結論:欧米の金融機関問題は一時的との前提の下、インフレ低下とともに景気と企業業績への信頼感は回復しよう

目次
・目先は金融機関の問題だが最大の注目はインフレ
・金融機関の破たんに当局は迅速に対応
・テクノロジー企業に注目
・ECBはインフレ抑制を重視
・中国景気再加速期待
・日本の景気下支え要因は豊富
・投資戦略

目先は金融機関の問題だが最大の注目はインフレ

欧米の一部金融機関が経営難に陥り、市場のボラティリティー(変動率)が拡大しています。当該国の政府当局は迅速に対応しており、問題に目途が付けば、インフレに目線が戻るでしょう。これまで、米国では発表される物価や経済指標が予想外に強い場合、利上げ加速への思惑から株価の下落が度々観察されました。金融市場の最大の注目点であるインフレの低下が確認され、企業業績の底打ちが視野に入れば、株価は復調するとみられます。

金融機関の破たんに当局は迅速に対応

主要国の景況感は、非製造業を中心に回復色が強まっています。エネルギー価格の低下が背景にありますが、米欧では雇用情勢のひっ迫が続き、サービス物価の上昇加速が続いています。米国では、コロナ禍がもたらした人口動態の変化(早期退職、感染による死亡、移民減少など)により、労働力不足は構造的でしばらく続く可能性があります。一方、これまでの利上げにより、金融セクターへのストレスが強まっており、貸出しの厳格化が進んでいます。顧客や運用先が特殊な金融機関の破たんなどが相次いでおり、政府当局が迅速な対応を行っています。

テクノロジー企業に注目

米国金融市場は、近い将来の利下げを予想するに至っています。短期的には銀行破綻の混乱が落ち着くまでは、金利のボラティリティーは高い状況が続くでしょう。企業や消費者の景況感の落ち込みには注意が必要ですが、金融システムのリスクに波及する兆候はみられません。企業業績は2023年1-3月期を底に復調に転じると予想されています。その場合、先行してリストラを行ったテクノロジー企業は、金利低下が追い風となり、株式市場が復調に転じる際の上昇余地は大きく、上昇銘柄の中心になるとみられます。

ECBはインフレ抑制を重視

欧州で大手金融機関クレディ・スイスの経営問題が浮上しており、スイス当局が流動性に関する対応を表明しました。他の欧州金融機関へのリスクの波及は、現時点で限定的です。3月もECBは利上げを実施しており、インフレ抑制の優先度は高いとみられます。

中国景気再加速期待

中国はゼロコロナ政策の終了による経済活動の再開が進んでおり、業績の下方修正も和らぎつつあります。習近平政権は異例の3期目に入り、経済の穏当な拡大を目指しています。

日本の景気下支え要因は豊富

日本経済は、訪日外国人の回復や挽回生産の加速が進む中で、機械受注は大底圏にあるとみられます。大手企業を中心に賃上げが進み、5兆円の予備費を使った物価高対策が検討されるなど、景気下支え要因は豊富にあります。日本銀行の植田新総裁は、金融緩和の継続を明言しています。一方、その緩和策による副作用への対応は検討されるとみられ、その状況によっては金利のボラティリティーが高まる可能性があり、注意が必要です。米ドル円相場は、欧米金融機関の問題に目途が付けば、ボラティリティーも低下し、米日金利差に沿った推移に回帰するとみます。日本企業の業績は、円安からの反転で下方修正が進みましたが、景気は底堅く、2023年度も増益は維持されるとみられます。バリュエーションで見た日本株の割高感は限定的で、野村證券は2023年末の日経平均株価の見通しを30,000円と予想します。

投資戦略

投資戦略については、一部の欧米金融機関の問題は一時的でシステミックリスクとはならないとの前提の下、インフレの減速とともに欧米の金融引き締めは和らぎ、景気と企業業績への信頼感が回復することで、主要国の株式市場は業績の復調に沿って上昇に転じるとみます。

(投資情報部 小髙 貴久)

※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 4月号」(発行日:2023年3月20日)「投資戦略の概要」より

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