会社予想はいったいいつになったら修正されるのか?

4-6月期決算シーズン始まる 

 いよいよ、7月下旬より2021年度第1四半期(4-6月期)の決算発表が本格化します。第1四半期は、前年同期が新型コロナ感染拡大第一波の渦中で前年同期比6割前後の大幅減益だったことからの反動で極めて大きな増益率となることはほぼ確実です。従って市場の関心は、4-6月期の増益率そのものよりも、それを受けて株価への影響度の大きい会社側予想の上方修正にあるようです。

 実際足元では、会社側の予想経常増益率は前年同期比+13.7%に対して、野村證券の予想は同+20.7となっており、(仮に野村予想が正しかったとして)そのギャップがどのように埋められていくのかは興味をかきたてられるところです。

第1四半期での会社予想変更は少数

 左図にあるとおり、会社予想は期初予想に対して上方修正であれ、下方修正であれ、例年8月までの所謂第1四半期の決算シーズンには、ほとんど修正が行われていないことがわかります。年度で4つある四半期のうち、まだ1/4しか経過していない段階で、通期業績予想を変更してくる企業は極めて少数です。修正件数が増えてくるのは、中間期以降という傾向は景況感にかかわらずほぼ同じです。

 唯一2020年度は第1四半期の決算シーズンから修正社数が増えていますが、これは新型コロナの影響が不透明で、期初時点で予想を公表していなかった企業が、初めて予想を明らかにした、という特殊な理由によるものです。

 今年は、昨年第1四半期よりも、相対的に事業環境の不透明感は低下しているので、例年並みの修正件数に戻ると見るのが自然です。株価インパクトの大きい、会社側予想の上方修正に対する期待感は高いものの、今回の決算での会社側のアクションは(社数の上では)限定的、と考えておいた方がよいでしょう。

製造業の会社予想は早めに動く傾向

 そうした中でも、会社側の業績修正が早期に出やすい/出にくい業態について考えてみましょう。左図にあるとおり、製造業と非製造業を比較すると、製造業の方が期の早い段階から業績修正をおこなう企業が増加していることがわかります。

 これは、我が国においては製造業は非製造業に比べて外需により景況感が左右されることが多く、しかもその景況感を示すマクロ/セミマクロ指標も豊富に存在していることが背景にあると考えられます。こうした多くの状況証拠の存在から企業側も機動的に予想を変更しているものと考えられます。

 対して、非製造業では外部から企業内部の景況感をうかがうマクロ/セミマクロ指標が乏しいうえに、(期中で)業績未達であっても企業努力で挽回しよう、といった企業ビヘイビアが存在することから、期中での機動的な会社側の業績予想変更は相対的に少数にとどまります。

期待される素材、自動車の上方修正 

 そうした、製造業/非製造業の会社予想変更パターンを念頭において、最後に今回の決算シーズンで、会社側の業績予想の修正が起きやすい業種を確認しておきましょう。

 左表にあるとおり、ラッセル野村Large Cap製造業の会社予想と野村予想の乖離は11.8%ptとなっており、非製造業(除く金融)の0.3%ptに比べて極めて大きくなっています。また、昨今のインフレ懸念が台頭するほどの海外経済の好調さを勘案すると、製造業の上方修正余地はかなり大きいと思われます。

 さらに、製造業の中でも数量・価格の両面から追い風が吹く化学や鉄鋼・非鉄といった素材セクターの上方修正余地は大きいとみられます。次いで、需要が想定以上に強い自動車も、(今決算シーズンに行われるかは議論の余地がありますが)今後の上方修正余地の大きい業種、ということができるでしょう。

(伊藤 高志)

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