FRB(米連邦準備理事会)は1月31日~2月1日にFOMC(米連邦公開市場委員会)を開催し、大方の予想通り政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を0.25%ポイント引き上げて4.5-4.75%とすることを決定しました。利上げ幅は2022年12月の0.5%ポイントから更に圧縮されました。

 声明文では物価圧力がピークを迎えたことを認めつつも「継続的」な利上げが適切になるとし、パウエル議長も「2回程度の利上げを検討している」ことを明らかにしました。また、声明文では従来「将来的な引き上げペースを決めるに当たり」としてきた表現を、「将来的な引き上げの程度を決めるに当たり」と改め、利上げ局面が終盤戦にあることを示唆しました。

 FRBが22年12月のFOMC会合で示した政策金利見通し(中央値)では、ターミナルレート(政策金利の最終地点)は5.0-5.25%であり、この水準まで利上げした後、2023年中は据え置く意向です。最近のFRB高官による発言を見ても、年内中に利下げを実施すべきという意見は見受けられません。

 一方、FF金利先物を見ると、市場では政策金利は6月に4.9%程度でピークに達し、年末までに4.4%程度まで引き下げられると見ていることがわかります。野村證券でも、FRBは3月会合で0.25%ポイントの追加利上げを実施、政策金利を4.75-5.0%まで引き上げた後に据え置き姿勢に転じ、2023年9月会合以降、年内に予定されている3回の会合で政策金利を0.25%ポイントずつ引き下げ、23年末の政策金利は4.0-4.25%になると予想しています。

 年内利下げの有無を巡るFRBと、市場および野村見通しにおけるギャップの主因は、主にインフレ見通しに起因しているようです。例えば、野村では代表的なインフレ指標であるコア個人消費デフレーター(除く食品・エネルギー)は23年7-9月期に前年比+2.5%、同年10-12月期には同+1.8%まで低下するとの見通しに基づいて同年9月からの利下げ開始を予想しています。

 一方、FRBの見通しではインフレ率が同+2.5%に低下するのは2024年10-12月期の見通しです。すなわち、野村の見通しとは1年以上の時間差があります。その上で24年中に1.0%ポイントの利下げを予想していることを考慮すれば、2.0%台半ば程度へのインフレ低下が利下げ開始の要件となるとの考え方自体には大きな違いはないと見受けられます。

 FRBと市場の政策金利見通しのギャップの背景にインフレ見通しの乖離がある点に関しては、FOMC後の記者会見でパウエル議長も認めています。

 以上の点を踏まえると、今後の金融政策の行方を見極める上では、インフレ見通しがキーポイントとなると考えられます。米国に残されたインフレ圧力としては賃金上昇を背景としたサービス価格の上昇に加えて、家賃の上昇が挙げられます。野村ではいずれも早晩、速やかにピークアウトし、鈍化する可能性が高いと予想しています。

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