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2023/12/22 09:30
【野村の投資判断】2024年の「ブラックスワン」と「灰色のサイ」
「ブラックスワン」とは、発生確率が低いものの、起こった場合には極端な影響を及ぼすリスク事象を指します。「灰色のサイ」は、発生確率が高いものの、いつ起こるかが予測困難であるため見過ごされがちなリスク事象を指します。以下に、2024年に考えられる10個の「(確率は低いが発生すると影響が大きい)テールリスク」を示します。 【米国大統領選挙の二極化】 現状では、トランプ氏が勝利する可能性は十分に考えられます。もし彼が勝利し、米国が孤立主義に向かうと、貿易保護主義が台頭し、地球温暖化対策も後退するかもしれません。また、トランプ氏が政敵への報復を追求することで、米国の社会や政治体制が一段と二極化する可能性もあります。トランプ氏が計画する減税についても、投資家が財政赤字を懸念して米国債を売却する可能性があります。 【世界的な供給力の急増】 リモートワークや(在宅・出社勤務を組み合わせた)ハイブリッドワークが浸透することで、労働力の供給が増大する可能性があります。さらに、生成AIの導入が加速すると、生産性の向上も見込まれます。これらの要素がインフレ問題の解消につながる可能性もあります。 【AIによるサイバー攻撃】 AIの規制は遅れがちで、AIがテロリストなどに利用されてサイバー空間や物理空間が攻撃されるリスクが存在します。 【より頻繁な気象災害】 気候変動が進むと、気象災害が頻繁に起こる可能性が高まります。それが食料価格の上昇や財政負担の増大を引き起こし、社会的な不安を引き起こす恐れがあります。 【中印が主導する世界経済の回復】 中国はデフレの危機に直面しており、景気刺激策を打ち出す可能性があります。一方で、インド経済は新興国発展の主軸として成長を続けていく可能性があります。これら2ヶ国は既に世界の商品需要を支配し、世界経済の成長を牽引しています。 【2つの地政学リスクの緊迫化】 イスラエルとハマス、ロシアとウクライナの紛争の緊張が高まる可能性があり、これが2つ同時に進行すると大きなリスクとなります。NATO(北大西洋条約機構)からウクライナへの資金援助が減少すれば、プーチン氏による大規模攻勢が起こるかもしれません。さらに、もしトランプ氏が再び大統領になった場合、状況は深刻化する恐れがあります。 【台湾情勢】 2024年の台湾総統選後の新たな指導者のもとで、台湾が中国政府のレッドライン(越えてはならない一線)を越える可能性があり、初期の報復反応を誤ると、制御不可能な状況に陥るかもしれません。 【2024年のデフレ】 中央銀行は、インフレ目標達成の最終段階が最も難しいことを市場に伝えています。しかし、もし中央銀行の判断が間違っていたとしたらどうなるのでしょうか。経済成長が停滞すれば、労働者の賃金交渉力や企業の価格決定力が急激に失われる可能性があります。同時に、全世界の供給能力の急速な増大や、商品価格の低下が発生する可能性もあります。 【債券市場が財政拡張に警鐘】 先進国と新興国の公的債務が過去最高水準に達しているため、債券市場が警鐘を鳴らすかもしれません。一方で、経済成長の鈍化や貧富の格差拡大、そして大規模な選挙を控えている一部の政府が、債券市場に対抗して、財政拡張を推進する可能性もあります。 【BRICSの拡大】 BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)にアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、UAEを加えた11ヶ国が新たな世界秩序を形成するという観点があります。特に、次回のサミットでは、BRICSのデジタル通貨や新決済システムが登場し、サプライズをもたらす可能性があります。 (野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課) 要約編集元アナリストレポート 「2024年世界経済見通し – 新たな道を切り開く(要約版)(2023年12月12日配信)」 (注)要約編集元アナリストレポートの発行日は2023年12月12日。画像はイメージ。(出所)野村證券経済調査部などより野村證券投資情報部作成 要約編集元アナリストレポートについて ご投資にあたっての注意点
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2023/12/21 08:23
【モーニングFINTOS!】NYダウ、10営業日ぶりに反落(12/21)
海外市場の振り返り 20日の米国株式市場では、主要3指数が揃って下落しました。NYダウは10営業ぶりの反落となりました。良好な経済指標やFRB高官のややハト派的な発言を受け、午前は堅調な推移となっていました。しかし、引けにかけては高値警戒感からVIX指数が急速に上昇、主要指数も下落に転じました。 相場の注目点 日銀の金融政策決定会合を終え、再び市場の注目点は米国金利に移るなか、本日は米国の新規失業保険申請件数が発表されます。市場の見方に対して申請件数が多く、米国雇用情勢が悪化しているとの見方が広がれば、米国金利低下の要因となりそうです。反対に、申請件数が少なく、雇用情勢が底堅いと示唆されれば、米金利は上昇、為替市場では円安ドル高が予想されます。 本日のイベント 米国市場引け後にはナイキが決算を発表します。米国景気にとって重要な消費動向を占う上で注目されます。また、本日はインドネシアやトルコで金融政策会合の結果が発表されます。市場では、インドネシアは政策金利(6.00%)を据え置き、トルコは1週間レポレート2.5%ポイントの利上げが予想されています。 (投資情報部 大坂 隼矢) (注)データは日本時間2023年12月21日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ※画像はイメージです。 FINTOS!編集部オリジナル記事 【野村の投資判断】2023年度「配当取りシーズン」の高配当戦略 【野村の投資判断】「1月マイナス付利撤廃」をメインシナリオとして維持 ご投資にあたっての注意点
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2023/12/20 16:17
【イブニングFINTOS!】日経平均株価、456円高。高値警戒感から伸び悩み(12/20)
本日の株式市場 前日、NYダウ指数が連日で過去最高値を更新した流れを引き継ぎ、日経平均株価は前日比247円高の33,467円で取引を開始しました。前日に日銀の植田総裁が記者会見で金融政策の早期修正に言及しなかったことも投資家心理の支えとなりました。一方、10年国債利回りは0.555%と、イールドカーブ・コントロールの柔軟化で0.5%の上限を1.0%に引き上げた7月28日以来の水準へと低下し、地銀を中心に銀行株の重石となりました。日経平均株価は寄り付き後も堅調に上げ幅を広げ、前引け近くに、前日比604円高の33,824円高を付け、7月3日の年初来高値(終値ベース)を上回る場面も見られました。後場は高値警戒感が広がる中で目新しい材料に乏しく、本日の高値圏で膠着が続き、前日比456円高の33,675円で取引を終えました。 東証33業種別指数では、26業種が上昇しました。地政学的リスクによる海運運賃の上振れが業績に寄与するとの見方が広がり、海運業が前日比+3.16%で上昇率1位となりました。 本日発表予定の海外経済指標等 【米国】・7-9月期経常収支(経常赤字) 4-6月期:2,121億米ドル 予想:1,965億米ドル ・11月中古住宅販売件数(年率) 前月:379万件 予想:377万件 ・12月消費者信頼感指数(コンファレンスボード) (総合)前月:102.0 予想:103.4 (注)経済指標などの市場予想はブルームバーグによる市場コンセンサス予想。時間は日本時間。(出所)東京証券取引所等より野村證券投資情報部作成 ※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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2023/12/20 08:38
【モーニングFINTOS!】NYダウ、ナスダック総合指数9連騰(12/20)
海外市場の振り返り 米国11月の住宅着工件数は前月比+14.8%と市場予想の同-0.9%を大きく上回りました。中古住宅の在庫不足などが新築住宅需要を押し上げたとみられます。FRB高官の金融政策に対する発言が相次いでいます。前日の米国時間夕方におけるサンフランシスコ連銀のデイリー総裁による2024年の利下げは適切との発言や、リッチモンド連銀のバーキン総裁はインフレがうまく鈍化すれば適切に対応するとの発言などが好感され、米国株の支援材料となりました。 相場の注目点 CME日経225先物(2024年3月限)価格は33,330円で、12-2月配当落ちの約83円を考慮すると33,413円と試算されます。昨日の日経平均株価の終値33,219.39円を上回る水準です。紅海における武装組織フーシ派の攻撃を避けるため、日本のコンテナ船事業者ONEも航海がより長距離になり、コストが増加するアフリカ南端経由に迂回するとの報道があります。ここ数日は、海運運賃の上昇が好感され、海運株は上昇しましたが、本日の反応が注目されます。 本日のイベント 本日は8:50に11月貿易統計が発表されます。中国でスマホ販売が復調するなど、海外の経済活動の好転がみられます。製造業には追い風です。また、16:15発表の11月訪日外国人客数についても、海外からの恩恵を受けることのできる国内事業者は少なく無いとみられるため、注目されます。米国では、11月中古住宅販売が発表されます。 (投資情報部 小髙 貴久) (注)データは日本時間2023年12月20日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ※画像はイメージです。 FINTOS!編集部オリジナル記事 【週間ランキング】最も閲覧数が多かった個別銘柄は?トップ10を紹介(12/19) 【野村の投資判断】2024年12月末のドル円相場は135円と予想 ご投資にあたっての注意点
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2023/12/19 19:00
【週間ランキング】最も閲覧数が多かった個別銘柄は?トップ10を紹介(12/19)
円高の進行が輸出企業株価の重石に 日本電信電話(NTT、9432)が4位にランクインしました。12月13日に開催された情報通信審議会(総務相の諮問機関)では、NTT法を含む通信政策の論点整理案が提示され、事業者の意見聴取も行われましたが、方針はまだはっきりしていません。今後、同審議会は論点の整理を2024年2月、骨子案を2024年4月に発表し、答申を2024年の夏頃に総務大臣に提出する予定です。 完成車メーカーでは、トヨタ自動車(7203)が5位、本田技研工業(ホンダ、7267)が9位にランクインしました。足元、円高・ドル安の進行が輸出企業の株価低迷を招いています。ただし、野村證券では、トヨタ自動車は業界内では為替感応度が低く、手元資金から有利子負債を差し引いたネットキャッシュや自己資本も豊富で自社株買いをしやすいため、相対的に円高への抵抗力があると見ています。ホンダについても、為替感応度が低く、配当利回りが相対的に高めであり、ネットキャッシュも豊富で自社株買い余力があるため、円高への抵抗力が高いと言えます。 アステラス製薬(4503)が6位にランクインしました。12月11日に同社は、欧州でホットフラッシュと呼ばれる更年期障害の治療薬「フェゾリネタント」の販売承認を取得したと発表しました。同社の株価は足元でやや軟調に推移しており、12月18日に場中ベースで年初来安値を更新しています。 (野村證券投資情報部 デジタル・コンテンツ課) (注1)画像はイメージ。(注2)各種データは2023年12月18日時点。 ご投資にあたっての注意点
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2023/12/19 15:59
【イブニングFINTOS!】日銀金融緩和維持で日経平均株価反発、460円高(12/19)
本日の株式市場 本日の日経平均株価は、前日比15円高の32,774円で取引を開始しました。寄付き後、日銀の金融政策変更への警戒感から下落に転じ、一時同104円安まで下げ幅を広げました。米国鉄鋼大手USスチールを買収すると発表した日本製鉄は、買収の成否や費用負担が懸念され一時前日比-6.14%となりました。一方で日経平均株価の下値は堅く、下げ幅を縮め再度上昇に転じると、前日終値を挟んで一進一退を続けました。後場寄り前に日銀会合が終了し、現行の金融緩和策は据え置かれた事が伝わると、市場では金融政策変更への過度な警戒は後退して円安株高となりました。日経平均株価は急伸し、33,000円を上回り高値圏での推移を続けました。引けにかけては上げ幅を広げ、前日比460円高の33,219円と、本日の高値で反発して取引を終えました。 日経平均株価の主力銘柄では、ファーストリテイリングは前日比+2.18%、東京エレクトロン同+3.67%、アドバンテスト同+4.09%となり、3銘柄で日経平均株価を218円超押し上げました。 本日発表予定の海外経済指標等 【米国】・11月住宅着工・建設許可件数(年率、万件) (着工) 前月:137.2 予想:136.0 (許可) 前月:149.8 予想:146.5 (注)経済指標などの市場予想はブルームバーグによる市場コンセンサス予想。時間は日本時間。(出所)東京証券取引所等より野村證券投資情報部作成 ※掲載している画像はイメージです。 ご投資にあたっての注意点
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2023/12/19 13:21
【速報・解説】日銀政策据え置き、ガイダンスも変更なし
金融政策の据え置きを決定、フォワードガイダンスも維持される 日本銀行は12月18~19日に金融政策決定会合を開催し、大方の事前予想通り金融政策の据え置きを決定しました。ブルームバーグの調査によれば、2024年4月までにマイナス付利撤廃を予想している回答者が65%、うち15%は24年1月会合での撤廃を予想しています。今回の会合では金融政策正常化に向けた地ならしとして、フォワードガイダンス(政策運営の指針)が修正されるのではないかとの見方もありましたが、こちらも修正はありませんでした。このため、本日15時半から行われる植田日銀総裁の記者会見が注目されます。 為替市場では、決定会合の発表を控えてドル円レートは142円台半ばで取引されていましたが、今回の結果を受けて143円台半ばへ1円程度、円安・ドル高が進行しました。ただし、この後の記者会見で植田総裁が金融政策正常化の可能性を否定するとは考えにくいことから、一方的に円安が進行する可能性は限定的だと見られます。 植田総裁の記者会見では、金融政策修正時期やマイナス金利解除後の追加利上げの可能性、国内政治の混乱やFRB(米連邦準備理事会)、ECB(欧州中央銀行)が利下げに転じた場合の政策判断への影響などに市場の関心が集まると考えられます。 なお、野村證券ではマイナス付利の撤廃は2024年1月会合、YCC(長短金利操作)政策撤廃は同年4-6月期(4月を有力視)と予想しています。2023年の春闘では約30年ぶりの高い賃上げ率で妥結されました。その後も、複数の企業から賃上げに積極的な声が聞かれるなど、企業の賃金設定行動に変化が見られます。日銀も「賃金と物価の好循環」達成に徐々に自信を深めている様子がうかがえます。野村では23年に続き、24年、25年の春闘でも前年比3.9%程度の高い賃上げが実現すると予想しています。このような企業行動の変化が、日銀に金融政策の正常化を促す要因となると考えています。 (野村證券投資情報部 尾畑 秀一) ご投資にあたっての注意点
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2023/12/19 08:26
【モーニングFINTOS!】米長期金利上昇が米国株の重石に(12/19)
海外市場の振り返り 18日の米国株式市場で、主要3指数は上値の重い展開となりました。シカゴ連銀のグールズビー総裁が、市場が利下げに関して先走っている事に困惑していると発言するなど、市場の早期利下げ観測をけん制しました。これを受け、米10年債利回りが上昇し、株式市場の重石となりました。NYダウは、前週末終値を下回る場面がありましたが、今後の相場一段高を見込む市場参加者も多かったとみられ、小幅上昇して取引を終え、連日で過去最高値を更新しました。 相場の注目点 本日は、日銀金融政策決定会合の結果が発表されます。市場では、金融政策の据え置きが予想の大勢を占めています。ただし、足元の日銀政策委員の発言から、2024年1月会合での修正期待は維持されています。このため、政策変更に向けた地均しとして、追加緩和を示唆した現行フォワードガイダンスの撤廃や植田総裁記者会見での物価と賃金の好循環についての見方の好転、といった変化がみられるか注目されます。 本日のイベント 米国では、アトランタ連銀のボスティック総裁の講演が予定されています。今後のFRBの金融政策の動向を見極める上で、引き続き、FRB幹部の発言や物価統計に注目が集まります。 (投資情報部 澤田 麻希) (注)データは日本時間2023年12月19日午前7時半頃、QUICKより取得。ただしドル円相場の前日の数値は日銀公表値で、東京市場、取引時間ベース。CME日経平均先物は、直近限月。チャートは日次終値ベースですが、直近値は終値ではない場合があります。 ※画像はイメージです。 FINTOS!編集部オリジナル記事 【今週の米国株】マイクロン&ナイキ決算で見通す24年、クリスマス休暇前最後の点検(12/18) 【野村の投資判断】日銀12月会合、事前予想と株式市場の反応 ご投資にあたっての注意点
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2023/12/18 20:00
【今週の米国株】マイクロン&ナイキ決算で見通す24年、クリスマス休暇前最後の点検(12/18)
先週:FOMC無事通過で7週連騰の米国株 FOMCと株式市場の反応 先週は、12月FOMC(米連邦公開市場委員会)を無事通過したことで、S&P500指数とナスダック総合指数は年初来高値を更新し、ダウ指数は史上最高値を更新しました。 12月FOMCで示された今後の政策金利見通し(中央値)では、1回あたりの変更幅を0.25%ポイントとした場合、2024年末までに3回の利下げ見通しが示されました。市場では2024年末までに4~5回の利下げを織り込んでいたため、この点だけをみると、株式市場はネガティブに反応してもおかしくはありませんでしたが、今回のFOMCでは2024年中に利下げに転じる方向性が明確に示されたことで、政策金利が当面高い水準で維持されることへの警戒感が緩和され、株式市場はポジティブに反応していると推察されます。 なぜFOMCは利下げを明確化したか 12月FOMCでFRBが発表した経済予測では、実質GDP成長率や失業率の見通しは前回発表の9月時点から大きく変わってはいませんでした。一方、インフレについては、FRB(米連邦準備理事会)が目標とする2.0%を上回る状態が2025年まで続くとみているものの、9月時点の見通しよりは、2023年から2025年にかけて水準を引き下げました。FRBでは、インフレ鎮静化と景気のソフトランディング(軟着陸)を同時に達成する確度が増していると判断したと推察されます。 Point1:23年最終、消費・インフレを確認 FRBと市場が見込んでいるインフレ鈍化のシナリオが正当化されるためには、消費や期待インフレの鈍化が条件となります。今週は住宅関連統計に加えて、20日(水)に12月消費者信頼感指数(コンファレンスボード)、22日(金)に12月ミシガン大学消費者マインド(確報値)、11月個人消費支出・所得統計(中でも、PCE(個人消費支出)デフレーターと呼ばれるインフレ指標)と、いずれも今後の消費、インフレ動向を予想するうえで注目度の高い指標が発表されます。これらの指標が消費減速やインフレ鈍化を示唆し、市場の利下げ観測を促す結果となれば、長期金利の低下、株高につながる可能性があります。 Point2:薄商いとなる中での要人発言には注意 クリスマス休暇が近づく中、週後半に向けて市場は薄商いとなることが予想されます。流動性が低下する可能性もあり、何かサプライズがあった場合にはボラティリティの高い展開となるリスクには警戒が必要です。現時点では19日(火)にアトランタ連銀ボスティック総裁の発言機会が予定されているだけですが、メディアインタビューを含め、FRB高官からの市場の利下げ観測をけん制する発言が見られるかも注目されます。 Point3:マイクロン、ナイキ…実は重要な9-11月期決算発表 米国は9-11月期決算発表が本格化しています。9-11月期決算企業数はS&P500企業ベースで全体の4%にすぎませんが、最も企業決算が集中する10-12月期決算(全体の89%)と2か月分の重なりがあることから、米国株を見通す先行指標として重要な決算期となります。 先週決算を発表した、オラクル(ORCL)とアドビ(ADBE)はいずれも9-11月期の一株当たり利益は市場予想を上回りました。しかし、オラクルは9-11月期の売上高(特にクラウド部門の売上高)が、アドビは12月-2月期の売上高見通しが、それぞれ市場予想を下回ったことで、発表翌日の両社の株価は下落しています。こうした状況から考えると、10-12月期に控えるソフトウェアセクターも好決算一色というわけにはいかなさそうです。米金利低下の恩恵を受けられるグロース銘柄を軸にしつつも、あくまでファンダメンタルズ(基礎的条件)に基づいた選別投資を進めていく局面でしょう。 今週は、2023年の相場をけん引した半導体関連株の先行きを見る上で20日(水)のマイクロン・テクノロジー(以下マイクロン)の決算を、グローバルな消費動向を見る上で21日(木)のナイキの決算に注目したいと考えます。特にマイクロンの決算は業界を見通すうえで示唆の多いものとなりそうです。 マイクロンが生産するメモリー半導体は、2024年の半導体市場の牽引役(WSTS予測によれば、前年比+44.8%)と予測されており、同カテゴリの成長が半導体市場全体の成長にとってもカギとなります。メモリーは足元で生成AI関連でデータセンター向けの需要が旺盛なDRAMに加えて、PCやスマホに多く搭載されるNANDの単価が減産効果と相まって上昇傾向にあるため、市場の関心が高まっています。 (FINTOS!外国株 小野崎通昭) ご投資にあたっての注意点