日本:2023年10-12月期決算プレビュー

2023年10-12月期決算発表がはじまる

2024年1月下旬より、2023年10-12月期決算の発表が本格化します。QUICKによる事前の市場予想ではラッセル野村Large Cap(除く金融)は、前年同期比3.9%増収、同+15.3%営業増益が見込まれています。

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日本企業の業績は2022年度には、インフレ圧力の増大と、投入価格上昇分の価格転嫁の遅れなどにより、増収率の割に営業増益率は低位に留まってきました。

しかし、2023年度に入りインフレ圧力が徐々に逓減した結果、増収率は常識的な範囲に落ち着き、同時に価格転嫁も進展したことによりここ数四半期の営業増益率は比較的高い水準を維持しています。2023年10-12月期についても事前予想では同様の傾向が予想されています。

交易条件の改善が顕在化

日本企業の業績は一般的には、米ドル円レートを中心とした為替と、鉱工業生産によりほぼ方向性が決まります。

2023年度業績は、期初時点より円安米ドル高が進行していたことから円安による企業業績の底上げ期待が高まりました。ただ、実際には前年同期にあたる2022年度の時点ですでに円安米ドル高が進行していたことから、実際には2023年度業績に対する為替の貢献は殆どありませんでした。

また同じく、2023年度の業績を牽引すると期待された挽回生産の本格化による生産増も、自動車を中心とした一部の産業に留まりました。半導体関連を含む電気機器や、資本財分野などへの挽回生産の広がりは実現せず、むしろ企業業績を押し下げる要因となってしまっています。

その結果、業績を牽引しているのは、原材料価格や人件費などの高騰分を製品/サービス価格に転嫁することによる交易条件の改善とみられます。

エレクトロニクスが増益転換か?

2023年10-12月期業績は、前四半期に比べさらに多くの業種が全体の増益に寄与するとみられます。その中でも、2023年年初より需要低迷/在庫調整に苦しんできたエレクトロニクスで僅かではあるものの営業増益転換が見込まれている点には注目です。

エレクトロニクス産業に関連する、電子部品や電子材料などのセミマクロ統計では在庫調整の進展を示す指標がここ数ヶ月で顕著に目立つようになってきており、今回の決算発表により実際に増益転換が実現すれば、市場のセンチメントに大きな影響を与えそうです。

また、エレクトロニクス製品の在庫調整の目途がたってきたことにより、さらに需要の回復が遅れている(半導体製造装置やロボットなど)資本財の分野への波及にも期待感が高まります。

会社側見通しの再上方修正も

2023年10~11月の2023年度中間決算の発表時には、(期初からの通算で)6割弱の企業が自らの2023年度通期業績見通しを修正し、またその多くが上方修正でした。

第1四半期決算実績発表(2023年7~8月)の段階ですでに業績モメンタムは好転していましたが、2023年度の残存期間が長かったことから見通しの変更を見送っていた多くの企業が中間決算時に業績見通しの修正に踏み切りました。その結果、期初時点で前年度比減益でスタートした会社側の業績見通しは、2023年12月月初時点で増益に転換しました。

これから本格化する2023年10-12月期決算発表の際には、2023年度の残存期間がさらに短くなっていることから、例年通りであればさらに3社に1社が1~2月にかけて通期業績見通しを変更してくると見込まれます。

(野村證券投資情報部 伊藤 高志)

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