生成系AIの普及によるAIサーバー市場の拡大

2022年11月、オープンAIの対話型AI「ChatGPT」が発表されて以降、大手テクノロジー企業による生成AIの開発競争が激化しています。生成AIの開発・運営には、大量のデータを処理するためのAI半導体が必要不可欠です。AI半導体を搭載したAIサーバーの需要が拡大しています。

AIサーバー市場の拡大はGPU需要を急速に高める

AIサーバーの価格(コスト)は、通常のサーバーに比べ約15倍になると野村證券では推定しています。コストの内訳をみると、通常サーバーでは、コストのうち約8割がCPUであったのに対し、AIサーバーではコストの約8割がGPUとなり、CPUのコストは約6%まで低下します。

これまで、コンピューターでの演算処理にはCPUが使用されてきましたが、AIの開発工程である機械学習ではアクセラレーター(注1)としてGPUなどを使用し、処理速度を高める手法が一般化しています。その他、AIサーバーではメモリー半導体の使用量も増加するとみられ、通常サーバーと比較し、DRAMで8倍(積層されたHBM(注2))、NANDで3倍の搭載量になるとマイクロン・テクノロジーはコメントしています。

(注1)処理能力を高めるために、追加して利用するハードウエアやソフトウエア。(注2)HBM(High Bandwidth Memory)は3D技術を用いた超高速DRAM。

(注)サーバーコストは野村證券エクイティ・リサーチ部の推定値。CPUはCentral Processing Unit、GPUはGraphics Processing Unit。
(出所)野村證券エクイティ・リサーチ部より野村證券投資情報部作成

半導体製造装置市場にも追い風

2022年10月に出荷を開始し需要が急拡大しているエヌビディアのAI用GPU「H100」は、複数のチップを1つのチップのように集積する「異種チップ集積」の製品で、TSMC独自の先端パッケージング技術「CoWoS」で製造されています。

H100の需要急増を受け、CoWoSの生産能力拡張が予想されており、後工程の製造装置市場拡大に寄与すると期待されます。

(注)CoWoSはChip on Wafer on Substrate。イメージ図はシリコンインターポーザー型のCoWoS-S。CoWoSには、シリコン基板の代わりに有機基盤を使用する有機インターポーザー型のCoWoS-R、有機基盤の中にチップ間接接続用のシリコンインターポーザーを埋め込んだシリコンブリッジ型のCoWoS-Lがある。SoC(System on Chip)は異なる機能を持つ複数の集積回路を一つのチップ上に集約したもの。
(出所)会社資料、野村證券エクイティ・リサーチ部より野村證券投資情報部作成

ご参考: AIサーバー関連銘柄の一例

・ディスコ(6146)

生成AI市場の拡大で当社が世界シェア首位のダイサー・グラインダーの需要が拡大している。

・TOWA(6315)

半導体のモールディング(封止)装置で世界首位。HBM向けのフリップチップボンダー(注2)を受注した。

・アルバック(6728)

HBM向けのスパッタリング装置(注2)を受注した。

・アドバンテスト(6857)

集積回路の最終試験で使用されるテスター(注2)で世界トップクラスのシェアを有する。

・日本マイクロニクス(6871)

プローブカード(注2)世界大手。HBM向けにプローブカードを受注した。

・レーザーテック(6920)

HBM向けのウエハー厚さ検査装置を受注した。

・東京精密(7729)

CoWoS向けにダイサー・グラインダー、HBM向けにプローバ(注2)を受注した。

・東京エレクトロン(8035)

幅広い製造装置を手掛ける半導体製造装置大手。HBM向けにウエハーボンダー(注2)を受注した。

・アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(A0055/AMD US)

ファブレス業態のロジック大手。AI半導体の開発を進める。

・インテル(A0346/INTC US)

CPUで世界トップシェア。AI半導体の開発を進める。

・KLA(A0410/KLAC US)

半導体検査装置で世界トップシェアを有する。

・マイクロン・テクノロジー(A0453/MU US)

メモリー半導体大手。HBMの開発を進める。

・エヌビディア(A2369/NVDA US)

GPUで世界トップシェアを誇り、AI半導体で高い競争力を有する。

・TSMC ADR(A3961/TSM US)

ファウンドリー世界最大手。世界の半導体製造の5割超を占める。

・ブロードコム(A7118/AVGO US)

グーグルに設計・製造パートナーとして、AI半導体「TPU(注2)」を提供している。

・サムスン電子 GDR(E2388/SMSN LI)

メモリー半導体世界最大手メーカーでHBMの開発を進める。

(注1)全てを網羅しているわけではない。外国株式のコードは、野村コード/ブルームバーグコード。(注2)フリップチップボンダ―は各種半導体素子を基板上へ実装する装置。スパッタリング装置はごく薄い膜を対象物の表面に均一に作製する装置。テスターは半導体デバイスに電気信号などを与え、設計仕様通りに動作するかどうかを検査する装置。プローブカードは検査工程においてウエハー上に形成されたチップの電気的検査に用いられる。プローバは前工程で作られた半導体を検査する際に使用する装置。ウエハーボンダ―はウエハー同士をボンディングする装置。TPUはTensor Processing Unit。
(出所)各種資料より野村證券投資情報部作成

(野村證券投資情報部 大坂 隼矢)

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