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20:00
【野村の解説】新NISA 現役世代におすすめの活用法は?
2024年、新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まる予定です。非課税で投資できる額が大幅に増え、非課税の保有期間が無期限となるなどメリットが増え、資産形成の大きな味方となりそうです。現役世代におすすめの新しいNISAの使い方や、今年準備しておくべきことなどを、野村證券資産形成推進部で制度企画、政策提言などを担当する森田克巳に聞きました。 【森田 克巳】1988年野村證券入社。経営企画部、通産省出向、主計部などを経て、2012年にライフプラン・サービス部、2020年4月より資産形成推進部次長兼野村資産形成研究センター研究員。資産形成にかかわる政策提言や税制・規制関連を担当し、職場つみたてNISAの創設、確定拠出年金制度の改善、持株制度の規制緩和などを進めてきた。「新しい持株会設立・運営の実務〔第2版〕」(商事法務)を共同執筆。 新NISAが合うのってどんな人? ――どんな人が新NISAを使うべきなのでしょうか NISAがお手本にした英国のISAという制度がありますが、同国では成人の5割がISAを活用しています。我が国においても多くの人が新NISAを資産形成に活用すべきで、特に現役世代がライフイベントに備えるためには非常に有効な制度です。 資産形成の基本は「長期・分散・積立」で、給与や賞与から無理のない範囲でこつこつと継続することが一番です。できるだけ若いうちに、できれば新入社員の頃から、少額でもよいのでNISAなどの税制優遇を活用して資産形成を開始することをお勧めします。 例えば、投資信託で毎月2万円の積立投資を30年間続けると、年5%で運用できるとして、元金720万円の投資で約1630万円の金融資産を得ることができます。課税されれば185万円の税金が引かれますが、新NISAならかかりません。 新NISAでは生涯の投資枠である「生涯非課税限度額」が再利用できるようになる見通しです。家や車を購入する、まとまった子供の教育費が必要であるなど大きな出費が伴うライフイベントの際には、投資信託の一部売却し、資金に充当するという使い方をする際に、新NISAでは売却分が再利用できることで、非課税枠を無駄なく利用できるようになります。 現役会社員は新NISAをどう使うべき? ――現役会社員におすすめの新NISAの使い方は? 現行のNISAは一般NISAとつみたてNISAの選択制でしたが、新制度では、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」が併用できます。ライフプラン用の積立投資は毎月の給与から「つみたて投資枠」で着実に行い、成長投資枠を活用してボーナスで上場株式を買い、配当や値上がり、株主優待を狙うという使い方もできます。NISAでは配当も非課税なので、高配当株を購入し、配当金でちょっとリッチな余暇を楽しむこともできるでしょう。 成長投資枠で投資できる投資信託は、つみたて投資枠よりも広いバリエーションがあります。新興国株や不動産を対象とする金融商品を購入するなど、少しリスクを取った投資に挑戦してみるのもよいかもしれません。 夫婦共働き世帯では、ともに新NISAを使えば年間投資枠、生涯の非課税限度額もかなり大きなものになります。一方の口座では老後に向けて長期的に投資し、もう一方は教育費や家の頭金など不動産購入費を目的に、少し短いスパンで配当や売却益を狙ってみるという使い分けもできそうです。 新NISAが始まるまではどうすればいいの? ――新NISAが始まるまで投資は控えた方がいい? 資産形成はできるかぎり長期で取り組むことが肝要です。新NISAが始まるまでの1年間を無駄にする手はないでしょう。 現行制度で投資した商品は新しいNISAには移行できませんが、つみたてNISAなら20年間の非課税期間はフルに享受できます。また、現行の一般NISAで購入した金融商品は、新NISAの生涯非課税限度額にカウントされませんので、今年購入する分だけ限度額が増えるという考え方もできます。 ――今、準備しておくことは? 初心者の方や、何から始めればいいかわからないという方は、現行のつみたてNISAについて、どんな商品が購入できるのかなどを調べておくとよいと思います。 現行のつみたてNISAも新NISAのつみたて投資枠でも、基本的に投資対象は金融庁が認めた長期投資に適した投資信託です。 金融庁が認めた範囲であっても、つみたてNISAの対象となるインデックス型投資信託は様々ですし、アクティブ型投資信託も含まれます。金融機関ごとに扱う商品が異なるので、ご自身が投資したい商品ラインアップがあるかなどを吟味いただければと思います。 また、手数料の体系やサポートの手厚さも金融機関によって変わります。我々、野村證券をはじめとして給与天引きでNISAを利用できる「職場つみたてNISA」を提供したり、NISA以外にも低金利のローンや贈与・相続のサポートを行ったりと様々なサービスを展開している会社もあります。ご自身で投資判断が可能であれば、手数料の安いオンラインサービスも選択肢になるでしょう。ぞれぞれのニーズに合い、使いやすそうな金融機関を見極めてください。 現行制度との違いはこの3つのポイント ――現行のNISAとの違いは? 2023年度税制改正大綱によると、新旧NISAの大きな相違点は、1)投資額を拡大する、2)非課税期間を恒久化する、3)投資枠を再利用できるようにする、の3点です。 現行のNISA制度は、年間投資枠が40万円のつみたてNISAと120万円の一般NISAとの選択制で、1年間ごとにどちらか一方しか選べませんでした。しかし、新制度では、長期分散投資による資産形成に適した投資信託が買える「つみたて投資枠」が年間120万円、上場株式やETF、より種類豊富な投資信託を投資対象とする「成長投資枠」が240万円で、同一年において併用することが可能です。 年間投資額の上限は合計360万円と、現行のつみたてNISAの9倍、一般NISAの3倍に拡大します。これはNISAの本家ともいうべき英国ISAに匹敵する金額です。 新しいNISAは恒久措置となりますが、生涯で投資できる総額には上限が設定されます。生涯で投資できる限度額である「生涯非課税限度額」は1800万円(うち成長投資枠は1200万円)となる見通しです。NISAで投資した投資信託や株式などを売却すると、売却した分の投資額分だけ、生涯の非課税限度額が復活します。 また、今回の改正による大きなメリットは、非課税で保有できる期間の制限がなくなることです。現行制度ではつみたてNISAの非課税保有期間が最長20年間、一般NISAで最長5年間でしたが、新制度ではどちらも無期限となります。このため、人生100年時代のライフプランに対応するための資産形成に適した制度であると言えるでしょう。 NISAが拡充・恒久化されるワケ ――NISA制度を大きく拡充・恒久化する政府の狙いは? 岸田首相は「新しい資本主義」を政策として掲げています。新しい資本主義のコンセプトは、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」であり、具体化を進めるために「新しい資本主義実現会議」を設置し、様々な施策を検討しています。昨年11月、この会議で「資産所得倍増プラン」が発表され、7本の柱が示されました。その中核となるのがNISAの拡充・恒久化です。 新しい資本主義実現会議では、生産性を向上させ、賃金を引き上げることについても提言しています。しかし、日本の雇用慣行や賃金の下方硬直性を考えると生産性の向上分をすべて賃上げに向けることは難しく、企業業績の改善に対して報酬水準は抑制されざるを得ません。また、少子高齢化の進行によって高齢者の比率が上がり、社会保障のコストは増加しています。減少する勤労世代では税及び社会保険料の負担が増加し、なかなか国民が豊かさを実感できない状況です。 こうした厳しい状況を改善するために、我が国に残されている活用可能なリソースの一つに2,000兆円を超える個人金融資産があります。日本の個人金融資産は、この低金利が続く中にあっても約54%が現・預金、約27%が保険等です。リスクはあるが、比較的リターンが大きい投資信託や株式で運用されている比率は約15%にとどまっています。 これは米国の約50%、欧州の30%に比べて著しく低い水準です。その結果、金融資産から生まれる所得である配当や株式の譲渡益などは、欧米に比べてまだ低いのが現状といえます。とはいえ、足元の個人金融所得は年間13兆円あるので、これを本当に倍増させることができれば、GDPが2.6%増加することになり、雇用者報酬の4.5%に相当する所得増となります。 そこで、個人金融資産・所得を倍増させるための施策として打ち出されたのが、投資者を増やすための金融投資教育を実施すること、NISAの活用を促すことで中間所得層の資産形成を後押しすることです。金融庁によると、2022年9月現在、一般、つみたて合わせたNISA口座数は1,753万口座、買い付け額の合計は約28兆円です。 政府の資産所得倍増プランは、新NISAにより、NISA口座数を現在の約1,700万口座から5年間で3,400万口座とする、NISA買付額を現在の28兆円から56兆円とする、の2点を目標に掲げています。もちろん、これだけで金融資産所得が倍増するわけではありません。しかし、これを機に個人金融資産の構造が欧米に近づいていけば、国民の多くが金融所得増加の恩恵を受けることができるようになると考えます。 NISAについての注意点 ご投資にあたっての注意点
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17:00
【Q&A】「有事の金買い」は有効な戦略だったか?その出口は?
投資家の皆様から関心の高い質問を専門分野のリサーチャーに聞いてみました! Q:「有事の金買い」は有効な戦略だったか?その出口は? 金融(地政学)不安の発生時に資産保全の必要性が高まることで安全資産としての金の価値が上昇するというのが一般的なロジックかと思います。近年、実際にそのような価格変動は発生していたのでしょうか。有事の際の金投資が有効かどうか教えてください。また、可能であれば、いつ「金売り」をすればよいのかの考え方もあれば教えてください。 A:過去「有効」だが高値での利益確定は難しい リーマンショック前後で当時の高値「1895ドル」へ 2007年に発生した米サブプライムローン問題とそれに続く国際金融危機(いわゆるリーマン・ショック)、そして2009年からの欧州債務危機の過程の中で金価格は上昇し、ロンドン金現物午後値決め値は2011年9月5日に当時の史上最高値1トロイオンス当たり1895.00ドルを記録しました。 コロナ禍~ウクライナ紛争で「2000ドル」突破 近年では新型コロナウイルス感染症拡大の際、2020年8月6日に同価格は現在の史上最高値記録2067.15ドルへ達しました。また、ウクライナ紛争勃発時にも同価格は記録更新には至りませんでしたが、2039.05ドルへ達し、史上最高値へ迫りました。このように国際的に経済へ深刻な悪影響が生じる可能性が顕著に高まった場合に金価格は大きく上昇しており、「有事の金買い」が発生していたケースはあります。 高値圏推移の期間の長さはまちまち 欧州債務危機の時には、金価格の高値圏での推移がやや長期化しました。2012年10月にEMS(欧州安定メカニズム)が発足し、危機に対する包括的な対策が整ってから金価格は低下し始めており、国際経済に対する不透明性が取り除かれるようになって金価格が下落したと評価できます。 現在はコロナ禍とウクライナ紛争の趨勢が影響 他方、新型コロナウイルス感染症拡大とウクライナ紛争勃発の時に関しては、金価格は高値を付けた後、比較的速やかに低下しています。ただし、いずれの場合も、市況抑制への明確なきっかけは見出せません。金価格が2000ドルを超えて達成感が生じたという市場のセンチメントが影響したことも考えられますが、過去の価格水準との比較感からすると、依然として有事の際の高値圏での金価格の推移が続いていると見ることも不可能ではありません。新型コロナウイルス感染症については変異株が発生し続けている中で近い将来に完全に落ち着くことは考え難い一方で、ウクライナ紛争が終結に至れば、金価格が大きく下落する可能性があるかもしれません。 米金融政策と金融情勢も総合的に検討して判断 金価格が上昇した要因が取り除かれれば金価格は下がると考えられますが、その要因が取り除かれたかを判断することは難しい上に、現在は米国の金融政策や金融情勢といった他の要因も金価格に影響しており、金価格の下落の時期に関しては、様々な要因を総合的に検討する必要があります。「有事の金買い」が比較的容易なのに比して、それに対する高値での利益確定は容易ではありません。 (出所)野村證券経済調査部より野村證券投資情報部作成 ご投資にあたっての注意点
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昨日 20:00
【業界展望】商社:24.3期は減益も高い利益水準が続こう
一過性を除く利益は引き続き高い水準 2023.3期10~12月期決算では、鉄鉱石や原料炭などの市況が前四半期比で下落した悪影響はあったが、エネルギー分野でLNG(液化天然ガス)などのトレードが好調に推移したこともあり、資源分野の業績は前四半期比で大きな落ち込みとはならなかった。非資源分野では、化学品関連事業が市況の下落で業績が軟化傾向となり、食品関連ではコスト上昇による悪影響などがあったが、自動車関連事業においては半導体不足を背景とした供給不足から高い販売マージンが続いた。くわえて、欧州の電力市況の上昇効果などからインフラ関連事業も好調な推移となったことで、非資源分野全体では高い水準の利益が続いた。結果的に23.3期10~12月期の大手7商社の一過性損益を除く親会社株主利益は前四半期比で横ばい圏の推移となった。 ※(アプリでご覧の方)2本の指で画面に触れながら広げていくと、画面が拡大表示されます。 短期業績の好調は続いており、資源分野では鉄鋼原料市況が上昇するなど一部で改善傾向がみられる。中国のコロナ規制緩和による鉄鋼製品需要の回復期待が背景にあり、鉄鉱石市況が回復傾向にある。原料炭市況についてもコロナ規制緩和にくわえ、中国が豪州産の石炭輸入を再開していることもあり、高い水準での推移となっている。商社の対TOPIX(東証株価指数)での相対株価は23.3期10~12月期の好調な決算や鉄鋼原料価格の上昇もあって堅調な推移を続けている。 追加の株主還元期待も強い 鉄鋼原料市況は足元で回復しているが、野村では24.3期は前期比で下落を予想しており、商社各社の24.3期の資源分野の親会社株主利益は減益を予想する。特にエネルギー部門では、23.3期がウクライナ紛争を背景とした天然ガス価格の上昇や、地域間格差の拡大を背景にLNG などエネルギートレードで収益機会が多かったため、その反動によって減益幅が大きくなると予想している。ただし、足元で欧州の暖冬を背景にLNG のスポット市況が下落しているとはいえ、供給制約が残る中でトレード機会が多い状況が続くため、ウクライナ紛争前の水準まで落ち込むとは予想していない。 24.3期の非資源分野については、円高による減益影響に加え、23.3期に幅広い分野で新型コロナやウクライナ紛争を背景とした供給制約からトレード事業のマージンが拡大した反動は見込まれる。また、インフラ事業では23.3期は商社各社が欧州の電力市況上昇による恩恵を受けていたが、欧州各国で電力価格の上限規制の導入もあり24.3期は減益影響が見込まれる。ただし、自動車などでの半導体不足による供給不足については24.3期上期も残る可能性が高く、供給制約の解消は下期以降と考えている。結果的に24.3期の非資源分野の親会社株主利益は減益とはなるものの、利益水準は22.3期を上回る水準を予想しており、高水準の利益は維持できると考えている。 商社セクター全体では24.3期の親会社株主利益は前期比で減益とはなるものの、高い利益水準を維持すると見込む。そのため追加の株主還元期待も高く、株価は堅調な推移が見込めよう。 (エクイティ・リサーチ部 成田 康浩) ※野村週報 2023年3月27日号「産業界」より 【FINTOS!編集部発行】野村オリジナル記事配信スケジュールはこちら ご投資にあたっての注意点