Eコマースやクラウド事業を行う米アマゾン・ドットコムが発表した2022年1-3月期決算では、オンラインストア部門(米国外含む)の売上高が前年同期比で3%減少しました。下左図に示したように、同部門の売上高は、コロナ禍によるオンライン販売の増加により、2020年4-6月期は前年同期比で5割近い増加率となりましたが、経済活動が正常化に向かったことで増加率は減速から低下に転じました。売上高は急増した後高止まりしているといえますが、インフレを考慮すると数量の減少は発表値の3%を超えていると推計されます。同社は決算説明会で、「コロナ禍の24ヶ月で物流ネットワークの規模を倍にする必要があったが、現在は施設や人員の増強を求めておらず、生産性とコスト効率の改善に取り組んでいる」、とコメントしたことで、同社のオンライン販売の成長に向けた投資が一旦はピークアウトしたことが明白になりました。

 米国の2022年1-3月期実質GDP成長率(速報値)は、季節調整後の前期比年率で-1.4%でした。寄与度の内訳は、個人消費が+1.8%、民間投資が+0.4%、純輸出が-3.2%、政府支出が-0.5%でした。最も影響の大きかった純輸出は、輸入の増加が2.53%のマイナス寄与となったことが影響しており、需要の堅調さを反映しているといえます。GDPの約7割を占める個人消費の内訳では、財消費の寄与が-0.03%、サービス消費の寄与が+1.86%でした。下右図のように、コロナ禍からの消費回復をけん引した財消費が高水準横ばいで推移する一方、サービス消費はやや遅れてようやくコロナ禍前の2019年10-12月期の水準を回復しましたが、回復は継続しています。

 また、4月の米消費者物価指数においても、航空運賃が前月比で18.6%しました。航空運賃価格は2月以降上昇ペースの加速が顕著です。

 2022年1-3月期米国企業決算では、決済サービスを手掛けるビザは、インフレやサプライチェーン問題、ウクライナ紛争は消費の数量に影響しておらず、堅調な海外旅行の回復などにけん引された継続的な成長を見込んでいる、と事業の好調をコメントしました。また、ウォルト・ディズニーはパーク事業の堅調を報告する一方、動画配信のネットフリックスが加入者の減少を、アルファベットが欧州を中心にユーチューブ広告収入の軟調をコメントしました。

 経済活動正常化で日本でもゴールデンウイークに人出が増えたことが報道されました。米国では一足早く個人消費の内容が、「リアル」や「Live」のサービスへシフトしたことが鮮明です。投資においてもトレンドの変化を考慮する必要があると考えられます。

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