※執筆時点 日本時間9日(金)12:00

今週:週初に急落したが持ち直し

※8月2日(金)-8月8日(木)4営業日の騰落

米国株は下落後に回復

今週の株式市場では、日経平均株価の急落が世界的な話題となりました。一方で、米国株も週前半に大幅下落しました。背景には2つの理由があると考えられます。

背景①米リセッション懸念 サーム・ルール抵触

米国株式市場の下落要因としてまず挙げられるのは、米国のリセッション(景気後退)への懸念です。米労働省が2日(金)に発表した米雇用統計が市場予想よりも弱く、特に失業率が4.3%と前月の4.1%から上昇し、2021年10月以来の高さとなりました。その結果、「サーム・ルール」(直近の3ヶ月平均失業率が過去12ヶ月間の最低水準を0.5%ポイント以上上回ると景気後退局面に入るという経験則)が満たされました。景気後退に陥らずインフレを抑える「ソフトランディング」がメインシナリオとなっていた米国株式市場で「ハードランディング」への警戒が強まり株価は下落しました。

背景②円高の急速な進行

さらに今回特徴的だったのは、通常は米国株式市場には影響を及ぼさない急激な「円高ドル安」の動きが影響したことです。一時160円を超えていたドル円相場が、8月5日には一時141円台まで円高が進行しました。ドル円は2022年の利上げ開始以降、米金利と強く連動して上がってきました。先週31日(水)には、日本銀行が政策金利の0.25%への引き上げを決定し、同日にFRBがFOMC(米連邦公開市場委員会)で政策金利の据え置きを決定しました。日米金利差の縮小観測が強まることで生じた円高が円キャリー取引(低金利の円を調達して高金利のドルや上昇期待の高い米国株などで運用する取引)の巻き戻しを喚起し、円高と米国株の下落を更に助長する形となり、世界的なリスクオフに繋がりました。

小康状態となっている理由

週後半に米国株式市場は一旦落ち着きを取り戻しました。日銀の内田副総裁が「金融市場が不安定な状態で利上げは行わない」と発言したことなどで、円高圧力が後退するともに円キャリー取引の巻き戻し懸念が緩和されたものと見られます。8日(木)時点ではドル円市場は1ドル=147円台まで回復しました。

また、米国株主要3指数は前週末終値と近い水準まで戻しています。5日(月)に発表された7月のISMサービス業景況感指数は51.4(前月の48.8)と持ち直したうえ、8日(木)発表の週間新規失業保険件数が市場予想を下回ったことから、7月雇用統計が示したほどには米国の労働市場は悪化していないとの見方に繋がり、市場には安心感が広がっています。

来週:経済の強さを測る1週間

来週は、経済指標などのマクロと、決算発表などのミクロ、両面で経済の強さを測る1週間となりそうです。

来週の注目①経済の強さをみる指標

引き続き米国株下落の“震源”となった、米国のリセッション(景気後退)入りの警戒感が正当化されるかに注目が集まります。経済指標では、従来は7月CPI消費者物価指数(14日(水)発表)などインフレ統計が注目を集めましたが、今週は7月小売売上高(15日(木))など実際の経済活動を示すハードデータへの関心が高いと思われます。小売売上高では、業種別の売上動向をチェックし、米国個人消費の状況を把握していきたいと考えます。

来週の注目②経済の強さを見る決算発表

米国経済を考える上で、GDPの7割を占める消費の動向を確認できる大手小売企業の2024年5-7月期決算発表に、いつも以上に注目が集まりそうです。13日(火)にはホーム・デポ、15日(木)のウォルマートに注目が集まります。高まる局面といえそうです。13日(火)にはホーム・デポ、15日(木)のウォルマートに注目が集まります。

来週の注目③半導体株には徐々に注目度が高まる

また、15日(木)には、半導体製造装置大手のアプライド・マテリアルズの5-7月期決算が発表されます。今週の日本の企業決算でも東京エレクトロンやKOKUSAI ELECTRICなど半導体製造装置大手がこれまで軟調だったメモリー向けの好調を示唆しました。

少し先となりますが、28日(水)にはエヌビディアの決算発表も控えており、市場全体が落ち着けば業種や個別銘柄へも関心が戻ってくると推察されます。

(編集:野村證券投資情報部 小野崎 通昭)

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