内需株 を含む記事
2件
-
09/25 20:00
【今週の米国株】ストライキ、原油高…インフレかく乱要因を注視/決算はマイクロンに注目 (9/25)
1分でわかる今週の米国株 先週の9月FOMC(米公開市場委員会)では、政策金利は大方の予想通り据え置かれたものの、2023年末の政策金利見通しについては、現行水準よりも0.25%ポイント高い6月FOMC時点の見通しが維持されました。FRB(米連邦準備理事会)は、今回の会合では利上げを見送ったものの、今後のデータ次第では、利上げを行う用意があることを示しました。 また、2024年末、2025年末の政策金利見通しを6月時点より共に0.50%ポイント引き上げました。これをタカ派的と受け止めた市場参加者が多く、株式市場は軟調に推移しました。 今週のPoint1. 12月FOMCまでの論点 先物金利を見ると、FRBの政策金利見通しを受けて年内に追加1回の利上げが5割程度織り込まれています。いずれにせよ、米国の利上げ局面が最終盤にあるならば、市場参加者の関心は、利下げ開始時期に移行すると予想されます。仮に1回当たりに金利変更幅を0.25%ポイントとした場合、2024年中に2回の利下げが予想されています。その場合、利下げ開始は早くても9月以降になると予想されます。 今週のPoint2.政府閉鎖とストライキ、2つの市場かく乱要因に注意 政府閉鎖 10月1日(日)から始まる2024財政年度に向けて、予算協議が難航しています。9月30(土)までに予算が成立せず、暫定予算案も合意に達しない場合、政府閉鎖となります。短期的にはそのリスクが高まっています。2024財政年度予算を巡っては、既に2023年6月に成立した財政責任法によって大枠が決定したはずでしたが、足元では、下院共和党保守派が財政責任法による規定よりも大幅な歳出削減を主張しています。政府閉鎖となれば共和党も責任を問われ、支持率が低下する恐れがあるため、政府閉鎖は短期間で収束すると想定されますが、長引けば株式市場の重石となる可能性があります。 UAW(全米自動車労組)ストライキ 9月15日(金)よりUAWがストライキを開始しています。自動車在庫/売上比率は、依然としてコロナ前の水準を大きく下回る中で、生産が停滞すれば再度需給が逼迫、価格が上昇しやすいと考えられます。景気への影響のほか、これまでインフレ率全体の低下に寄与してきた自動車価格の再上昇は物価の再加速に繋がりかねません。足元ではWTI原油価格も1バレル=90ドル前後で高止まりしており、こうしたインフレのかく乱要因には注意が必要です。 今週のPoint3.メモリ大手のマイクロン・テクノロジーなど6-8月期決算に注目 2023年6-8月期決算発表が本格化しており、今週はマイクロン・テクノロジー(MU、27日(水)引け後)等の発表が予定されています。マイクロン・テクノロジーはメモリー半導体大手で、売上高で見て世界3位(1位はサムスン電子、2位はSKハイニクスと韓国企業が占める)です。 米国株全体を見通すうえで、当社に注目すべき理由は2点あります。 1点目は、メモリーが半導体市場全体に与える影響です。製品別で見ると、メモリーはロジックについで市場規模が大きいうえ、年ごとの振れ幅が大きいため、メモリーの回復度合いが2024年以降の市場に影響を与えると考えられます。 2点目として、設備投資動向の重要性です。一般論として、メモリー半導体メーカーの多くはファブレス(工場を持たない業態)ではなく、IDM(垂直統合、自社で工場を持ち生産する業態)であることから、投資計画が半導体製造装置や素材などサプライチェーン全体に影響を及ぼします。加えて、足元では経済安全保障の観点から、半導体のサプライチェーンも米国内に置く動きが加速しています。半導体メーカーの投資動向がアプライド・マテリアルズ(AMAT)やラム・リサーチ(LRC)など米半導体製造装置企業の業績を左右しうるため、当社にも今まで以上に注目度が高まっています。 そのほか、26日(火)にはディスカウントストア大手のコストコ・ホールセール(COST)が、28日(木)にはコンサルティング大手のアクセンチュア(ACN)やスポーツ用品大手のナイキ(NKE)が発表を予定しています。いずれも、10月中旬から始まる7-9月期決算を見通すうえで重要な示唆情報となりそうです。 (FINTOS!外国株 小野崎通昭) ご投資にあたっての注意点
-
09/25 15:30
【市場展望】歳出膨張よりも硬直化が問題
過去最高となった概算要求額 9月5日、財務省から2024年度予算の一般会計概算要求・要望額が公表された。要求総額は、22年度の111兆6,559億円を上回る114兆3,852億円と、過去最高となった。メディアにおいては、要求額が過去最高を記録した点を含め「110兆円を上回るのは3年連続で、100兆円を超えるのは10年連続」(23年9月5日付日本経済新聞電子版記事)など、際限ない歳出の膨張を問題視する論評が目立つ。 財政規模の拡大に歯止めが効かなくなることも問題ではある。しかし、24年度予算概算要求に関しては、むしろ歳出の硬直化の方を問題視するべきであるように思われる。歳出の硬直化とは、事後的に柔軟に増減することが困難な支出の全体に占める割合が上昇することを指す。 日本の財政の歳出を硬直化させる要因としては、高齢化の進行に伴う社会保障関係費の増加がもとより存在していた。それに加え、22年12月16日に閣議決定された防衛力整備計画(23~27年度の5カ年)では計画実施に必要な防衛力整備経費の水準が43兆円程度とされ、一般会計予算における防衛関係費は27年度に8兆9,000億円程度まで増加していくことになる。岸田政権の下で打ち出された「次元の異なる少子化対策」も、歳出硬直化に繋がり得る一因となる。6月に策定された「こども未来戦略方針」においては、こども家庭庁予算を30年代初頭までに倍増させ、同方針の少子化対策加速化プランの下でそのうち「3兆円半ば」の規模増額を3年間で実現させるとしている。24年度予算は、これら新たな歳出固定化・硬直化要因が現実の予算に組み込まれはじめるタイミングでもある。 24年度予算概算要求では、国債費の増加も目立ち、これも歳出の硬直化要因と評価できる。概算要求における国債費は、28兆1,424億円と、23年度予算比で2兆8,921億円増となっている。概算要求に当たっての国債の元利払いの想定金利を1.5%と、23年度予算政府案決定時の1.1%から0.4%ポイント、同概算要求時点の1.3%から0.2%ポイント引き上げたことが影響している。「金利のある世界」の再来を前提とすれば、相応の国債利払い費が財政コストとして固定化されるのは必然である。 歳出構造の柔軟化は急務 本来あるべき姿としては、こうした歳出の硬直化・固定化に対応し、備えるために、①安定的な財源を確保する、②更なる歳出改革により裁量的な支出の部分で適切な効率化や弾力化を行う、といった取り組みが必要となる。これまでの議論を見る限り、①の点では、増税を視野にいれた税制改革、社会保険料改革は先送りが続いている。②の点では、裁量的支出の歳出効率化に向けた改革が進むどころか、経済対策と補正予算編成を通じた比較的大規模な歳出の追加が半ば常態化している。 岸田首相は、9月13日の内閣改造と自民党役員人事を経て、臨時国会に向けた経済対策の策定に入る見込みである。9月10日にG20(20カ国首脳会議)終了を受けて行われた記者会見では、「新たな体制で思い切った経済対策をつくり、早急に実行していく」「必要な予算にしっかりと裏打ちされた思い切った内容の経済対策を実行したい」と表明しており、今年度も補正予算編成によって歳出規模がさらに拡大する流れは不可避となりつつある。 今次概算要求においても、「新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費並びにウクライナ情勢経済緊急対応予備費」については、金額を定めない事項要求扱いとされており、後の更なる歳出膨張の萌芽を残しているとも評価できる。 当初予算編成において必要な政策経費を精査した上で予算を措置しながら、事後的に大規模な補正予算編成が慣例化することは本来避けなければならないはずだが、逆に事後的に相当規模で歳出を拡大させる必要が見込まれるのであれば、その分、当初段階では歳出構造を十分に弾力化しておく必要があるとも考えられる。 さらに中長期的にみれば、防衛力大幅強化の動機ともなっている地政学的リスクの増大、日本が地理的な特性上避けることのできない南海トラフ地震などの大規模災害リスクの存在を踏まえた場合には、有事の際に相応の規模の歳出拡大余地を確保し、また、そうした緊急の大規模歳出によっても財政運営の持続可能性が損なわれない状態を維持する必要がある。財政の歳出構造は予め相当程度の柔軟性を確保しておく必要があるとも言える。このような点でも、24年度予算概算要求における歳出構造の硬直化は憂慮すべき問題であろう。中期的な防衛力強化、少子化対策がスタートするのを契機として、歳出構造の硬直化を如何に回避するかの議論とそのための仕組みづくりが急がれるところであろう。 (野村證券経済調査部 美和 卓) ※野村週報 2023年9月25日号「焦点」より ※掲載している画像はイメージです。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点
-
09/24 19:00
【オピニオン】日銀の考える政策修正の条件とは?
日本銀行は9月22日、大方の事前予想通りマイナス金利政策や10年国債利回りの誘導目標など、主要な金融政策の据え置きを決定しました。ただし、日銀が7月会合でYCC(長短金利操作)政策の運用柔軟化を決定、その後も政策委員会の一部のメンバーから政策修正に前向きな発言が聞かれたことから、市場では金融政策修正へ期待が根強く、長期金利は高止まりしています。 7月会合後、市場の注目を集めた日銀高官の発言を整理してみましょう。田村審議委員は8月30日、「持続的・安定的な2%の物価上昇の実現が見通せた場合、当然マイナス金利の解除も選択肢の一つとして入ってくる」と発言した上で、「来年1-3月ころ」にはインフレの状況に対する「解像度が一段と上がると期待している」と、2024年早々に金融政策を見直す可能性があることを示唆しました。 植田総裁も9月6日に読売新聞の単独インタビューに応じ(掲載は9月9日)、「マイナス金利の解除後も物価目標の達成が可能と判断すれば(解除を)やる」と発言、「年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」との見解を示し、市場の早期政策修正期待を高める結果になりました。ただし、ブルームバーグは複数の日銀関係者の発言として、「ゼロではない」発言は「一般論」に過ぎず、従来と比べて踏み込んだ内容ではないとの見解を報じています(9月15日報道)。 田村、植田両氏の間で政策修正を検討し得る時期に若干の違いがありそうですが、修正の条件として「物価安定目標の持続的・安定的な達成」を挙げている点は共通しています。 一方、日銀で長く金融政策の企画・立案に携わってきた内田副総裁は、政策変更の条件として「引き締めが遅れて、2%を超えるインフレ率が持続してしまうリスクの方を、より心配する状況になる」としており、政策変更にはより慎重な印象です。同様に、高田委員、中川委員の発言からも、政策修正の条件として内田副総裁に近い見解である様子がうかがえます。 中村委員は「物価安定目標の達成」に加えて「企業の稼ぐ力がついたかどうかを見ることも重要」と独自の見解を示したうえで、政策修正のタイミングとして「来年1-3月にこだわる必要はない」との見方を示しました。 これらの発言を踏まえると、政策修正の条件や具体的なタイミングについて、日銀内でコンセンサスが形成されている可能性は低いと考えられます。 野村證券では、日本経済は回復基調を維持するものの、今年末から来年初にかけて回復ペースが中弛みし、日銀が「物価安定目標の持続的・安定的な達成」に自信を深める状況にはないと予想しています。YCCの撤廃は2024年10-12月期、マイナス金利撤廃は2025年以降との見方を維持しています。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら 業種分類、Nomura21 Globalについて ご投資にあたっての注意点