訪日外国人増加に向けた取組みが徐々に始まる

日本政府は水際対策を一段と緩和

 岸田政権は、2021年10月の政権発足直後にオミクロン株への懸念から外国人の新規入国を原則禁止しました。しかし、足元では社会的な受け入れ体制を見極めつつ、徐々に入国制限を緩和しています。

 2022年9月7日からは、①1日当たりの入国者数の上限を2万人から5万人に引き上げること、 ②観光目的の入国において添乗員を伴わないパッケージツアーを認めること、③有効なワクチン接種証明がある場合には訪日前の感染検査を免除すること、など更なる緩和が実施されました。

 岸田首相はG7(主要7ヶ国)並みに円滑な入国が可能となるよう水際対策を緩和する姿勢をみせており、今後1日当たり入国者数の上限撤廃や個人旅行での入国受け入れなどが早期に進むと考えられます。

国際観光客数は欧米中心に回復

 2021年の地域別観光客数は、欧米中心に回復がみられましたが、より厳しい渡航措置をとったアジア太平洋地域は欧米に大きく後れを取っています。

 2022年から欧米諸国では、国際的な人の往来再開に向けた取組みを本格化しおり、英国は2022年3月に水際対策を一切なくし、ドイツは6月に入国規制を全面撤廃しました。米国でも、6月に陰性証明の提示を不要としています。

 新型コロナの感染収束が完全には実現しないとしても、感染を警戒しつつも経済活動再開との両立を目指す国が増加し、国境を越えた人流は徐々に自由度が高まっていくとみられます。

アジア諸国からのインバウンド回復が重要

 コロナ禍前(2019年)のインバウンド(訪日外国人客)の内訳は、アジアからの観光客が全体の75%を占めていました。日本のインバウンド需要が本格回復するためには、アジア地域の水際対策が緩和されることも重要な条件となるでしょう。

旅行先としての日本は人気が高く、潜在市場は大きい

 2012~2019年の7年間で訪日外国人客数は3.8倍に拡大しました。同期間の米国・フランスの1.2倍・1.1倍と比較し、急増しました。

 2021年10月に日本政策投資銀行と日本交通公社が独自に行った「アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査」では、「観光旅行したい国・地域」として、日本が首位となっています。また、世界経済フォーラムによる観光競争力指数では、日本が世界1位(2021年)に選ばれるなど、コロナ禍を経て観光地として日本の魅力が再度脚光を浴びています。

 足元、為替市場では2019年時点と比較して、各通貨に対して円安が進んでいることも、インバウンド市場回復の追い風になるとみられます。

訪日外国人がもたらす経済効果は大きい

 コロナ禍前、2019年の傾向をみると、訪日外国人全体の1人当たり旅行支出の構成比では買物代が最も高く、次いで宿泊費、飲食費と続いています。旅行支出で最も高い買物では、食料品や化粧品などの人気が高く、安心・安全という日本ブランドが評価されていたと考えられます。

 国籍別に確認すると、アジアからの訪日客は買物中心、欧米は長期滞在型で宿泊や飲食に多く支出しており、それぞれ小売業や宿泊業、外食業などの関連産業に恩恵がありました。

 訪日外国人の増加がもたらす経済効果は大きく、国内定住日本人1人当たりの年間消費額は、訪日外国人1人当たり旅行支出額(15.9万円)の7.9人分と同水準となります。

 2019年の訪日外国人客数3,000万人を更新するのは当分先になりそうですが、受け入れ再開が進む中で、日本でのインバウンド消費の拡大が期待されます。

(投資情報部 澤田 麻希)

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