ネットキャッシュとは?

企業の手元流動性(現金・預金+有価証券)から有利子負債を差し引いた金額で、キャッシュリッチ(金余り)の度合いを示します。時価総額をネットキャッシュで割った「ネットキャッシュ倍率(倍)」が小さいほど、蓄えた現預金等が有効に活用されていない企業とされ、自社株買いや成長投資の余力が大きいと考えられます。また、M&Aなど企業買収の候補にもなりやすく、株式市場の関心が集まります。

金融やヘルスケアのほか、ハイテクも

時価総額200億米ドル以上、ネットキャッシュ20億米ドル以上の銘柄をスクリーニングし、ネットキャッシュの大きい順にならべました。(2022年12月23日終値ベース)

(注1)「ネットキャッシュ」=「現金・短期投資等」-「有利子負債」。(注2)「現金・短期投資等」と「有利子負債」は直近会社報告書の値。「現金・短期投資等」は、現金および現金同等物、短期有価証券の合計。(注3)預託証券を除く。
(出所)ブルームバーグより野村證券エクイティ・マーケティング部2022年12月27日作成

スクリーニングの結果をみると、金融やヘルスケアセクターが並ぶ一方で、ソフトウェアや半導体などの情報技術セクターも目立ちます。

金融やヘルスケアは、キャッシュフローが安定していることからネットキャッシュが増加しやすく、積極的な株主還元を実施しています。ただし、世界規模の大手銀行に関しては厳しい自己資本規制やFRB(米連邦準備理事会)によるストレステストもあり、業績によっては十分な株主還元策に取り組むことができなくなる可能性には注意が必要です。

ハイテクセクターの中でもソフトウェアは、パッケージによる販売(売り切り型)のモデルから、サブスクリプション(定期購買型)のモデルに転換してきたことで、キャッシュフローがより安定的なものとなり、ネットキャッシュも多く積み上がっています。これらの銘柄は、自社株買いに加え、新たなる成長領域への投資やM&Aの原資としてキャッシュ使う場合も多いと考えられます。足元では、ChatGPTを運営するオープンAIに対しマイクロソフトが200億ドルの出資を決定しました。GAFAM(GOOGLE社を傘下に持つアルファベット、アップル、Facebookを運営するメタ・プラットフォーム、アマゾン・ドットコム、マイクロソフト)はいずれもネットキャッシュからみてキャッシュリッチと言えます。

いずれの企業においても、潤沢なキャッシュがあるだけでは企業価値は向上せず、どのように活かすかで市場の評価は分かれます。ネットキャッシュととともに、各企業の成長戦略や株主還元の動向に注目しながらの選別投資が必要となるでしょう。

ご投資にあたっての注意点