富士電機(6504) 電気機器

2022.3期は営業最高益更新へ

 新型コロナ禍で厳しい事業環境だったが2021.3期の営業利益は前期比61億円増の486億円と当社計画の410億円を大幅に上回った。期末にかけパワエレシステムや産業向け半導体需要が回復したためである。

 22.3期営業利益は600億円と過去最高益を更新しよう。第1に、パワー半導体が車載向けに大幅伸長が予想される。当社予想は電動車生産台数が19年度比95%増に対して、当社の車載半導体売上高は同2.8倍と市場を上回る成長を見込んでいる。

 第2に、前期営業赤字の食品流通部門の黒字化を予想する。国内自販機市場は低迷が続くが、固定費削減効果と他社撤退に伴うシェア上昇で収益性が改善できよう。

カーボンニュートラルの流れは追い風

 環境問題の解決に向け各国政府はカーボンニュートラル(温室効果ガス排出が全体としてゼロ)を掲げている。環境・エネルギー分野中心の当社には追い風であろう。

 パワー半導体は既存顧客2社向けに新製品が採用され、当社は今期の車載向け売上比率を50%と2年前倒し計画達成を見込む。需要拡大に対し今期末に8インチの生産能力を前期比3割増と積極投資の方針。

 パワエレシステムでは、エネルギーの安定供給、最適化に貢献していく。データセンタ事業者向け無停電電源装置をはじめ多様化する顧客ニーズに電気設備からサービスまで丸ごと対応できる強みを活かして事業機会を取り込めよう。

(山崎 雅也)

大日本印刷(7912) その他製品

幅広い事業を行う多角化企業

 国内における印刷大手だが、食品向け包装材料や、エレクトロニクス製品、飲料など幅広く事業を展開している。

 情報コミュニケーション事業では、雑誌や書籍の印刷から流通・販売まで行う。顧客の広告宣伝活動などを丸ごと受託するビジネスも伸びている。微細加工技術を生かしたIC カードでは金融向けに強く、高い国内シェアを持っている。

 エレクトロニクス事業は、時代の要請と共に主力製品が入れ替わっている。TV やPC で用いられる反射防止フィルムで高い世界シェアを維持する一方で、液晶パネル用カラーフィルタは顧客の日系パネルメーカーが衰退したため事業を縮小してきた。

車載電池・有機ELの材料が成長分野

 リチウムイオン電池は電気自動車向けに今後大きな需要拡大が期待されるが、外装材には金属ケースやパウチ(軟包装)が用いられる。当社はパウチ型包装材で約7割の世界シェアを持つと推測される。包装材料の用途としては食品向けが多いが、そこで培った加工技術が他分野に展開されて強みを発揮している。パウチ事業は当社の業績拡大を牽引する製品となると見ている。

 有機EL ディスプレイの製造で用いられるメタルマスク(色材料蒸着時に用いる)でも高い世界シェアを持つ。スマートフォン市場では液晶にかわって有機EL のシェア上昇が続いており、当社のメタルマスクの売上も伸びると予想する。

(河野 孝臣)

三菱地所(8802) 不動産

強い「丸の内」のオフィス需要

 三井不動産と双璧をなす大手総合不動産会社。国内外の金融機関やプロフェッショナルファームが本社を構える丸の内・大手町・有楽町に30本以上の大型オフィスビルを保有し、2021年3月期末では保有する賃貸不動産に約4.3兆円の含み益を有する。

 新型コロナの感染が拡大後、在宅勤務が定着し、オフィス需要が減少するとの懸念があるが、丸の内には、本社など組織のコア・ハブとなる機能が集中しており、需要が強い状態が続いている。東京都心5区のビルの空室率が6%に迫る中、当社の丸の内のビル空室率は、3月末は2.50%と低位に留まっており、成約賃料は上昇基調を保っている。

不動産売却益を積み増し

 東京駅前で開発してきた「常盤橋タワー」が6月末に竣工予定で、22.3期から業績寄与を始める。その後、当社が東京都心で開発する大型物件の竣工は25年の内神田となる予定であるが、それまでは、オフィス、物流施設、賃貸住宅や海外不動産をファンドなどへ売却することで、増益を確保すると野村では予想する。

 会社は長期経営計画2030では、自己資本利益率10%、1株当たり利益200円の両立を目指しており、不動産市況に応じて自己株式の取得も行っていく方針である。不動産の含み益を考慮したNAV(ネット・アセット・バリュー)に対して、株価は割安感があり注目している。

(福島 大輔)

※野村週報2021年6月14日号「銘柄研究」より

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