目次
・株価の基本はファンダメンタルズ
・トランプ政権による関税政策への懸念が強まる
・米国はテクノロジー分野を中心に企業業績の拡大が続く
・ドイツでは拡張的な財政出動への機運が高まる
・日本企業の業績拡大は続く
株価の基本はファンダメンタルズ

米国トランプ政権による矢継ぎ早な関税政策の発表を受け、日米の株式市場は神経質な動きとなっています。今後も、関税を巡るトランプ大統領の発言によって、株式市場のボラティリティー(変動率)が高まる局面があるとみられます。しかし、米国と日本では2025年も経済成長が続き、企業業績も堅調とみます。我々の基本観は、株式市場は最終的に、実体経済や企業業績などのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に沿って推移するとみています。
トランプ政権による関税政策への懸念が強まる

米国トランプ政権は、有利な条件を引き出す交渉材料として、様々な国・地域や品目に対する関税政策を実施しています。一方、関税を課せられた国・地域も、中国、カナダ、EUのように、報復関税を実施する国や、メキシコのように報復を抑制する国もあります。米国経済は雇用を中心に堅調ですが、関税や移民制限などもあり、実際のインフレやインフレ期待が下がりにくくなっています。インフレが順調に減速する道筋に不透明さが生じていることから、FRBは2025年入り後に、利下げを一時停止しました。一方、3月18-19日のFOMCでは、FRBが保有する国債の償還によるバランスシートの縮小ペースを減速させ、需給面からの金利上昇圧力を軽減する措置を取りました。
米国はテクノロジー分野を中心に企業業績の拡大が続く

米国企業業績は、2024年10-12月期の決算発表が進み、関税政策への不透明さや金利上昇で悪影響を受けやすい業種では下方修正が顕著です。一方、テクノロジー分野や金融は堅調で、AIインフラを中心に投資の急拡大が見込まれており、関連ビジネスの成長も期待されます。米国産業のけん引役である先端テクノロジー分野を中心に、企業業績の拡大が続くでしょう。
ドイツでは拡張的な財政出動への機運が高まる

長らく緊縮財政を維持してきたドイツでは、拡張的な財政出動への機運が高まっており、DAX指数は堅調で、ユーロ圏の長期金利も上昇しています。ただし、実際の財政出動には時間を要するため、極端な金利上昇にはならないとみます。中国で開催された全人代では、内需拡大を最重要視し、財政出動を拡大して消費を喚起する意向が示されました。財政出動の拡大は短期的な景気浮上のきっかけとなりますが、供給過剰によるデフレには注意が必要です。
日本企業の業績拡大は続く

日本にとって、米国の関税政策はリスクです。復調が見込まれる生産でも、関税政策によるサプライチェーンの混乱には注意が必要です。賃上げは、経済の好循環の起点となります。2025年の春闘は、第1回回答時点で5.46%と1991年以来の高い伸び率となっており、国内消費を下支えするとみられます。一方、インフレは日銀の物価目標を上回る推移が続き、追加利上げの機運が高まっています。長期金利にも上昇圧力が強まっており、円安・米ドル高の修正が進んでいます。ただし、企業業績を大きく損なうような円高ではありません。主要企業の業績は連続増益が続くとみられ、生産活動の正常化や在庫調整の進展が、業績拡大に寄与するとみられます。歴史的な自社株買いも、株価の下支え要因です。野村證券は、2025年末の日経平均株価を42,000円と予想しています。
投資戦略については、トランプ政権の政策決定過程では、経済や株式市場に悪影響が及ぶとみられます。インフレ圧力の強まりによる金利上昇には注意が必要ですが、日米ともに経済や企業業績の拡大基調は続くとみます。株価変動が大きくなる局面があったとしても、最終的に株価は企業業績の拡大に沿った推移になるとみます。
(野村證券投資情報部 小髙 貴久)
※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 4月号」(発行日:2025年3月24日)「投資戦略の概要」より
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