されています。オラクルは主力のクラウド事業であるOCI(オラクル・クラウド・インフラストラクチャー)で、マイクロソフト(MSFT)やエヌビディア(NVDA)との協業を進めており、顧客企業が利用するクラウドサービスにAI(人工知能)を活用することで付加価値を高めています。アドビは、Adbe Fireflyという生成AIを活用した画像生成機能を編集ソフトのユーザーに提供し、機能強化を図っています。両企業ともAIを製品販売、業績拡大に積極的に活用していることから、1ヶ月後の大手ハイテク決算の事業環境を考える上でも示唆が多いと想定されます。

(FINTOS!外国株 小野崎通昭)

ご投資にあたっての注意点