2022年6月6日、米バイデン政権は実質的に中国の太陽光パネルメーカーへの関税を最長2年間免除することを表明しました(注)。また同時に、米国内のクリーンエネルギーの拡大を支援する施策を発表し、エネルギー価格の上昇と、エネルギー安全保障へ対応することを示しました。これを受け、米国のESG指数やクリーンエネルギー指数が上昇しました。

 2022年5月22~26日、ダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)が「歴史的転換点における、政策とビジネス戦略のゆくえ」を議題に開催されました。投資の観点では、2020年の議題であった「ステークホルダー資本主義」の進捗を測定するために策定された「ESG指標と開示、報告」についての進捗が議論されました。大手企業のマネジメントからは、「ESGはS(社会)が遅れている」(マスターカード)、「Sにも科学に基づくターゲットアプローチが必要」(マンパワー・グループ)、「ITプライバシーやサイバーセキュリティなどが重要」(マイクロソフト)のコメントがありました。2022年4月末にS&P500 ESG指数からテスラが除外され、ESGは本業が「E」に直結しているだけでは不十分との認識が広がったこととも整合的です。

 また、「開示」については、「可視化されたものは実行される」(KPMG)、「ESGの影響を金銭的に計算しビジネスの意思決定に組み入れることができる」(SAP)など、ISSB (国際サステナビリティ基準審議会)や、SEC(米国証券取引委員会)が進めている企業への気候関連情報の開示義務の導入に賛同するコメントが聞かれました。現在、統一した開示基準がないためESG指数が単なる大型株指数となっている状況から、ESGの取り組みが具体的に評価され、企業間の優勝劣敗が鮮明になることが予想されます。

 ESGファンド運用額は2.7兆ドルに達しさらに増加傾向にあることがダボス会議ではコメントされました。ステークホルダーである受給者にとって、年金の投資年限は長ければ40年あるいは期限なしと考えられ、投資先企業や社会の存続が重要です。約56兆ドル(OECD調査、2020年)ある世界の年金資産の活用方法や投資先が見直される局面といえそうです。

(注)具体的には、中国の太陽光パネルメーカーが関税を回避するため東南アジア4ヶ国を中継して米国へ輸出している問題を米商務省が調査している件について、この4ヶ国への輸入関税を最長2年間課さないよう米商務省に指示しました。

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