12月小売売上高から見た米国の個人消費動向

12月の前月比は-1.1%

 1月18日に米商務省が、2022年12月の小売売上高を発表しました。小売売上高(合計)は、前月比-1.1%となり、ロイター調査による市場予想の同-0.8%、ブルームバーグ調査の同-0.9%を下回りました。なお、11月分の小売売上(合計)については、前月発表された速報値の前月比-0.6%から同-1.0%に下方修正されました。

 ほとんどの業種で前月比減少となっています。ガソリン価格の下落でガソリンスタンドが前月比-4.6%となっているほか、百貨店が同-6.6%、家具が同-2.5%となっていることが目立ちます。また、インターネット小売を含む無店舗販売が同-1.1%となり、11月分の発表時点にはプラスだった飲食店が同-0.9%となっています。なお、飲食店の11月分は今回、前月比-0.1%に下方修正されました。

 GDP(国内総生産)の算出に用いられる、コントロールグループと呼ばれる自動車や建材、ガソリンスタンド、食品を除いたコア小売売上高は、12月は前月比-0.7%と、11月改定値の同-0.2%からマイナス幅が拡大しました。なお11月分は、発表時点の前月比+0.7%から同-0.2%に下方修正されました。

12月の前年同月比は+6.0%

 12月の小売売上高(合計)の前年同月比は+6.0%と、11月改定値の同+6.0%と同水準となりました。なお、前月の発表時点では11月小売売上高(合計)は同+6.5%でしたが、今回、同+6.0%に下方修正されました。

 業種別にみると、電気製品が同-5.6%、百貨店が同-0.6%など減少したほか、家具が同+0.3%と小幅な伸び率にとどまっています。これらの業種は11月も前年同月比で減少していました。比較的値が張る商品を扱っており、インフレにより財(モノ)に対する需要が影響を受けている可能性が考えられます。

前年同月比は増加が続くが

 前年同月比の推移をみると、小売売上高(合計)は、12月は+6.0%と、引き続き一桁台半ばの伸びが続いています。ただし、徐々に伸び率が鈍化しています。

 無店舗販売は、11月改定値は前年同月比+9.7%と一桁台に伸び率が鈍化していましたが、12月は同+13.7%となりました。

ミシガン大学の消費者マインド調査

 1月13日に発表された、ミシガン大学消費者マインド調査の1月速報値は64.6と、12月確報値の59.7から上昇しました。

 併せて発表された消費者の期待インフレ率調査の速報値については、5年先は12月23日に発表された12月確報値の2.9%から3.0%に小幅に上昇しましたが、1年先については4.4%から4.0%に低下しました。

昨年の年末商戦はNRF予想を下回る

 また、1月18日にはNRF(全米小売業協会)が、2022年の年末商戦期間(11・12月)における、小売売上高の結果を発表しました。

 小売売上高(自動車ディーラー、ガソリンスタンド、外食を除く)は前年同期比+5.3%となりました。NRFは2022年11月3日に同+6~+8%との見通しを発表していましたが、実績はこの予想レンジを下回りました。

 NRFでは、消費者が高止まりするインフレの影響を受けていることや、10月に多くの企業がセールを実施し、その時期に売上が前倒しされたことなどを要因として指摘しています。

今後の留意点

 12月小売売上高の実績は市場予想を下回り、11月実績についても全般的に下方修正されており、インフレなどから個人消費が影響を受けていることが窺えます。今後もその動向には注意したいと思います。

 なお、小売売上高統計は売上高についての統計です。企業が在庫処分のために大幅な値引き販売をしていた場合、売上高は増加しても、収益性が悪化している可能性が考えられます。今後、小売企業の決算が発表された際には、売上高に加え、収益性についても注意してみていきたいと考えます。

(投資情報部 村山 誠)

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