※執筆時点 日本時間21日(金)12:00

今週:生成AIへの期待は高く3指数揃って上昇

※6月13日(金)-6月20日(木)4営業日の騰落

景気減速懸念は強まる一方、生成AIの企業業績貢献への期待は根強く、引き続きS&P500とナスダック総合は上昇、NYダウは2週間ぶりに反発しました。

5月小売売上高は市場予想を下回る

2024年5月の小売売上高は前月比+0.1%にとどまり、市場予想(同+0.3%)を下回りました。品目別にみると、モノ(財)の品目だけでなく、同統計では唯一のサービスの品目である「飲食店」が同-0.4%と予想外に減少し、広範な品目にわたる消費の鈍化が示されました。株式市場では、景気減速による企業業績悪化への不安を、AIの業績への寄与やインフレ減速による年内利下げへの期待感がやや上回っている状況です。

アクセンチュア決算発表はITへの安心感に

米国時間20日(木)寄り前に、コンサルティング及びITサービスのアクセンチュア(ACN)が、2024年3-5月期決算を発表しました。売上高、調整後一株当たり利益(EPS)ともに市場予想平均を下回ったものの、会社が示した2024年8月期通期の売上高予想レンジの中間値が市場予想平均を上回りました。また、経営陣からは生成AI(人工知能)関連の受注が堅調とのコメントもありました。これを受け、20日にアクセンチュアの株価は前日比+7.29%となりました。売上高見通しが市場予想を上回ったことなどに、ポジティブに反応していると推察されます。

先週のアドビ(ADBE)オラクル(ORCL)の決算に続き、生成AI関連が利益につながっていることが示唆されました。波及効果がどの分野まで広がっているかに引き続き注目が集まります。

28日(金)PCEやFOMC主要メンバー発言に注目

6月FOMCでは利下げ開始時期の後ろ倒しが示唆されたものの、米景気減速を示す経済指標が続いていることから、市場参加者は、FRBによる利下げ開始時期を探っている状態です。目先では、FRB(米連邦準備理事会)がインフレ指標として注目しているコアPCE(食品・エネルギーを除く個人消費支出)デフレーター(28日)が注目されます。

野村では、コアPCEデフレーターが前月比+0.102%に低下し、2023年11月以来の低水準になると予想しています。6月分も同+0.20%を予想しており、4-6月期を通してインフレの減速傾向が示されると考えています。このため、野村ではFRBが9月に利下げを開始し12月に追加利下げを実施すると予想しています。

また、FOMC(米連邦公開市場委員会)主要メンバーの講演も予定されています。特に、議論を主導してきた24日(月)のウォラー理事講演や28日(金)のバーキン・リッチモンド連銀総裁講演が、ここ2ヶ月の消費者物価の減速をどのように捉え、今後どの程度のデータが蓄積されれば利下げへと傾くかが注目されます。

26日(水)マイクロン決算も見逃せない

生成AI関連の企業業績への波及を考えるうえで、26日(水)に予定されているマイクロン・テクノロジーの決算発表が注目されます。年初来で+69%とS&P500(同+14%)や、ナスダック総合(同+18%)を大きくアウトパフォームしています(6月20日時点)。生成AIは当初エヌビディア(NVDA)やアドバンスド・マイクロ・デバイセズ(AMD)のような演算を行うロジック半導体が注目されていましたが、AI処理を行うサーバーに必要なメモリー半導体や電子部品、電力制御装置など隣接業界に好影響が波及しており、当社にも注目が集まっています。

5月に行われたカンファレンスにおいて当社経営陣からは2024年3-5月期の状況や2024年8月期通期の見通しについて新しいコメントはありませんでした。2025年8月期通期に売上高が過去最高を更新するとの見通しを発表されたものの、これは市場予想に既に反映されています。今回の決算発表では、2025年8月期の設備投資計画や、4月に発生した台湾地震の影響なども注目されます。

そのほか、小口貨物のフェデックス(25日、FDX)の決算では産業景気の動向を、カーニバル(25日、CCL)ナイキ(27日、NKE)では、個人消費の動向を確認したいと思います。

27日(木)の大統領討論会も話題か

27日(木)に、バイデン大統領とトランプ前大統領の両候補者が討論会を行います(日本時間28日(金)10:00)。米メディアCNNがホストし、発言を行う候補者以外はマイクがミュートとされています。両者は互いに候補者自身や候補者の親族の犯罪について批判を行うと見込まれますが、現状ではこれらに関する報道を受けても世論調査において両者の接戦状況に変化はありません。新たな論点が議論されるか、討論会後の支持率に変化があるかに注目が集まります。

(編集:野村證券投資情報部 小野崎 通昭)

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