海外市場の動向

米国では要人のインフレ関連発言相次ぐ

 17日の米国株式市場で、NYダウは前日比-38.29ドル(-0.12%)の29,888.78ドルと続落し、年初来安値を更新しました。一方、S&P500指数は同+0.22%、ナスダック総合指数は同+1.43%と反発しています。この日は、市場予想を下回る経済指標やFRBによる利上げ加速への懸念が押し下げ要因となった一方、急速な調整からの自律反発の動きに加え、原油価格の下落などが株価を下支えしました。

 この日は、IEA(国際エネルギー機関)が2022年後半の原油市場は供給過剰になるとの予想を発表したほか、米国エネルギー省のグランホルム長官が来週大手石油精製企業とガソリン精製増加に向けた協議を行う予定であると報じられたことなどを受け、原油価格(WTI原油先物)が急速に下落しました。

 また米国時間18日、FRBのウォラー理事は、7月のFOMCで0.75%ポイントの利上げを支持する姿勢を示しました。同19日、クリーブラント連銀のメスター総裁は米国経済がリセッションに陥るリスクが高まりつつあると指摘しています。また、インフレ率がFRBの目標である2%に戻るには数年を要するとの見解を示しました。

 一方、イエレン米財務長官はABCの番組で同日、物価は「容認し難いほど高い」とした上で、この状態は今年一杯続くと予想するものの、家計の力強さによりリセッションは回避するとの見解を示しています。

 同19日、ディース米国家経済会議(NEC)委員長はCBSの番組で、バイデン政権がインフレとの闘いで取り組む新たな経済対策について、数週間以内に議会が可決することを望んでいると発言しました。現在の物価は容認できないほど高いと指摘し、「だからこそ大統領はこれを経済の最重要課題とし、物価を下げるためにできる限りのことをする必要があると言っているのだ」としました。また、40年ぶりの高インフレに家計が対処するのを助ける方法として、処方薬価格の引き下げ、エネルギーを巡る税制優遇措置、「長年の懸案である税制改革」を挙げています。

仏国民議会選挙は与党連合が大幅過半数割れの見通し

 現地時間19日投開票のフランス国民議会選挙の決選投票で、マクロン大統領を支える中道の与党連合が過半数議席を失う見通しとなりました。極右連合への支持が予想外に伸びた模様です。

日経平均先物CME終値は、前営業日終値とほぼ横ばい

 日経平均先物CME終値は25,930円となりました。日経平均株価の6~8月の配当落ち約48円を考慮した場合、実質的なCME終値は25,978円と試算され、日経平均株価の前営業日終値(25,963円)とほぼ同水準です。

 為替市場では再びドル円が1ドル=135円台を付けるなど、円安ドル高が進行しており、自動車などの輸出関連株にとっては追い風となりそうです。一方、原油価格が大きく下落していることから、エネルギー関連株は軟調なスタートとなりそうです。

 本日の米国市場は、ジューンティーンス(奴隷解放記念日)の振替休日のため休場です。

日銀の緩和政策維持は、日本株の下支え要因に

 17日の日限政策決定会合では、金融観緩和姿勢が維持されています。声明文では「金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある」との文言が追加され、円安警戒を強める政府に歩調を合わせた変更が行われていますが、フォワードガイダンスの利下げバイアスや景気判断は維持され、ハト派色は弱まっていません。黒田総裁は、急速な円安は経済にマイナスとの姿勢を見せ、これまでよりは慎重な姿勢を示しましたが、早期の政策修正につながる発言は見られていません。週末には岸田首相も中小企業の金利負担への影響も考慮する必要があり、日銀の緩和政策は現状においては変えるべきではないと決定を支持する姿勢を示しています。金融緩和が維持されたことは、日本株にとって下支え要因となりそうです。

今週の注目点

 米国では、パウエルFRB(米連邦準備理事会)議長による半期に一度の議会証言が22日(水)に上院、23日(木)に下院にて予定されています。インフレ高進への対応が求められる中、同議長による先行きの金融政策運営についての見解が注目されます。

 経済指標としては、23日(木)に発表される日本、米国、ユーロ圏の6月マークイットPMI速報値は、各国・地域の景況感の方向性や格差を見る上で重要です。世界的な物価高が続く中、欧米の金融引き締め強化による景気への影響が懸念されています。

 

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