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40分前

【6月の投資戦略】テクノロジー分野を軸に、株価が過剰調整した企業の再評価に期待

(注)画像はイメージです。 関税政策の影響を受けにくいテクノロジー分野が引き続き注目 米国トランプ政権の厳しい関税政策は、一時的な猶予や一部撤回が行われ、各国・地域との交渉を中心とする期間に入りました。我々は、厳しい関税政策は持続可能性に乏しく、譲歩や着地点を探る動きが進むとみてきました。現在、各国との交渉の他にも、一部の主要製品に対する関税の検討が続いています。当面、株式市場に不透明さは残るものの、今後は、関税の影響を受けにくいテクノロジー分野を中心に、企業業績の拡大や株式市場の信頼感の回復が進むとみます。主要国・地域の景気後退の可能性は、大きく低下したとみられます。 中東歴訪でAI関連ビジネスに大きな機会 米国トランプ政権の関税政策は、各国・地域との交渉局面に入り、英国や中国との通商合意が成立しました。しかし、全てが合意に至ったわけではなく、事実上、全ての国・地域に対する協議は継続中です。第一次トランプ政権下の2019年の日本との貿易交渉を振り返っても、貿易赤字が十分削減可能な合意を様々な国・地域と90日間でまとめることは困難とみられます。1985年のプラザ合意のような、米ドル安を目指す国際協調の可能性も低いでしょう。他方、トランプ政権は中東歴訪で様々なディール(取り引き)を行いましたが、特にAI関連の大規模なテクノロジー投資は、関連企業に大きなビジネス機会をもたらすとみられます。 テクノロジー関連企業の業績は堅調 米国経済は底堅く、関税政策のインフレや景気への影響を見極めるための時間的な余裕があることから、FRBは当面、政策金利の据え置きを続けるとみられます。2025年1-3月期決算は、大手テクノロジー企業を中心に上振れて着地しています。先行きは、関税の影響やエネルギー価格下落の影響を受けやすいセクターは、厳しい見通しとなっています。関税の影響を受けにくいテクノロジーサービス関連企業の業績は、堅調に推移するとみられます。 中国からのデフレ輸出懸念 ユーロ圏経済は、ドイツで新政権の誕生による緊縮財政からの転換が図られつつありますが、米国の関税政策の影響は不確かです。ECBの利下げ局面は、しばらく続くとみます。中国は米国と通商合意に至りましたが、8月12日を期限とする24%の上乗せ関税回避に向けた交渉が続きます。中国の過剰生産能力は解消されておらず、デフレの海外輸出が続く懸念があります。 日本企業業績予想の減益への下方修正は保守的な予想 日本に対してもトランプ政権の関税政策の影響が懸念されますが、現時点で生産や在庫に変調はみられません。賃上げ率は高いものの、食料品を中心にインフレ率が加速しており、実質賃金は低迷しています。日本銀行は、実質金利が大幅なマイナス圏にあることから、利上げ姿勢を維持していますが、関税政策を見極めるまでは金融政策の現状維持が続くとみられます。米ドル円相場は、政策や米日の金利の方向性の差から、米ドル高・円安に向かいにくくなっています。6月の東京都議会議員選挙や7月とみられる参議院選挙に向け、米国との関税交渉は加速が見込まれます。主要企業の業績は、関税の影響や為替前提の変更により、2025年度は減益予想に下方修正されましたが、保守的な予想とみます。歴史的な自社株買いが株価を下支えするとみられ、野村證券は2025年末の日経平均株価を39,500円と予想します。 投資戦略については、トランプ政権の政策判断により、国内外の株式市場のボラティリティー(変動率)が高まる局面はまだあるとみます。しかし、関税の影響を受けにくいテクノロジーやサービスなどの業種を基軸とする見方は変えず、実力以上に株価の調整が進んだ企業は、株式市場の安定化と共に再評価の余地も大きいとみます。 ※野村證券投資情報部「Nomura 21 Global 6月号」(発行日:2025年5月26日)「投資戦略の概要」より 野村證券投資情報部 シニア・ストラテジスト 小髙 貴久 1999年野村総合研究所入社、2004年に野村證券転籍。日本の経済・財政・金融動向、内外資本フローなどの経済・為替に関する調査を経て、2009年より投資情報部で各国経済や為替、金利などをオール・ラウンドに調査。現在は日本株に軸足を置いた分析を行う。2013年よりNomura21Global編集長を務める。 Nomura21Global参考銘柄について ご投資にあたっての注意点

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