
(注)画像はイメージです。
海外市場の振り返り
9日の米国市場では、週末に米中貿易協議を控えて様子見ムードが漂う展開となりました。米国株式市場では主要3指数ともに方向感の定まらない展開となり、ほぼ横ばいで取引を終えました。米国債も小動きとなった一方、為替市場では米ドルがカナダドルを除くG10通貨に対して下落しました。対円でも一時下落幅が1円を上回り、145円を割り込みました。
相場の注目点
スイスで2日間にわたって行われた米中貿易協議に関しては、ベッセント財務長官が「著しい進展」があったと述べたものの、具体的な内容は明らかになっていません。市場では短時間での合意成立には慎重な見方が優勢だと見受けられることから、文字通り「著しい進展」が確認できればリスクセンチメント改善に寄与することが期待されます。同長官は詳細は12日に説明するとしています。週末には複数のFRB高官の講演が行われましたが、総じて先行きの不確実性が高い中で、利下げを急ぐ必要はないとの見解が示されました。パウエル議長も5月FOMC後の記者会見で同様の姿勢を示したことから、FRB内では「予防的利下げ」への機運は高まっていないようです。市場の利下げ期待も25年中は2.5回程度まで後退しています。
今週の米国では、実際の経済活動を補足した4月分のハードデータが相次いで発表されます。今後の米国景気や金融政策判断を予想する上では、13日(火)発表の4月消費者物価指数、15日(木)4月小売売上高、鉱工業生産統計が注目されます。トランプ関税の影響は、既に駆け込み輸入として確認できますが、今後、関税の価格転嫁が進めば消費者物価上昇を通じて消費に波及すると考えられます。また、原材料や部品への関税は、米国の生産動向に波及する可能性があります。小売りや生産が下振れする場合、市場の利下げ観測が高まる展開が予想されます。
(野村證券 投資情報部 尾畑 秀一)


(注)データは日本時間2025年5月12日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。