2022年10月に日本政府が水際対策の大幅な緩和を実施して以降、訪日外客数の増加が続いている。23年2月15日に日本政府観光局(JNTO)が公表した23年1月の訪日外客数は149万7,300人であった。水際対策緩和直前の9月の訪日外客数が20万6,641人だったことを考えると、水際対策緩和以降の訪日外客数回復ペースは速い。実際、23年1月の訪日外客数は19年同月比で56%まで回復している(19年は確定値)。

国・地域別に見ると、ベトナム(23年1月の19年同月比は146%)やシンガポール(同118%)、中東地域(同102%)、香港(同98%)、マレーシア(同86%)、米国(同85%)の回復が目立つ一方で、中国(同4%)は回復が遅れている。中国からの訪日外客数の回復は、日本政府が水際対策を敷いていることが背景だ。中国を除けば、23年1月の訪日外客数は19年同月比で76%まで回復している。

23年2月9日に開催された政府の交通政策審議会観光分科会(第45回)では、新たな観光立国推進基本計画の素案が示された。素案では、観光立国に関する25年目標として、訪日外客数を19年以上の水準まで回復させること、訪日外客の消費額単価を1人あたり20万円に増やすこと(19年の15.9万円から25%増)、1人あたり地方部宿泊数を1.5泊に増やすこと(19年の1.35泊から10%増、地方部とは東京都、大阪府、愛知県などの三大都市圏以外の地域)等が掲げられている。

特徴的なのは、インバウンドの「量」の目標は17年時の目標(20年に4,000万人)からトーンダウンさせたのに対し、消費額単価や地方部宿泊数などの「質」の視点が強調されたことであろう。人手不足の問題が深刻化していくと想定される中、インバウンドの25年目標達成には、宿泊施設などの企業側の受け入れ態勢にも目を配る必要がある。

(経済調査部 髙島 雄貴)

※野村週報 2023年2月27日号「経済データを読む」より

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