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2023/10/17 08:26
【モーニングFINTOS!】政策金利据え置き期待で米国株上昇(10/17)
海外市場の振り返り 16日の米国株式市場は、主要3指数が揃って上昇となりました。シカゴ連銀グールズビー総裁が「インフレ低下は一時的現象でなく、トレンドであることは疑いようがない」と述べたと伝わるなど、足元でFRB高官が政策金利の据え置きを示唆する発言が増加しており、次回FOMCで政策金利を据え置くとの見方が相場の支えとなりました。また、前週に始まった決算発表において市場予想を上回る内容が多く、期待感から株式市場に買いが入りました。 相場の注目点 米国の金融政策や中東の地政学リスクが引き続き相場で材料視されると見ています。今週は、18日にフィラデルフィア連銀ハーカー総裁、19日にはパウエルFRB議長に加えて地区連銀総裁の講演が複数予定されており、注目を集めます。 中東情勢については、米国を中心に情勢悪化を食い止めるための外交が継続されており、過度な懸念は和らいでいますが、イスラエルによるガザ地区への地上侵攻のリスクは依然として高く、注意が必要です。もっとも、過去におけるハマスによるイスラエルへの攻撃とイスラエルのガザ地区への報復攻撃は、イスラエルの優勢で短期に終了し、他国の介入も無く、産油地帯や石油の輸送路から離れていることにより、金融市場への影響は限定的でした(野村證券吉本シニアエコノミスト)。 本日のイベント 米国では、9月小売売上高、9月鉱工業生産が発表されます。また、バンク・オブ・アメリカやゴールドマン・サックスなどの金融セクター、医薬品・医療機器のジョンソン・エンド・ジョンソンなどが決算発表を予定しています。 (投資情報部 坪川 一浩) (注)データは日本時間2023年10月17日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ※画像はイメージです。 FINTOS!編集部オリジナル記事 【今週の米国株】ハマス・イスラエル問題で株価は下落するか?ネットフリックスやテスラが決算発表 (10/16) 【野村の投資判断】日本株は「グロース株×内需株」の好環境に ご投資にあたっての注意点
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2023/10/16 20:00
【今週の米国株】ハマス・イスラエル問題で株価は下落するか?ネットフリックスやテスラが決算発表 (10/16)
先週:米長期金利の上昇一服が支えに 米長期金利(10年国債利回り)に、株価が左右される展開が続いています。10月6日(金)に4.8%台まで上昇していた米長期金利は、13日(金)には4.6%前後まで低下し、米国株主要3指数の下支えとなりました。FRB(米連邦準備理事会)高官が、相次ぎ「長期金利が上昇していることが金融引き締めの役割を果たし、追加利上げの必要性が低下している」とのコミュニケーションを取ったことが、長期金利の上昇が一服した背景にあります。 一方、イスラム組織ハマスとイスラエルの軍事衝突で中東での地政学リスクが高まったことは株価の重石となり、株価は週を通して一進一退の展開でした。 今週のPoint1. ハマス・イスラエル問題で株価は下落するか? 中東戦争と何が違うか 一般論として、大規模な戦争・紛争に発展すれば世界的な政治・経済の停滞リスクの高まりから株価は大きく下落すると考えられます。ただし、足元の株式市場は崩れることなく、比較的落ち着いた推移です。 この理由として、今回の衝突が第1次石油ショックを引き起こした1973年の第4次中東戦争と本質的に異なっていることが挙げられます。野村の吉本シニア・エコノミストは「軍事衝突の規模には差があるとはいえ、2006年、2008年、2014年、2021年に見られたイスラエル軍とハマスのガザ地区における戦闘に連なるものと見るのが妥当」と分析しています。 第4次中東戦争は、エジプト、シリアの両軍(アラブ側)がイスラエル軍を攻撃したことが契機であり、サウジアラビアなど多くのイスラム教国、アラブ民族国家が、アラブ側を支援・支持しましたが、今回はそうした宗教・民族の全面対立という構図を作り出すには至っていません。 それでも原油価格が重要な理由 こうした環境下で米国株に最も影響を与えるとすれば、原油価格の上昇→米長期金利の上昇→米国株の下落といった経路でしょう。リスクシナリオの位置づけでありますが、仮に紛争が激化し、湾岸諸国全体の原油生産・輸送体制にまで悪影響が及べば、原油価格の高騰によって米国のインフレ再燃リスクが高まりかねません。また、米国において国防支出増加への賛同を示す議員が増える可能性もあります。財政赤字拡大は米金利上昇材料となるため、紛争がエスカレートするか当面は注目する必要があります。 下記は、S&P500の株式益回り(A)と米長期金利(B)、両社の差である「イールドスプレッド」(B-A)を表示した図となります。 ※株式益回り…一株当たり純利益/株価(PERの逆数) イールドスプレッドが大きいほど(プラス幅が大きくなるほど)、債券に比べて株式が割高であること示し、逆に小さければ (マイナス幅が大きくほど) 債券に比べて株式が割安であることを示します。この図では、足元の株価には2000年のITバブル期ほどの割高感はないものの、ITバブル崩壊後~2008年のリーマンショック直前までの水準に上昇しています。 さらなる金利上昇を引き起こしかねないハマス・イスラエル問題には引き続き注視が必要です。 Point2. FRB高官発言に警戒 ネガティブ・サプライズとなった2指標 先週発表された2つのインフレ指標はいずれも、インフレ再加速を懸念させる内容でした。9月コアCPI(消費者物価指数)は、FRBが注視するサービス価格のインフレが継続し、市場予想を上回りました。また、10月ミシガン大学調査による消費者期待インフレ率(1年先)は9月確報値の前年比+3.2%から同+3.8%に再加速しました。 高官発言の重要性が高まる週 先週FRB高官からなされた「利上げの必要性が低下した」という発信とインフレ指標との関係は、ややちぐはぐな状態です。今週はFRB高官による講演が相次ぐため、発言内容に注目が集まります。 加えて、21日(土)からは10月31日(火)・11月1日(水)に行われるFOMC(米連邦公開市場委員会)前の沈黙期間(FOMC参加者が金融政策に関する発言を控える期間)となるため、FOMC前の発言という観点でも注目が集まりそうです。パウエルFRB議長は、19日(木)に講演を予定しています。 景気指標としては、17日(火)の9月小売売上高に注目が集まります。市場では、コア指数ベースで前月比-0.1%と8月の+0.1%から低下すると予想されています。 Point3.7-9月期決算発表が本格化 以下の通り、主要企業の決算発表が相次ぎます。 金融:カテゴリごとの明暗を確認したい 今週、バンク・オブ・アメリカ(BAC)やゴールドマンサックス(GS)など大半の金融機関が決算発表を迎え、現在の金融環境を踏まえた各ビジネス部門の業績動向が判別されるようになると見込まれます。先週一足先に決算発表を終えた業界最大手のJPモルガン・チェース(JPM)は2023年12月期通期の市場部門を除く純金利収入の見通しを、従来の870億ドルから890億ドルへ上方修正し、米国の金利上昇が業績に追い風となったとコメントしました。また会社は、通期のカードサービスの純貸倒率見通しを従来の2.6%から2.5%へ引き下げました。その理由として、貸倒額が想定を下回ったこと、分母にあたるカードローン残高の増加を挙げました。一方、4-6月期決算では堅調であった株式市場部門の純収益は、前期比・前年同期比で減少しました。 決算詳細はこちら 半導体:反転見えるか? 半導体セクターにも注目です。銘柄としては、18日(水)寄り前にASMLホールディング(ADRのティッカーは「ASML」)、同日引け後にあるラムリサーチ(LRC)など半導体製造装置に始まり、19日(木)の世界最大のファウンドリー(製造受託企業)TSMC(台湾セミコンダクター,ADRのティッカーは「TSM」)が決算発表を予定しており、今後の半導体セクターの先行きを見通すうえで重要な示唆を得る機会となりそうです。先週いち早く決算速報を発表したサムスン電子(米国上場なし)は、売上高・営業利益ともに市場予想を上回りました。なお、野村では、半導体市況を左右するメモリー半導体の平均単価について、DRAMは7-9月期に、NANDは10-12月期から回復すると予想しています。半導体業界の業績反転の兆しが足元の決算発表で見えるか、確認したいと考えます。 他にも、各セクターを代表する企業が目白押し 上記の他、メディア・娯楽セクターではネットフリックス(NFLX)、自動車セクターのテスラ(TSLA)、生活必需品セクターのプロクター&ギャンブル(P&G、ティッカーは「PG」)など、各セクターを代表する銘柄が決算発表を迎えます。 企業業績がけん引し、株価が上昇する展開になるか、注目が集まります。 (FINTOS!外国株 小野崎通昭) ご投資にあたっての注意点
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2023/10/16 15:58
【イブニングFINTOS!】日経平均株価、大幅続落 中東情勢の緊迫化が重石(10/16)
本日の株式市場 本日の日経平均株価は前週末比332円安の31,983円で取引を開始しました。足元で中東情勢が緊迫化していることが株式市場の重石となりました。また、前週末の米国株式市場でフィラデルフィア半導体株指数が前日比-2.69%となり、国内の半導体関連株の上値を抑えました。寄付き後は、やや不安定な動きとなったものの、売り一巡後は31,700円前後でもみ合いとなりました。後場に入るとアジア株式市場が軟調に推移したことも嫌気され、日経平均株価は徐々に下げ幅を拡大する展開となりました。結局、前週末比656円安の31,659円と大幅に続落し、この日の安値圏で取引を終えました。 業種別では、中東情勢の緊迫化により、原油価格が上昇したことで、鉱業や石油石炭製品が上昇した一方で、空運業、陸運業の下落が目立ちました。 個別では、東京エレクトロンやファーストリテイリング、アドバンテストといった値がさ株や半導体関連株の一角が下落し、この3銘柄で日経平均株価を約207円押し下げました。 本日発表予定の海外経済指標等 【米国】・NY連銀製造業景気指数 前月:1.9 予想:-5.0 (注)経済指標などの市場予想はブルームバーグによる市場コンセンサス予想。時間は日本時間。(出所)東京証券取引所等より野村證券投資情報部作成 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2023/10/16 09:30
【銘柄紹介】三越伊勢丹/プラスアルファ/サンケン電気
三越伊勢丹ホールディングス(3099) 小売業 高感度上質戦略を進める百貨店 百貨店業をコア事業として、クレジット・金融・友の会業、不動産業などを展開している。百貨店業では、三越・伊勢丹・岩田屋・丸井今井の4つの暖簾を持っており、国内外で事業を展開している。伊勢丹新宿本店などで独自の強みを持っており、高感度上質消費の拡大・席巻、最高の顧客体験の提供を基本戦略としている。 好調な高額品消費、経済活動活発化の恩恵を背景に、国内販売は堅調に推移している。また、免税売上高についても、訪日客数の回復等に支えられ高水準が続いている。経費抑制の取り組みも進む中、販売面は順調に推移しており、短期業績は良好に推移すると野村では予想している。 今後も利益成長が続く確度は高い 外部環境の追い風が売上を押上げている面はあるものの、CRM(顧客関係管理)戦略の強化など、当社の施策も売上の拡大に貢献していると野村では評価している。なお、百貨店各社では、若年層顧客の取り込みも進んでおり、中心顧客の高齢化という積年の課題から脱しつつあると野村では考えている。 三越伊勢丹単体にて進められてきた「百貨店の科学」の視点による経費コントロールの取り組みが地域事業会社でも進められることで、地域事業会社の損益も今後さらに改善していこう。販売増と経費コントロールにより、来年度も継続的な利益拡大が予想される。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 山岡 久紘) プラスアルファ・コンサルティング(4071) 情報・通信 販売活動/人材管理の補助サービスを提供 当社は次の3サービスを提供する。第一にアンケートなど文字情報を分析する「見える化エンジン」である。第二にEC(電子商取引)サイト上の顧客情報の分析やメール配信などで販売を支援する「カスタマーリングス」である。第三に人材管理の効率化や人事の意思決定のために従業員の情報を管理・分析する「タレントパレット」である。3サービスは、①データを可視化する点、②多機能な点、で共通する。営業、開発、コンサルティングの3者が連携し、着実に顧客が望む機能を実装してきた。特にタレントパレットは機能の多さが好感され、中堅・大企業を中心に導入顧客数が増え、高増収となっている。 タレントパレットが増収増益を牽引 野村では2023.9期以降の当社業績を増収増益と予想する。引き続きタレントパレットが増収を牽引しよう。人事業務の効率化への需要や人的資本の重要性の高まりから、今後も堅調に新規顧客の獲得が続くだろう。また、既存顧客には中堅・大企業が多く、顧客の人事の課題は多岐に渡る。採用管理や労務管理など追加機能の付与の進展が見込まれ、増収に寄与しよう。 また、高機能で料金の高いタレントパレットの販売では丁寧な導入支援で着実な顧客の獲得が求められる。顧客数増加ペースの加速のため従業員数や広告宣伝費を急増する戦略を採ることはなく、増収に応じ増益すると野村では予想する。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 平岡 直樹) サンケン電気(6707) 電気機器 EV軸に復活するパワー半導体メーカー xEV(電動車)化に伴い数量増が期待されるインバータの重要部品「パワーモジュール」を手掛ける。モジュールに必要なすり合わせ技術に強みを持ち、主力の白物家電向け中心にIPM(高機能パワーモジュール)では世界シェア15%(2021年)。 従来低収益体質に苦しんでいたが、17年以降事業・生産拠点整理や開発体制刷新といった構造改革を推進してきた。現在は好採算な新製品の拡販を進め、なかでも市場拡大の見込まれるxEV向け製品を成長ドライバーに据える。25年3月期にはEV トラクションモータ用モジュール大型案件向けに新工場の稼働開始を控えており、車載モジュールを軸に成長軌道へ復しよう。 磁気センサでも高い成長期待 当社は連結子会社として米国に磁気センサで世界トップのファブレス半導体メーカー アレグロを抱える。磁気センサは、xEV やクリーンエネルギー向け電流センサ、自働化機器向け位置センサ等で需要拡大が著しい。アレグロはこうした成長分野に注力しており、市場拡大の恩恵をより享受し易い。今後も市場拡大を着実に捉えて成長し、連結業績を牽引しよう。 アレグロを収益基盤に24年3月期連結親会社株主利益は前期比34%増の128億円を見込む。中国市場の調整は短期的に重石だが、足元の円安は追い風である。サンケン本体含む成長ストーリーも健在で、成長性の高さを評価したい。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 田村 鈴音) ※野村週報 2023年10月16日号「銘柄研究」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2023/10/16 08:29
【モーニングFINTOS!】中東情勢の緊迫化が米国株の重石(10/16)
海外市場の振り返り 13日の米国株式市場は、寄り付き時点では主要3指数が上昇して始まりました。寄り前に発表された大手金融機関の決算発表が良好であったことが株価を支援しました。しかし、中東情勢が緊迫する中で原油価格が上昇すると、VIX指数の上昇にみられるように株式市場が不安定化して、S&P500指数とナスダック総合指数は下落に転じて引けました。主要半導体関連企業の株価指数であるSOX指数は、前日比-2.70%と主要3指数よりも大きく下げて引けており、テクノロジー株を中心に軟調でした。他方、原油価格上昇を受けてエネルギーセクターの株価は上昇しています。 相場の注目点 先週末の米国株式市場が下落していたことや、イスラエルによるガザ地区への大規模な地上侵攻への準備が着々と進んでいるとの報道などにより、国際情勢への不透明感が株式市場の重石になるとみられます。日経平均先物は32,000円台を割り込んでいます。米国の業種別騰落に示されるように、本日の日本株市場では石油元売りなどは原油価格上昇が下支えするとみられますが、半導体を中心とするテクノロジー株は上値が重くなる可能性があります。他方、13日(金)に発表された日本の小売業の決算は良好であったため、株式市場でその評価が反映されるとみられます。 本日のイベント 本日は米国で10月NY連銀製造業景気指数の発表があり、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁の講演があります。 (投資情報部 小髙 貴久) (注)データは日本時間2023年10月16日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ※画像はイメージです。 FINTOS!編集部オリジナル記事 【特集】会社四季報編集長と「四季報の会」代表が語り尽くす日本企業の動向 【今週のチャート分析】米国長期債、ナスダック総合指数は自律反発の範囲内か(10/13) ご投資にあたっての注意点
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2023/10/15 19:00
【特集】会社四季報編集長と「四季報の会」代表が語り尽くす日本企業の動向
「会社四季報」編集長・冨岡耕氏×野村證券「四季報の会」代表・大坂隼矢氏対談(後編) 「会社四季報」(東洋経済新報社刊)秋号の発売後、編集長の冨岡氏と、野村證券「四季報の会」代表の大坂氏が対談した。今回は前回に引き続き、秋号で見られた各業界の独特の傾向や、上場企業の資本政策など、注目点について意見を交わした内容をお届けする。(前編「【特集】会社四季報を読破してわかった「秋号」の注目点」はこちら) 「トレカ」「ガチャガチャ」「推し」… ――これまで秋号の注目点や、値上げや中国関連の記述などについて語っていただきました。ほかに秋号で興味深い傾向や記述は見られましたか。 冨岡 興味深いと思ったのは、(玩具の)「トレカ」、トレーディングカードというキーワードが急増していたことですね。 大坂 トレーディングカードは利用者のすそ野が広がっていると感じますね。さらに、インバウンド、外国人観光客が増えている影響もあるんじゃないかなと思います。カードショップなどや玩具店などで買う人の層が増えているとみています。 冨岡 さらに、トレカのように趣味性の高いいわゆる「ガチャガチャ」。カプセルトイの話も増えましたよね。あと「推し」も多かった(笑)旅行に持っていくぬいぐるみなども、いわゆる「推しグッズ」ですね。 大坂 すごいですよね。特に推しているものがない私には「推し」の文化はよくわからないのですが、とにかくすごいというのは同感です。 「100均」「激安チェーン」も好調 冨岡 名詞が具体的に出てくる銘柄って、やっぱり玩具関連に多いですよね。トレカという言葉はかなり出てきます。たとえばブックオフグループホールディングス(9278)など、中古品販売の企業などですね。 大坂 値上げが浸透している一方で、 中古品販売が好調というのは、日本人の節約志向のようなものも多少反映されている部分もあるのかなと思いました。例えば、キャンドゥ(2698)など、いわゆる「100円ショップ」の業績も前号と比較して良くなっている印象を受けました。 売価が高い商品の構成比を高める施策が奏功している面もありますが、「100円ショップ」である以上、原材料価格が上がっても商品の価格を上げにくいはずです。原価率が上がって利益出なくなるかと思いきや、新店舗や客数の増加がコストの増加分を上回っている印象です。 このほか、「激安チェーン」と呼ばれるような値段が安い外食店も伸びています。百貨店など高価格帯の小売店と、低価格を前面に出している100円ショップや外食チェーンなどの業績が同時に改善している点を見て、消費の「二極化」が進んでいる印象を受けました。 冨岡 一方で、まったく違う業種なのですが、遊技機関連、パチンコ、パチスロの機器を製造する企業の業績がいいんです。実際に玉やメダルを使わない「スマート遊戯機」が登場した影響が大きいようです。一般的なパチンコやパチスロの機器と違って、玉などがないので、動作音が静かなのが特徴ですね。 大坂 確かに勢いを感じました。リオープンでパチンコ店に人が戻り始めたという点や、パチンコ店に対する規制緩和などで、関連業界全体が盛り上がってきている印象です。スマート遊技機という新しいものを入れた影響も大きそうです。 パチンコ関連では、パチンコ店向けコンピューターシステム最大手のダイコク電機(6430)の株価が大きく上昇しています。 野村證券「四季報の会」代表・大坂隼矢氏 半導体関連銘柄の動向 冨岡 再び大きく話は変わるのですが、ほかに目立っていると感じたのは、半導体関連で、TSMC(台湾積体電路製造)の工場建設が進む熊本と、次世代半導体の新会社、「Rapidus(ラピダス)」の工場が北海道千歳市に進出します。両社の関連で熊本や北海道への投資が相当活発になっていますね。関連の製造業だけでなく、不動産会社やコールセンター関連、人材派遣会社にも動きがあります。 大坂 熊本への投資はどんどん増えています。マンションや戸建て住宅を建設・整備する企業などにも恩恵がありますし、本当にあらゆる業種の投資が集まってきている印象です。さらに、熊本にとどまらず、福岡など周辺の都道府県にも影響が波及している印象を秋号から読み取れました。 熊本については元々半導体産業が集積していた一方、ラピダスが進出を計画している北海道は、何もない段階からの投資になりますね。地域産業に与えるインパクトも大きなものになるかもしれませんね。 冨岡 半導体の関連で言うと、大きな電流を流すのに必要な「パワー半導体」の製造は日本が強い。パワー半導体というキーワードもたくさん見受けられます。シリコンカーバイド(炭化ケイ素)という新素材の開発で「省電力」と「パワー半導体」が結びついた形で言及されているケースが大変多いですね。半導体は年々すそ野が広がり、分野も細分化され、担当の記者もキャッチアップするために常に勉強しなければなりません。 大坂 パワー半導体の利用が広がっているのは、EV(電気自動車)の普及によるところが大きいですね。強い電圧にも耐えられるシリコンカーバイドを使ったパワー半導体がテスラのEVに採用されたことが話題になりました。世界でも有数の硬い化合物で、切断や研磨に手間がかかります。パワー半導体の製造を手掛ける企業と並び、シリコンカーバイドの切断装置を手掛ける企業としてディスコ(6146)が注目されています。 冨岡 秋号だけ読むと半導体業界は「減益」や「下方修正」などという言葉が目立っていて、市況が悪化しているようにも感じますが、一時的でしょうね。 「PBR1倍割れ」資本政策の行方は ――3月に東京証券取引所が企業に「PBR1倍割れ」の改善を企業に要請しました。改善に向けた資本政策は進んでいましたか。 大坂 前回の夏号が、3月期決算企業の通期決算発表が終わった後取材されたものであったため、資本政策への言及がものすごく多かった印象があります。今回は、3月期決算企業については第一四半期の決算発表後ですから、前回と比べて、資本政策を大きく変える企業は、やや少なかったかもしれません。ただし、急いで対策をとっている企業が依然として多い印象はあります。 冨岡 今までですとPBRという言葉自体が、企業の中期経営計画などに出てくることは珍しいことでした。これまで賛否もありましたが、東証はかなり思い切った印象です。見事に企業の背中を押すことに成功しましたね。 「PBR1倍割れの筆頭格」と言われていたある企業は、これまでIR(投資家との関係構築)にあまり力を入れていない印象だったのですが、トップが取材に応じ、PBR1倍割れをどう改善していくかについて説明することもありましたね。また、通常の取材で、記者も資本政策について積極的に聞くようになっています。 ややPBRの話とは異なりますが、株式分割も非常に増えました。1株の株価を下げ、個人投資家が株式を買いやすくする施策です。米国株は1株から買えますが、日本だとまだ1単元、100株からというのが基本です。しかし、株式分割によって、米国との差が縮まってきているのではないでしょうか。 大坂 また、これまで株主優待をやめる会社がかなりあったのですが、今回は、数は少ないのですが、優待を始める企業が、私が気づいただけで数社ありました。最近優待を始めたケースはあまりなかったので、やはり2024年の新NISAに向け、企業が個人投資家を意識し始めていることがよくわかります。いずれも中小型株でしたね。 「配当性向100%」が増える ――会社四季報の編集サイドから見た「新NISA」に絡んだ企業の動向はいかがでしょうか。 冨岡 新NISAそのものの言葉は四季報にはあまり出てこないんですけど、新NISAを見据えて個人株主を増やす施策を進めているケースがかなり出てきているのはわかりますね。PBR施策とも重なりますが、「配当性向100%」を何年か続けるといったような資本政策に関する言及が多いでね。 大坂 配当性向100%、めちゃくちゃ多かったですね。 冨岡 読む限りでは、この動きにさほど継続性はないんです。3年間に期限を区切って実施、と言ったような形ですね。 また、期限を区切って東証が促したプライムからスタンダードへ市場を変更する企業も多かった。「今のうちなら目をつむりますから、移りたいなら移ってください」と。さらに時間がたったらもう一回上場審査を受けなければならないですから、身の丈に合った形で市場移行することにしたのでしょう。 ――株式の流通総数が限られるため、新規上場の段階でスタンダード市場を選ぶ企業もあります。 冨岡 そうですね。さらに、株式の流動性の観点でいうと、プライムに残りたい企業が、大株主に株の市場での売却を依頼したり、創業家の背中を押したりするケースもみられるようになりました。 大坂 あと、政策保有株の売却という言葉も目立ちました。以前から保有していた政策保有株の売却による特別利益を計上している企業も多く見受けられました。PBR改革では、政策保有株の売却によって得た資金で、自社株買いをするといった施策はある意味王道の流れと言えそうです。 ――東証のPBR改革の本質は企業の経営改革を促すことにあると言われています。配当したり、自社株買いをしたりすると肝心の事業投資ができなくなるのではないでしょうか。 冨岡 これまでPBRを改善できていなかった企業がようやく「やる」と表明はしたものの、実効性があるかどうかは未知数です。「配当性向100%」も、他にたくさん選択肢がある中の一つです。それ自体はやろうと思えばできる話ですが、それ以外の施策、生産の効率化など本質的な経営の改革にまでちゃんと踏み込めるかどうかについては、今後も注視しなければなりません。 大坂 私は配当性向100%が必ずしも悪いわけではないと思っています。今、足元の事業に何か投資するよりも、資金を株主に還元するか、成長投資に使うかを考えた時、目先に投資先がないので100%株主還元に回し、その間に新事業を検討したり、次の投資先を決めたりすることが大事だと思います。自社株買い、つまり投資先が自社株であっても問題ないわけです。 仮に配当性向を100%に引き上げると表明している会社が、60%に下げて、残りの40%を事業の相乗効果の出にくい投資先に投資しても評価が上がるわけではないですし。「意味のある100%」であれば問題はないと思います。 ご投資にあたっての注意点
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2023/10/15 13:00
【オピニオン】年間670兆円への再エネ投資拡大と産業への影響
IEA(国際エネルギー機関)は、パリ協定で定められた2050年温室効果ガス排出実質ゼロ(ネットゼロ)に向けた「ネットゼロ・ロードマップ(Net Zero Roadmap A Global Pathway to Keep the 1.5°C Goal in Reach)」の2023年版を発表しました。2021年に発表したロードマップは各国の政策や産業の脱炭素投資に大きな影響を与えました。 2023年版は、2050年ネットゼロに向け世界のクリーンエネルギー投資を2030年までに年間4兆5,000億ドル(約670兆円)に増額する必要性を示しました。これは、2023年の世界のクリーンエネルギー投資額の約2.5倍で、日本の2023年度の国家予算の約5倍です。具体的な措置として、2030年までに2022年比で再生可能エネルギー(再エネ)発電を3倍に、また、エネルギー効率を2倍にすることを示しました。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 ネットゼロ達成のために今後実用化が必要な新技術の割合は、約50%から約35%に引き下げられました。これは、ナトリウムイオン電池や固体酸化物水素電解装置の商業化などが始まったためです。 ここ2年で想定以上に普及が進んだ、①太陽光発電容量、②バッテリー容量、③自動車に占めるEVの割合、④電化率についての2030年と2050年の見通しが2023年版ではそれぞれ引き上げられました。 一方で、CCUS(CO2の回収・有効利用・貯留)や水素利用の見通しは引き下げられました。これらは、政府による補助金の導入で民間のコストが軽減された欧米ではプロジェクトが進捗した一方で、コストの高い中東やアジアでは遅れていることが指摘されました。 中国は、太陽光発電や風力発電の関連製品の製造拠点としての比率が今後も高いことが見込まれています。一方で、バッテリーや水素、ヒートポンプ(冷暖房)の生産設備については、産業の裾野が中国からほかの地域へ広がることが予想されています。 2023年9月29日、IEAとECB(欧州中央銀行)、EIB(欧州投資銀行)は、欧州のクリーンエネルギーへの移行のために、政策と金融商品を活用し、認可の手続きを簡略化することなどで、投資資金を拡大させる方針を発表しました。 また、2024年1月1日からはIFRS(国際会計基準)でのサステナビリティ関連開示義務が開始されます(注)。IFRSを採用する上場企業は、サプライチェーンの温室効果ガス排出を含めた開示が必要となります。サプライチェーンを形成する中小企業の脱炭素化を推進する評価機関や金融の取り組みも始動しています。 日本企業を含め、クリーンエネルギー関連産業の裾野が広がることが期待されます。 (注)日本で同様の基準での開示開始は2026年3月期決算以降の予定。東証上場企業でIFRS基準での開示を行っている企業は2023年8月末時点で262社。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら 業種分類、Nomura21 Globalについて ご投資にあたっての注意点
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2023/10/15 09:00
【業界展望】業績安定性と成長性を兼ね備える総合電機
事業ポートフォリオ改革が進む 電機業界を取り巻く事業環境が大きく変化している。インフレ傾向による消費低迷、サプライチェーンの混乱、地政学リスクの高まり、マクロ景気の先行き不透明感の増大がみられる。とはいえ、総合電機や日系半導体各社の業績は比較的安定している。主要8社の営業利益は2023年度に前期比1%増益の2兆2,990億円を予想する。事業ポートフォリオの再構築が進み業績変動の大きい事業が減り、需要の強い分野のウエイトが高まっているためである。 00年からの10年間はIT バブル崩壊やリーマンショックまで総合電機の国際競争力が低下した時代だった。不採算事業や低収益事業から撤退し、自社の強みが生かせる分野に経営資源を集中させた。再編が進むと同時に収益力の強化と安定化が進んだ。 事業ポートフォリオを大きく入れ替えた代表例として日立製作所が挙げられる。かつて20社以上あった上場子会社は22年度にゼロとなり、日立Astemoも23年中に非連結化させる。コア事業である社会イノベーション事業にポートフォリオを集中し、グリーン、デジタル、コネクティブの3つの社会潮流に対応して資産獲得もした。 コロナ禍でも最高益を更新し続けた企業に富士電機がある。事業ドメインをエネルギー・環境と明確化し、利益の源泉である工場の体質改善に向け「ものつくり」を強化した。内製化・自動化の推進、グローバル調達、集中購買体制の成果を発揮した。 半導体業界の再編を経て誕生したルネサスエレクトロニクスはマイコン、アナログ、パワー、ソシオネクストはカスタム・ロジックと強みが発揮できる分野に注力することで収益性が高まっている。 デジタルとグリーンの成長領域に注力 中長期的な成長テーマとしてデジタルとグリーンは健在で、24年度以降の利益成長を牽引しよう。 デジタル領域では、海外でIT(情報技術)投資に抑制傾向があるものの生成AI(人工知能)やデジタルエンジニアリングの需要は依然強い。国内のIT投資意欲は旺盛で、以前は企業業績が悪化するとIT 投資が抑制されていたが、昨今のDX(デジタル変革)投資は企業の競争力に直結するため、予算削減対象にならない場合が多くなった。投資内容もコロナ禍において非接触や非対面対応のフロントシステム構築が優先されていたが、いよいよ基幹系システムの刷新需要が本格的に立ち上がってきた。 IT 企業各社は、請負主体の人月単価型事業モデルから、社会や顧客の課題を解決するソリューション型事業に転換を図っている。タイトな人的資源に対応して生産性を改善するため、開発成果の再利用、開発プロセスの標準化によるオフショアへのシフトを積極的に進めている。最近では生成AI の活用も模索している。このようにソリューションによる提供価値に見合う価格体系への変更と生産性の改善により、主要な大手IT 部門の収益性が向上している。 グリーン領域では、カーボンニュートラル(温室効果ガス純排出ゼロ)の流れからエネルギーインフラ投資が活発化し、創エネルギー、省エネルギー、エネルギー需給管理の全分野で事業機会が拡がっている。 創エネルギー分野では太陽光発電や風力発電の普及率上昇へ取り組みが進んでいる。実現のためには発電できる立地条件や電力系統につなぐための技術ハードルが上昇する。高圧直流送電技術、直流電源の整流化や交流化、直流電源への蓄電装置導入といった技術変化がエネルギー需給管理に不可欠となる。エネルギーネットワーク分野への投資は年間6,000億ドルに上る。こうした追い風もあり日立製作所のパワーグリッドの受注残高は23年6月末時点で3.6兆円に積み上がっている。 省エネルギー分野では、自動車の電動化をはじめ様々なエネルギー効率向上が図られており、キーデバイスとしてパワー半導体が注目される。グローバルに競争力を維持できている分野であり、各社積極投資を続けている。生産能力拡大とコスト競争力の強化のため、現在主流のSi(珪素)では12インチの製造ラインが24年から3社で本格離陸し、SiC(炭化珪素)でも24年から25年にかけて2社の新ラインの本格量産が始まる見通しである。 (野村證券エクイティ・リサーチ部 山崎 雅也) ※野村週報 2023年10月9日号「産業界」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
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2023/10/14 19:00
【特集】会社四季報を読破してわかった「秋号」の注目点
「会社四季報」編集長・冨岡耕氏×野村證券「四季報の会」代表・大坂隼矢氏対談(前編) 野村證券で「会社四季報」(東洋経済新報社刊)を読破し、相場観を掴む独特の企業文化がある。今回は、会社四季報の編集トップである編集長の冨岡耕氏と、野村證券投資情報部ストラテジストで、「四季報の会」代表でもある大坂隼矢氏が対談した。 「業績改善」が鮮明に ――まず秋号を読破した感想を聞かせてください。 大坂 総じて企業の業績がかなりよくなってきている印象を受けました。巻頭の「見出しランキング」などを見ていても、総じて好況が反映されていた印象です。 前回もすごく良かったなっていう感じはあったんですけども、さらに良くなってたという印象です。そして、前号を読んで少し懸念していた点も解決された印象です。 前号は電力会社の値上げがこれから始まるので、高熱費が懸念材料だという記述が目立っていました。特にサービス業で目立っていたので、秋号はどうなるのかという点をすごく気にしていました。しかし、秋号ではコストの増加を値上げで吸収できている企業が多かったなという印象を受けました。 予想営業利益が「増額」されていた企業が、特に外食業で目立ちました。外食に限らず内需に関連するセクターが強かったと思います。コロナ禍で取り組んでいたコスト改革が進展したうえで、値上げの浸透やリオープンの需要が加わったことが要因であると感じました。 外需の方は中国関連や、一部の業種で弱含んでいるものもあります。ただ、自動車だけは相変わらず強いですね。毎号、前回号と比較して、業績やコメントが改善していたり、悪化していたりする銘柄に付箋を貼るのですが、今回は改善を示す色の付箋ばかり貼っていました(笑)。 冨岡 私も第一印象は多くの企業の業績がよくなっているという点でした。各企業のページの端に載っている矢印が上を向いていると、四季報の予想が前号発行時から上方修正されていることを示しています。 編集作業中も上向きの矢印が多いなと感じていました。上場企業の約6割が 3月期決算企業ですが、2023年度の第1四半期決算発表後に各記者が取材して、早くも期初計画から上方修正するケースが増えています。記者が取材をする中で変化を感じることが多かったようです。 私たちの独自予想が会社予想より相当強気な場合、記事に「独自増額」という見出しをつけるのですが、それも非常に増えています。 私は製造業、非製造業で分けてチェックすることがあります。製造業は自動車を中心に、サプライチェーンや供給サイドが正常化し、業績が拡大しています。自動車に関連し、素材系の企業の業績も回復していますね。 さらに、懸念されていた原材料高は値上げが浸透して経営への影響が落ち着いてきています。期初から円安に振れていることもあり、追い風にもなっていると思います。非製造業の方はコロナ禍が終わり、経済再開、いわゆるリオープンが他国より遅れていたこともあって、宿泊業や空運業などの業績拡大が目立っていました。 一方で、資源相場が前期まで高騰していたので、その恩恵を受けていた石油関連や海運業、商社などの卸売業は業績が一服してきた印象がありますが、総じて悪くはなかったですね。 企業は第1四半期の決算で業績修正はあまりしませんが、四季報では先んじて修正しているケースが目立っています。そうした企業は今後修正発表する可能性もあるため、秋号は「お宝銘柄」を探しやすく、お買い得ですね(笑)。 冨岡 耕 氏(とみおか こう)早稲田大学理工学部卒業。全国紙の経済部記者を経て、2007年に東洋経済新報社入社。第一編集局に配属、『会社四季報』編集を担当後、企業情報部チームリーダー、『週刊東洋経済』副編集長を歴任。2021年4月に『会社四季報』副編集長となり、同年10月に編集局会社四季報センター会社四季報編集部担当部長兼『会社四季報』編集長に就任。 「飛躍」の見出しが示す意味 ――前号では「ChatGPT」やAIに関する記述が増えました。秋号では変化がありましたか。 大坂 前号からやや増えている印象です。そして、AIの導入が具体的な戦略や足元の業績などの形で表れ始めている企業もありました。例えば、コールセンターやIRの資料作成でこういった使い方をしていると具体的に言及されている企業が、すごく増えた印象があります。 冨岡 そうですね。AIに関する記述は少し前から増えていましたが、 今年になって急増しました。企業の人手不足といった状況もあり、DXやAIへの投資が増えています。業種を問わず企業の社内での利用が増えているケースのほか、特にIT企業では、新しいサービスを商用化しているケースの両方があると思います。 大坂 ブレインパッド(3655)の欄では生成AIの引き合いの増加に言及されています。同じように、AI活用したり、AI活用のコンサルティングを手掛けたりする企業が目立ちました。GMOリサーチ(3695)、アドバンスト・メディア(3773)、テラスカイ(3915)など、具体的な事業に触れている企業も増えました。 ――原材料価格や燃料価格の上昇についてはいかがでしたか。 大坂 冒頭でも話したように、値上げが進んでいるという強い印象を受けました。例えば伊藤忠食品(2692)などは見出しが「一転増益」となっています。燃料価格も同様に、会社の業績の進捗率の高さにも現れていると考えています。 会社がコストをある程度想定し、上手に吸収していますね。イオン九州(2653)に代表される小売も同様に「一転増益」になっています。読み進めていくと、上向きの矢印が次から次に出てきた印象です。 冨岡 特に食品関連は値上げが続いている印象があるのですが、かなりそれが浸透してきています。極洋(1301)やニッスイ(1332)など、純利益ベースで過去最高水準に到達する勢いがありますね。 大坂 ニッスイは見出しも「飛躍」でしたよね。これは最高評価ともいえる見出しです。 冨岡 水産業に限らず、日本経済がよい循環に入ってきているという感覚はありますね。ちなみに「飛躍」のような見出しは、記者が取材した際の印象や感覚を反映し、読者の方にお伝えするためにあえて使用しています。 会社四季報編集長の注目ポイントは ――中国の景気や経済政策が日本の企業に何らかの影響を及ぼしているような印象は秋号から感じ取れましたか。 大坂 中国の市況悪化の影響は4000番台から6000番台、素材や化学、機械関連の企業から見て取れたと思います。先ほど、自動車は勢いがあるとお話ししましたが、中国の自動車販売はやや低迷しています。日本の自動車メーカーの業績は、主戦場である日本と米国がけん引していますが、自動車関連でも、中国の売り上げが大きい企業では影響が多少表れていた印象です。 また、短期的なものではなく、政治リスクなどから長期の経営計画を変更している企業もありました。例えばテラプローブ(6627)が中国で半導体関連の小会社設立を計画していたのを取りやめるなど、中国を取り巻く情勢の変化が、経営判断に影響を及ぼし始めている印象です。また、中国政府の政策の影響で、中国での環境や水質系の案件が急減した企業もありましたね。 冨岡 中国についてはやはり影響は出ていて、マイナスの影響について触れた企業は多いです。以前は中長期的に、中国への投資を進めるなど、中国事業の今後について比較的前向きなキーワードが多かった。 しかし、秋号では中国で何かを始めるなどといった記述が少なくなっていました。中国に代わってインドやベトナムでの事業に関する言及がより増えたのではないかと思います。中国の今後の不透明感、景気の影響は当面変わらないと考えています。 ――今までお聞きした値上げや生産性の向上、インバウンドの影響については野村證券でもアナリストが注視しているテーマです。会社四季報の編集者や記者の方はいかがですか 冨岡 もちろん注視しています。そういったテーマは業績などに相当影響しますし、今最も動きが激しいので、四季報にもたびたび登場します。 秋号で私が編集したり、チェックしたりしている中で注目したのは、日本の財政に絡む話です。防衛予算増額による、製品の受注増加のような話題ですね。また、産業関連の政府の補助金に関する話題も増えています。例えば蓄電池や半導体などの業種では、前号よりかなり目立っていると思いますね。 大坂 防衛関連では重工各社は恩恵を受けていると思います。三菱重工業(7011)などは「受注大幅拡大」とありますね。これまで、防衛はある程度決まった予算内での発注しかないという認識が固定観念としてあったんで「こんなに良くなるんだ」と驚きました。 冨岡 (侵攻する相手方の艦艇などに対して、脅威圏外の離れた位置から対処を行える)「スタンド・オフ・ミサイル」など、あまり見慣れない言葉も出てきました。 (後編「【特集】会社四季報編集長と「四季報の会」代表が語り尽くす日本企業の動向」はこちら) ご投資にあたっての注意点