金融市場で原油価格上昇への警戒感が広がっています。代表的な指標であるWTI原油先物価格(NYMEX、期近物)(以下、文中では原油価格と表記)は、10月に入り約7年ぶりに1バレル=80ドルを突破しました。市場参加者の間では、インフレ加速と景気悪化が同時進行する負のスパイラル、スタグフレーションを意識する声も出始めました。

 原油価格の上昇は一体どこまで続くのでしょうか? 原油価格は需要と供給のバランスだけでなく、産油国の政治動向や地政学的なリスクに対する不透明感の有無に加え、投機的な売買などにも影響を受けやすく、非常に予測が難しい一面があります。以前にも当コラムで指摘しましたが、そういう意味では、チャート面から見た分析の方がシンプルに原油価格の今後の展望を見通すことができるかもしれません。

 さて、改めてチャート面から俯瞰してみましょう。

 原油価格は今年5月の2008年7月以降の長期下降トレンドライン(上値抵抗線)の突破に続き、今年10月には2018年10月に付けた戻り高値(76.41ドル)の水準も明確に上抜けました。このことは、名実ともに2008年7月以降の10年以上にわたる下降トレンドが終了し、長期トレンドが上向きに転換した確度が高まったことを示唆しています。いよいよ1バレル=100ドル大台超えに現実味が出てきたと言えるでしょう。

 今後の展望について、日柄面からも検討してみましょう。2008年12月以降と、2016年2月以降の過去2回の上昇局面では、底値から一旦押しを入れてピークを付けるまでの上昇期間(両端数え)は、それぞれ29ヶ月、33ヶ月でした。今回の上昇期間は、昨年4月安値から足元までで20ヶ月です。過去のパターンに倣えば、原油価格はあと1年程度は上昇しやすい時間帯が続く可能性が高いことを示唆しています。

 チャート上では、次の上値メドとして、2011~2014年の保ち合い相場の上限となった1バレル=110ドル前後の水準まで視野に入ってきている状況です。来年は恐らくこの水準での攻防が予想されます。原油価格上昇自体は、価格転嫁などを通じて国内企業全体で見た業績に与える影響はほぼフラット、というのが通説ですが、株式市場にとっては先行きボラティリティ拡大につながる悩ましい問題となりそうです。

 テクニカル分析は過去の株価等の動きを表現したものであり、将来の動きを保証するものではありません。また、記載されている内容は、一般的に認識されている見方について記したものですが、チャートの見方には解釈の違いもあります。

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